第5話 あぶれ者をさがせ
大砦からルーデルへの時間はさほどかからなかったよ。なぜなら道が整備されていたので、その道を走ったからなのだ。
馬車を余裕で超す速度で走り抜けたよー。きつね+人間の力は本当凄いなあ。それともこの身体がスペシャルに凄いのかも?
ルーデルってただの街かと思っていたんですけど、とんでもない。それはそれは凄い城塞都市だったわ。
大体5kmごとに3つの円状の壁が都市を囲っているの。しかも極めて高い壁! 壁のポイントポイントには円筒砦がそびえたってるよ。
3つの壁の中それぞれに整然と街が立ち並んでいて、とてつもなく巨大なので中で酪農や農作、金融に工業まで一通り済ますことができるんだって。そして、第4壁を作ろうかどうかというところだそう。
あ、この話はどれも案内ボランティアの人から聞きました。
しかしこんなの地球ではほぼ見たことがないね。シンガポールの面積とほぼ同じになるみたい。第4壁ができたらなんかもうすげー都市国家になるね。なんかもうすげー都市国家。計算はあきらめた。
さて。
来たはいいものの、どうやって開拓団員探せばいいんだろうね?
私の所持金は0ユロル、異世界のセオリーよろしく酒場で情報を聞くとかはできないなあ。
作業をしている人に直接聞くしかなくない? 作業場に行ってみましょ。
まずは木こりと食べ物だね。住むべき家を建てるのと、開拓地の森を切り開くのと。それを支える食べ物と。
どこにいるのかな、案内ボランティアさんに聞けばわかりますか。
……情報を得たので向かうよ。びゅーん。
「ああ?木こりで余っている人材なんて……ああ、キッコリー団がいたか。あいつらは余ってるぞ、訳ありだがな」
というわけでキッコリーさんのところに。人間ですね。
「……というわけで開拓団に入りませんか?報酬はすぐには出ませんが、土地なら広大な土地が余っていますので与えられますよ」
ちょっとキッコリーさんの顔色が優れませんね……
「お誘いはありがてえ、俺を抜いた一団で向かってくれ」
おほ?
「キッコリーさんは向かわないのですか?」
「俺はノコで左手の靭帯を切っちまってな、もう仕事にならねえのさ。子分たちはそれでも慕ってくれているんだが……」
「……なるほど、そうですか。では、治せばいいのですね」
言うが早いが、私はキッコリーさんの左手を取って、【人体修復技術】を行使。
「……っはぁ、はぁ。少しだけでも動くようになりましたでしょう?」
「あ、ああ。少しだけだが動くぞ……!!」
「【魔法の力】を相当に消費するので少しずつですが、元に戻して差し上げます。これでどうでしょうか」
「文句ねえや。おいお前ら!一旗揚げに行くぞ!!」
「「「「「ウェーーーッス!!」」」」」
これで木こりはOK、なんと製材から木材加工までやってくれるそう。キッコリーさんは面倒見が良いし色々と冴える(弟子情報)のでサブリーダーになってもらうことにしたよ。
次は……お肉と主食。酪農はまだ無理だと思うので、狩猟さん。皮もなめせるといいな。
今すぐとれる炭水化物……
お米かな……。ルーデルを見ると、落ちた文明とはいえまだまだ文明レベルは高いと思う。稲刈りと脱穀は機械化もしくは省人化されているのではと推察。
パンは小麦を生産して、風車などで小麦を磨り潰して、発酵させてパンにさせるという、作るまでの工程が結構長いんだよね。まあ聞いてみましょう。
では早速集中田植え場へ。集中管理大量生産ができているなんて、文明度やはり高いと思うなあ。
「あぶれているやつぅ? いねえなぁ。人足らずなくらいだからよ」
「はぁー?そんなやつぁいねえなあ。人が全然足らねえからなあ」
んむう。少し聞いて回りましたがお米は無理だなあ。本当に人が足りてない様です。
次はパン。小麦農家さーん
「お米もそうだが主食はどこも手一杯だぜ、人口が過密しているからな」
んー他に主食になるもの……
「あー、家畜用のモロコシなら人が大分余ってるんじゃねえかな?家畜用の餌を食うなら、だが」
モロコシ……なんとなくトウモロコシっぽい。加護で得た知識も似てる作物と言ってるね。であれば人に食べさせる種類を栽培しているところもあるかもしれん。そういうところはあぶれるはずです。だって主流じゃないもの。
モロコシ農家さーん。
「ああ、モロッコシーがそんなことやっていたな。売れねえのによく作るぜ。あいつぁおかげで極貧だ」
ほう、ビンゴですね、行ってみましょう。
「……ということで開拓団に加わってほしいのですが、いかがでしょうか」
「合点だ!! 喜んで加わりますぜぇ!! やっと日の目が出るときが来たぞ!! よっしゃあ!!」
よしよし。モロッコシーさんもキッコリーさん同様多分普通の人間。筋肉が凄いだけ。そう、それだけの普通の人間。信じろ私、私を信じろ。
他、革加工はうまいけど狩猟がへたくそワーウルフの狩人ハンタさんは、私のリーダーシップ技術による配下の能力向上で見事へたくそを克服し、それによってハンタさんが合流。
針子のハリネズミ亜人ハリコーさんは普通に余っていました。所持しているありったけの布と糸針、それになんと麻と綿花の種子を持ち込んでくれるそうです。枯れないようにしっかり栽培しないといけないね。
「革、布、コーン、木材、以上で大丈夫かしらね?」
「市長、大工いねーと話にならねーぞ。あと石の暖炉を作るために石屋が必要だ」
ああ、キッコリーさんの指摘通りですね。大工と石屋探してきましょう。
大工職人さーん。
「これから第4壁作るかもってのに大工があぶれるわきゃぁねえだろべらんめぇ!!」
うっひょー、ご指摘の通りだわ。
一応私には大工技術もあるから、私がやります。なんとかなります。
石屋さんはすぐに集まりました。第4壁は鉄筋コンクリで作るそうで、石の需要がさほどあるわけではないようです。鉄筋コンクリて。ルーデルの文明度は凄いね。
――
「開拓団の形にはなりましたし、レッツゴー、開拓地パールライトへ!」
大砦を過ぎるまでは問題なしです。
問題は過ぎてからでした。
広大な森を、荷物たくさん詰めこんで歩いている一団が簡単に通ることなんて、できないんだね。
馬車を用意したところで森に阻まれて動けなくなるのは必至。なのでここから歩きなんですが、荷物持ちながら木を避けて〈普段通りに〉歩くなんて〈私〉以外にはできない。
だからすごく時間がかかってしまうことに。ちょっと飢餓に陥りかけた。
それでも無事に開拓地までの草原まで到着。長かったー。
小屋に誘導しつつ大急ぎで果実の収穫っ。食べさせないと。
そんなことをしつつ小屋につきました。
「みなさん!ここが開拓中心地でーす!! 草原を開拓し森を切り開いて、立派な開拓地にしましょうじゃあありませんかー!」
わーぱちぱちー!
ということで本格的な開拓を開始します!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます