第8話 南の開拓地の名前はテリアルブです。南の街はテリアです。紛らわしいな。



 結構前に小屋の改築と食料保存庫の建設が済みました。もうさーみんな同時並行で進むから私の目と頭が追い付かないんだよねえ。


 小屋は詰め込めば30人は暮らせるような大きさになりましたよ。今年のみんなの住まいと、緊急避難所を兼ねているからね。構造材だけのプレハブ構造だけどさ。構造材は頑丈なものにしてあるよ。

 これからは《サクラの家》って名前で呼ぶよ。


 食料保存庫は読んで字のごとく食料を保存する庫。適切に保存しないと食料は腐るだけです。サイズは30人が余裕で冬を越せる量が入るサイズにしたよ。

 これは小屋の隣というか、ドアつながりで入れる感じにして建てたよ。

 人数増加とともに順次拡大していくかんじ。


 家と食料保存庫が完成したら、ファンファーレとともに、宝箱にボーナス報酬というなのホログラム表示が浮き出てきて、石臼と石臼を覆う小屋が無料で手に入ることになりました。

 え、なにこのゲーム的な報酬は。いやまあ、開拓が楽になるから良いんだけど。宝箱の表記では石臼400ユロルしていたしね。


 設置の方法は、ホログラムをのぞき込んでVR画面にして……設置場所を設定。このVRぬるぬる動くぞー。

 そうだなー、バイタルパート、重要施設防御区画に置こうかな。

 この家の近くで、農作地と導線が比較的楽に引けて、将来的に壁で守られる部分に設置。本当ならモロコシ畑及び将来の小麦畑などの近くに置きたいんだけど……。

 せっかくの品を壊されるわけにはまいりません。


「この石臼は……とても大きいけど取っ手がないし動力もないね……?」


「魔導動力というやつだな。市長、魔法を石臼に込めてみてくれないか」


「ええ、こう……? おお、動いた!へー結構軽快に回るんだねこれ」


「魔力で動かしているからな。これでモロコシ以外にも小麦からパンを作ることも可能になるな」


「そだねえ」


 この頃より名前は呼び捨てで、ため口で接するようになったよ。その方が親近感が沸くって言うので。



 さてハルキ君ですが、ハルキ君は手に職ついていないので、南西の森で薬草取りをしてもらうことにしたよ。

 薬草の姿かたち採取方法を覚えないといけないので、まずは付きっきりで相手しよう。


 これがこれ、あれがそれ、それがあれでー、そこがどれ。


「ふー、いっぱい採れたねえ」


「背負い籠いっぱいですね。この籠って竹製品ですよね ?どこで竹を?」


「なんか、〈タケッケー〉っていう竹にごく似ている植物が生えていたんだよ。それを伐採して、乾燥魔法かけて乾燥、そして針子のハリコーに編んでもらったの」


「へー、サバイバルですねえ」


「うん、自給自足だよ。あ、それでさあ」


 ぐぐぐいっと顔をハルキの顔面に近づけます。


「ななななななんですかいきなり!? もしかしてききき、きしゅ」


「私が綺麗って言っていたけど、どこら辺が?」


「アッハイ。雪女みたいな綺麗さです。雪のように白い」


「いみがわからん。具体的に!」


「ハイィ!すっきりしたお顔、大きくて透き通っている黒いおめめ、整っているおはな。ぽ、ぽってりとしたく、くちびりゅ、しょしゅてぇ……」


 バタリ


 あれ、のびちゃった。



 綺麗って、正義。



 ――


 ハルキ君はめきめきと実力を伸ばし、南西の森に生えている薬草なら大体を把握できるようになったよ。成長系の加護? かな? まだわからないけど。


「さて、薬草と鹿系動物などの皮が結構たまったのでこれを処分しようか」


「サクラさん、何かいい考えがあるのですか?」


「ええ、これを」

 一呼吸おいて。

「売りつけます」

 ドヤァ!


「そんな、胸をデデーンと前に出さなくても」


 ちょっと顔が赤いなーさすがのおねーさんもこれはわかっちゃうぞー胸見て顔赤くしたなあ、うぶだなあハルキ君。


「胸張って売れる商材がこれしかないんだからしょうがないよね? なんとなく高く売れそうな薬草と皮を選んで、南の開拓地に行こう。そこで売却してユロルをもらおう。薬草も皮も、加工できれば加工するのだけれども、今できるのは薬草を私が口噛みするだけなんだよね」


「く、口噛みした薬草ってどこに塗り付けるのですか……?」


「ん? 物によるけど大半は傷口とかに塗るよ。食べたいの?」


「たたたたたたたたたべたたべたべべべべべ」


 ぱたり。


 ありゃ。うぶだなー。




 南の開拓地『テリアルブ』に赴くのは私、ハルキ君、モロッコシーの三人。一応野犬対策に、硬めの木で作った槍を用意してもらったよ。長さは180cmくらい。

 私はそんな長さもてあますし森の中でも振り回したいので、100cmくらいの長さのやーつ。小さいとこういう時不利……。まあぶったたくことも出来る棒みたいな感じだね。


 武器兼歩行補助棒も手に入れたことですし、れっつごー☆


 テクテク歩くよー、歩くよテクテクとー。




 幸運なことにモンスターや肉食動物に出会うこともなく南の開拓地に到着。時間は午前14時、市場があいているという情報を聞きつけ市場に出向きまんた。

 もうすぐ村になると言うこともあって、ここは開拓地といってもそれなりに開けているなあ。


「うーわー、少ない品数とはいえ、今まで禁欲生活送ってきたからどれも欲しくなるなあ……」


 はー、よだれが出ちゃう、ジュルリジュルリ。


「サ、サクラさん、まずは薬草を売ってからじゃないと何も買えませんよ」



「はっ、いけないいけない。そうだね、まずは売却できるところを探そうか」



 市場の人に聞き込みをして、向かうは錬金術師の市。

 この世界は錬金術が発達していて、薬草を錬金してポーションにするんだって。

 加護の力で少々事情を知っていたので、錬金に使いそうな薬草を主体に持って来てあるよ。


「ほう、これは干してあって、状態が良いのばかりですね。そうですね、これだけあるなら……34ユロルくらいでどうでしょうか」


「えええー! 安いです! 40ユロルはあるでしょう!? 足元見たって駄目ですよ!」


「うーん、36」


「39」


「んんー37!」


「それで!」



 というわけで37ユロルゲット! 次は革用品さん。交渉は省略して、23ユロルゲットー!多分重量当たりの単価はこっちのほうが高いね。


「よーしいっぱい手に入ったね。じゃあこれで日用品と必需品を買おう!」


「ハイ! しかし、紙幣なんですね、ユロルって」


「そうだねー紙幣だね。それで、小切手や手形にできて額面通りの金額で使えるし、銀行で換金もできるんだって。超古代文明ってすごかったんだねえ」


 などと会話しながらウィンドウショッピング。女性なのにこれをしない理由はない。るんるんらんらん☆るんらんらん☆




「あ、お頭!! あっしのぼでぃを見に来たんでやんすか!!」


 なんか人込みがあると思って近づいたらモロッコシーがそのぼでぃを人々に見せつけていたんだけど。きゃーきゃー!! (顔を覆い隠すふりをして手の間から見るやーつ)


「な、なにやっているんですかこんなところで!」


「いや、大道芸でもして小銭稼ごうかなって。ルーデルでもよくやっていたんですぜぇ」


 これくらい鍛えると、マッスルポーズって、大道芸なんだねえ……。


 実際、彼が立っている木箱の前には数枚のユロルが置かれてたよ。


「うっし、4ユロルは稼げやしたね。ちょっとプロテイン買ってきやす」


「あるの!? この世界で!? プロテイン!?」


「あるもんはある!!」


 そういってモロッコシーは猛ダッシュで市場に行っちゃった。プロテインあるんだ……。

 



「買い物終了! 買ったのは岩塩と、錬金用の乳鉢と乳房、簡単な錬金レシピの紙。それと私とハルキ君の夏と冬の服素材。あとは各職業の補修用品とかだよ」


「冬着かあ。ふ、冬になれば、サ、サクラさんの尻尾、もっともふもふになるんでしょうねえ……」


「触る?」


「めめめめっそうもないですはい!!」


「うぶだなあ。あ、季節の説明しておく?」


「お願いします!」


「簡単なんだけど1~2月が春、3~4月が夏、5~6月が秋、7~8月が冬。季節が切り替わるのは十日前後で一気に切り替わるから、体調変化には注意してね。ってキッコリーが言ってた」


 20ユロルで用が足りたので、40ユロルは持って帰って開拓地の貯金とすることにしました。ベッド直せるかな、これで。

 


 帰り道―は危ないよ♪なんてったって重い素材をいっぱい担いでる♪行きはよいよい帰りは恐い♪


 などと超絶音痴な歌を歌いながら帰りましたとさ。

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