第4話 ぶんめいのあじがします。


「……というわけなんです」


「にわかには信じがたいが……」


 顔をしかめてこちらをいぶかしげに見るリーダー。まぁ、そうだよね。突然あそこに飛ばされました、ボロ小屋を探索していたら市長の加護を得ました、少し補給品を分けてください、っていうわけだもんね。


「せめて衣服の洗濯くらいは……」


「勿論良いぞ。……しかしここから大きい街へ行きたいというのは難しい。開拓地ではない、普通の街〈テリア〉は相当南にあるからな。鉄道馬車で一週間はかかる」


「むう、一週間……。そっかー鉄道馬車ですか。……移動が馬車程度の割にはトイレは魔法のウォシュレットなんですねー下水はないみたいだけど……」


「公衆衛生は重要だからな。まあ、君が飛ばされた付近は超古代文明の遺産が多く眠っているときく。その加護とやらも遺産なのかもしれないな」


「ちょ、超古代文明?」


「一度文明の頂点に立った存在だ。何らかの理由で文明崩壊を起こし、その文明も今の水準まで文明レベルが下がってしまったがな。魔法のウォシュレットはその絶頂期の名残だったりするわけだ」


「なるほど。それで、この近くで一番大きい街ってどこになるんですか」


「うーん、ここより東北に存在する城塞都市ルーデルだが、あそこもまた遠いぞ。ただし非常に文明的な都市ではある」


「なるほど、後でルーデルにも伺ってみます。ありがとうございました」


 と言って帰路についたよ。開拓地はもうすぐ村になりそうな感じだそう。見て回ったけど楽市市場があったので気兼ねせずお買い物ができそう。開拓地で困ったらあそこの市場利用しようかな。

 そうそう、頑丈な鋼鉄のナイフといくつかの鉄くぎそれと釣り針を貰ったよ 細い木枝を加工してボロ家具が直せるかもしれない☆ 魚もつれるかも☆



 帰り道は干せそうな薬草を採取しながら帰りまんた。干せば長持ちしそう。効能も上がりそうな気がする。



「たっだいまー☆ さて、と。テーブルとチェア、これを補修してみよっか」


 そこらへんで拾った鋭い石で細い生木を半日かけて倒したよ。

 そうして作った木材(生木)と鉄くぎでチェアとテーブルの脚を交換。

 これで使えるようになったはずです!! ばんざいばんーざい、しっぽぽよよんぽん!

 すると


「え? テーブルの上に小さい宝箱が……」


 恐る恐る宝箱を開けると……


 ――パールライト開拓地の資材及び建築群購入セット――


 というホログラムが出現しました。

 そしてエメラルドの石が出現。


 ――おめでとうございます。修復ボーナスとして購入セットが到着しました――


「到着? まあいいや、これなんなの?」


 ――開発を助ける購入セットです。ホログラムを触ってみてください――



 恐る恐るホログラムを触ると、脳に直接内容が入ってきました。ほほーん。


 このホログラム、お金で資材や建築物を購入できるみたい。

 宝箱の中に現金や価値のあるものを入れると貯金されて、そのお金を基に購入する感じ。


 「今のベッドを修復するのに10ユロル、かけるものの購入に5ユロル。石臼400ユロル。15名分の食料一か月分150ユロル……」


 確か世界統一通貨ユロルは今でも使っていると南の開拓団のリーダーが言ってたな。

 「この宝箱の相場はどうなんだろ」


 南の開拓団の一般的な人物の一か月の給料35ユロルくらいと言っていたんだよなあ……。


 ――それなり、です――


 えええ……それなり……意味が分からない。


 ――この宝箱が出現したのは修復に成功したからです――


「ほほーん。んじゃきっと直したり新しく建てたりすればボーナスがもらえたりするのでは」


 ――そうですね、井戸や風車挽き小屋等、開発するにとって嬉しいボーナスが手に入ります――


「……ゲームじゃないよねこの世界」


 ――正真正銘の異世界です――


 そういうとエメラルド君は石に戻っていきました。


 うーん、まだ聞きたい気もしたけどまあいっか。



 よーし、開拓頑張るぞい!!


