第12話 ベルベルベ商会
ゴブリン居住地は壊滅、それによって開拓地の安全は守られそして岩塩の採掘も安全にできるように。
そこで必要になるのが、荷を背負う動物。荷役する馬か牛か、そういうのを手に入れないと重くて重くて運べないんだよね。勿論石材もそう。
石材も岩塩もそろそろ本格稼働させたいってことなのでルーデルに買い付けに行くことにしたよ。ホログラム宝箱の馬とかは高性能なんだけど、その分お高いんだよね……車みたいな機械もあったけど、それは本当に高い。くそー! 欲しいよー!
東の森をテクテクと歩いてルーデルへ。【方位磁石魔法】で方位が分かるからそれに頼って歩いてるけど、元文明人な私にとっては【絶対座標魔法】とかあるといいんだけどなあ、衛星経由のあれ。GとPと……なあれ。超古代文明なら作ってそうなんだけど。
ブツブツそういうことを呟きながら大砦に。今回はすんなり通過できたよ。一応西に開拓地、しかもどこにも属していない、これがあるってのは認識してくれているみたい。
今回は荷役動物を2頭買いたいなー。石材と、岩塩と。あ、岩塩向けの人を数名呼ぼうっと。
高い!! 普通の牛に馬は高いですよ!! 貧乏開拓地では買えない!!
とりあえず、錬金材料を売り払ってからまた考えよう。今日は錬金術の大元になる錬金基剤を持ち込んであるんだ。良いお金にならないかなあ。
錬金術は第3壁の中ではなく第2壁内部の専門市場にあるそうだから(説明ボランティアさんに聞いた)、無料の乗合鉄道馬車に乗ってGOGO!!
乗合鉄道馬車の出入り口からひょいっと飛び乗って座席へ。いいなあ、こういうレールの上を走る鉄道馬車。いつかわが開拓地でも走らせるんだ……!
「おい見ろよ、なんだあそこの白いねーちゃん、ひっでー身なりだなあ」
耳がピクッ
「どこかのホームレスってわけでもないだろうし……」
ピクピクッ
「どこかの開拓団かなあ、ダサい入れ物持ってるし。ウケる」
ピクピクピクッ
と、とりあえず逆立つ体中の毛を必死に抑えながらひそひそ話をしていた若い男性二人に会釈して威圧しました。こっのやろう、開拓をなんだと思ってるんだ!
ただですね、これくらいなら笑い話になるんだけどね、身なりのちょっと良い男性にね。
「君は開拓団の者か」
「ええ、はぁ」
「開拓団とも言えども、文明に戻ってきたらいい身なりに着替えることがマナーじゃないのかね?」
詰め寄られちゃってね。
「え、えぇ……」
「場所には場所に似合った服を着てくるべきだと思うが、どう思うんだね」
「おっしゃる通りです……」
完璧に正論を叩き込まれました。ぐうの音も出ません。
TPOにあった服をって言っても、私このおんぼろ開拓服しかないよ……。ルーデルにはあまり来ないのですけど、ハリコーに相談しましょ。
心もしっぽもしょんぼりしつつ、第2壁内部へ到着。ここから錬金術大通りまでまた数kmの歩き。はあ、大変だあ。しょんぼり。
――錬金術大通り――
たどり着いた大通りは圧巻の一言。蒸気で動くミニ列車が大通りを巡回していたり、店の前のショーウィンドウの中で歯車が回っていたり。
どちらかというと、工業の展覧会に来たような感じがするよ。
ここでまた説明ボランティアの方に話を聞いたのですが、この錬金地区は錬金術の他に、工業及び化学工業の先端試験設備が立ち並んでいるとのこと。
だからこんなに設備が凄くて……。
煙も凄いんだね。ゲホゲホ。
と、とりあえずウィンドウショッピング開始。ウィンドウショッピングという名の冷やかしと価格調査ですけど。
ふーむ、ポーション一つでも値段や質に違いがあるんだねえ……こちらの商品、つまり錬金基剤の買取金額もまるで違う。むむう、これは難しい。
一日かけて巡ってきました。格式高そうなお店だと服装の時点で足元見られちゃうねえ、どうにもならん。そのほかのお店ではなんか妙に販売と買い取りの差があるんだよー。なんでだろう。
次いってみましょう。……って、そこで露天商している人がいるんですけど!?
「こんにちは、この煙の中大丈夫なんですか? あ、近くで見るとイケオジですね、イケオジ」
「ああ、煙無効化のポーション作ってあるからな。それでどうしたい、開拓団か農村の人。イケオジって褒められても安くはできないぜ」
「ちっ。……わかりますよねーこのみなりですものねー。ええと、今私が錬金した、錬金基剤をお売りできないかなと思いまして。あと傷薬に軟膏、爆破系の基剤にー……」
おろ、なんか商人さんの目が変わったぞ?
「錬金基剤作ったのかよ! ちょっと質を確かめさせてくれ、これか、ペロリ、こ、これは! これは青酸カリ! ……というのは置いておいてだな、かなり上質な基剤じゃねえか、初級ではあるが。これをお前さんが?」
「はい、乳鉢で頑張りました」
「乳鉢だけで? すごく時間かからない?」
「かかりました」
商人さんは感服した様子で。
「時間の浪費を苦にせずやり通すことのできる人物なのか……これは素晴らしい、素晴らしいぞ!」
なんか興奮してますね。
「おっと済まない興奮してしまったよ。錬金基剤の重要性は知っているだろ?」
「えーと、なんとなくならわかりますね」
「そんな認識であれほどの質を作ってしまったというのか」
「なんかすいません、アハハ」
「構わん。いいか、錬金素材というのはな、この基剤を基に錬金していくんだよ。だから基剤は重要なポジションなんだ。錬金を2回3回と回数を重ねていく時、失敗するのはたいていがこの基剤の質が悪かったのが原因だ。ここまではわかるね?」
「えーーーっとーーーーーー」
「頭が爆発しそうか、しかし知識は一気に詰め込んでその後咀嚼するように解釈したほうがより面白いと思う。続けよう」
「えええええ」
「さて、中級錬金基剤でも、上級錬金基剤でも基剤はこの初級錬金基剤を基に作られるんだ。初級錬金基剤を基に中級錬金基剤が作られ、中級錬金基剤を基に上級錬金基剤に。な、少しばかりでも入っているだろ、初級錬金基剤。しかも一番コアな部分にな」
「ほげええええ」
「話が長くなった。ということでわが商会ではこの錬金基剤1つを20ユロルで買い取らせていただきたいが、いかがかね?」
「……………………はぁ!?」
「やっと正気に戻ったか。繰り返す、1つ20ユロル、いかがかね」
「え、よそでは5ユロルとか9ユロルとかでしたけど」
「そりゃ完全に足元を見られたんだよ。お上りさんには正当な金額なんて出さねえのが普通だ」
「……それ、あと9つあります」
――その時、この大通りでは「ブラボーーーーーー!!」という雄たけびが駆け抜けていったという。――
他の材料も買い取っていただきまして、280ユロルが手に入りました。
「280ユロルもある……」
「うちの商会なら錬金基剤をいつでも1つ20ユロルで買い取るぞ、これからもよろしく頼むぜ」
「は、はい。あ、私の名前はサクラと申します」
「珍しい名前だな。俺の名前はレン、レン・フォワンダースだ。所属はベルベルベ商会だぜ」
「ほへー、やっぱり商会とかがあるんですね」
「そういうもんだ、お上りさん。ああ、これから商会を見に行かないか、錬金レシピとか販売しているぞ」
「わっかりやした!!」
ということでレンさんに場所まで案内してもらってベルベルベ商会に。なんか上質なものばかり売ってるんですけど……
「なんでこんなにすごいっぽいものを売っているのに露天商とかやっているんですか?」
「ああ、うちはちょっと他の商会の攻勢を受けていてだな……まあ質は最高なんだ!」
「……販売に弱そうですね」
「ギクゥ!! そ、そんなことはないぞ! 第1壁内御用達だったしな」
「だった」
「グハァ! い、今もつながりはなくはない!!」
「なくはない」
「も、もう許してくれ……」
「許す代わりにレシピとちょっとした錬金道具ください」
ニッコリニコニコ。男を落としにかかる笑顔。
「わ、わかった、初級レシピに蒸留器とフラスコそしてビーカー、あとポーション瓶を幾ばくか、これでどうだ」
「わぁい、おじさんだぁいすき!」
レンは陥落済みっと。
商売道具の顔のままベルベルベ商会を後にした私であった―。
さて、お金もあるし今度こそ荷役動物を買うんだ!!
牛、馬は無理だ……300ユロルくらいからだ…… 荷役に適した種類はもっと高い……
どうしよう……ないと石材と岩塩は取れない……。
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