第2次ごぶごぶ戦!

第16話 ごぶりんめー



 今現在、ハンタと一緒に偵察しております。私は【方位磁石魔法】を持っているので、なんかあった時にもすぐ帰れるんですよね。


 地図魔法はまだ覚えていないです。ハンタが覚えてます。それを基にしつつ、二人の感覚を頼りに偵察をします。3日間の日程を組みました。


 カニカニ何処カニ? 巣は何処カニ?


 初日はスカ。何の成果も得られませんでした。探索範囲を広げます。

 2日目、ハンタがゴブリンの足跡を発見しました。発見してしまいました。やっぱりいるのかあ……。


「どうしますかお館様。巣まで追ってしまいますか」


「そうだね、巣の場所を確定することはしようか。罠があるだろうから慎重に行動しようね」


 足跡を追います。

 む、少し追ったら臭い始めましたね。近くにいるのでしょう。どこカニどこカニ?


「凄い臭い。もうすぐそこにいるはず」


「私も犬の一種なので鼻が効きます。……いた」


 ハンタが見つけました。ボロボロな服を着ている赤小鬼がそこにいました。


「ゴブリンってそれなりの生産力があるのかねえ?道具使ってるよね」


「死体からはぎ取ったのを再利用しているだけですよ」


「うへぇ」


 あ、無駄話しすぎた。声でバレてしまう。

 コッソリ隠れながら監視をすることにしました。



 数時間経過してある程度予想がついたのですが、動きが見張りの動きだと思います。周辺をうろうろしている。少なくとも餌を探しているわけではなさそう。


「交代を待って、さらに追いますか」



 交代するためのゴブリンがやってきました。2匹にばれないように、最初のゴブリンを追っていきます。

 馬鹿なのか、こちらには全然気が付いていないようです。


 追っていって見つけたのは崖とぽっかり空いた洞窟。ここかなあ?


「こんなところにこういうのがあるとは。ゴブリンが入って行ったし巣だよねあの洞窟」

「ですね。巣も発見しましたし、帰りましょう」

「そうだね、じゃあ帰ろ――」


 ガチャン!!


「ああぁ!?!?」


 足に激痛が。やばいこの痛み、やばい。


「トラばさみですお館様、声を静めて」

「あああぁぁぁぁぁ……い、痛い……足がとられて動かせない……食い込むよぅ。痛い……」

「今取りますのでとにかく落ち着いてください。バレます」

「ごめん、ごめん。でも痛い」


 ハンタがガチャガチャやってトラばさみは解除できました。でも……。


「右足、利かなくなってる……アキレス腱が切れちゃったのかな。ううー痛い、痛い」

「背負いますのでいち早くここから退散しましょう。最初の大声で存在がばれてるかもしれません」


 背負ってもらって逃げ出すことに。うう、情けない。



 数分語、急にハンタが立ち止まりました。


「どうしたのハンタ?」

「追いかけられているようです。このまま逃げたら開拓地の場所がばれてしまう。私がここを通さないようにするので、お館様は逃げてください。途中で足跡などの隠蔽工作をするのを忘れずに」


 といって私を下ろしました。


「いくら何でもハンタ一人じゃ危ないよ!」



「大丈夫! 俺はワーウルフ! 狼の中の狼! さあ、行け、サクラ! 逃げる方位は71度3分だ!」




 ワオォーーーーン!!


 覚醒したワーウルフの迫力。完全に2足歩行の荒ぶる狼。その迫力の前に何も言い出せず、私はハンタをおいて逃走しました。ちゃんと隠蔽工作したよ。




 ハンタ、生きて帰ってきて。


 ――――


「ただいま……」

「どうした市長! 足を引きずって! ハンタはどうした!?」

「巣を見つけたんだけど……、周辺にあったトラばさみに私が引っ掛かって足が使えなくなっちゃって……、途中まで逃げたけど追い付かれちゃって、ハンタが足止めを……」

「わかった、市長はこの家で自分の治療をしてくれ。おい部下の5人! 斧を持ってこい! 筋肉だるまは木槍を数本だ! 救出に行くぞ!」

「合点承知の助太郎!!」


 そういってみんなはハンタを救出しに行きました。みんな……。



 ――


 みんなが帰ってきたのは次の日の朝。幸い死者は出ませんでした。でも……。


「ハンタの左くるぶしから下がない」

「あはは、お館様。ちょっと事故っちゃいました」

「これじゃハンタは狩猟が……」

「お頭、木の義足を買ってやって下せえ。狩猟は出来ぬども、なめしはハンタが世界で一番ですぜぇ」

「うん、うん。わかった、買うよ、義足を!」


 なんとしてでも買ってあげなきゃ!!



「感動のシーンのところで悪いが、すぐに防衛の準備をするぞ。大人数で行動したんだ、けるわけがない。ここの位置はバレているはずだ。襲ってくるだろう」

「わかった、まずは防衛だね、木の壁を有効に使う時が来たね」


 薄い木の壁ではあるけど、壁は壁。侵入を防ぐしこちらから一方的に仕掛けることだってできるはず。


 壁の上から攻撃できるように、木の台を何個か設置。これでモロッコシーや大柄な労働者さんが上から槍でつつけます。

 それに必要なのは長い槍。槍槍ランサー、槍っ槍っ! 突っつけ突っつけ槍っ! 槍っ!




 そうこうしているうちにやってきました、赤の部隊が。5匹だけですけど。でも軍人がいない30人ばかりの集落では恐怖の対象です。


「本当に来ちゃったね」


「やるしかないな」





「みんな頑張ろう! エイエイオー!」




 エイエイオー!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る