 ――数日後――


 無 理 。


 1人じゃ無理。石を叩き続けて生木折るの無理。磨製石器でもないし。魔法はまだまだ火力がない。


 やっぱり人を呼ばないとだめだ。


 こ こ に ? 


 ど う や っ て ?


 人里も南しか知らない。南は開拓で手一杯。


 違うところ探そう。西の森、行こう。



 西の森は暗く鬱そうとしていて、奥に進むと所々に罠が仕掛けられてるようになるね、文明人の予感だ!!


 ……くっさ、なんか風上からくっさい匂いが漂ってくる……。


 それでも文明人との遭遇がしたいためにずんずんと進んでいくよ。


「あ、あの赤い小鬼、加護で得た知識によると、ゴブリンってやつだね……。ゴブリンじゃあお話にならない……。ここはそっと引き返しますか」


 西の森はモンスター。北の森はどうだろ。


 それなりの時間歩くと、緑が生い茂る林の中に、緑色の人物が立っていました。見えにくい……。


「おお、オークっぽい。話しかけてみかな。ぼんじゅーる」


「エサガ ジブンカラ ヨッテキタゾ !!」


 もんの凄い勢いで攻撃されましたあああぁぁぁぁあああぁぁぁ!!


 命からがら逃げかえってきたよ。ここで開拓するの無理じゃない? うわーん。


 気を取り直して。西と北の森はモンスター。あとは、東の森かあ……ルーデルがあるというけれどどうなんだろうなあどれくらい遠いんだろ……。


 東に行ってみよう。てくてくてく。



 結構歩いたかな、5日くらい? ルーデル諦めて帰ろうかなって思ったところに、小道を発見、行ってみよう。


 小道を進むと、なんとそこには大きな大きな砦が鎮座してたよー。侵入を拒むようにね。


 人だ、人がいる。しかも開拓とかってレベルじゃないよね、これ。文明の香り! この先にはルーデルが!!


「こーんにーちわー!」


 両手を振りながら砦に近づいたよ。砦ってことは兵士がいるわけなので、両手を上にあげることで敵意はないことも示せるんじゃないかなあ……きっと。


「そこの亜人よ、そこで止まれ! 動くな!」


 なにこれ!? 凄い大きな声が響いてきた! この世界にも拡声機が存在しているの?? それくらい大きかったよ。


 止まれと言われたので停止。すると数名の兵士が出てきて(その兵士の背後にはボウガンらしき物体でこちらに狙いを定めている兵士と、変な筒でやはりこちらに狙いを定めている兵士がいる)こちらにやってきた。な、なんでしょうガクガクブルブル。


「モンスターの巣から出て生きた、しかも見たことのない亜人。お前の名前と所属を教えてもらおう」


 と兵士さんが脅すように言うので。


「お、大泉桜です……。所属、所属…… パ、パールライトの市長です!」


「オオイズミ・サクラァ?ミドルネームもちか、お前が? 冗談は止せ、罪が重くなるだけだ」


「え、え、えーと。サクラ、サクラです。あの、この西の遠くに開拓地を私が所有しておりましてそれで人を呼び込もうと思いましてここに来たのです」


 早口になっちゃいました。


「この西に開拓地はない」


「私はモンスターじゃないんです、その人物が西から来たということは、少なくとも居住地があるということにはなりませんか?」


「……連行しよう。ついてこい」


 あわわわ。どうなっちゃうのでしょう……


 ――


「うまい、おいしい、ぶんめいのあじがします。シチューおいしい」


「そんなにがっつきなさんな、お嬢さん。シチューはまだまだあるわい」


「ここのところ果実とかくらいしか食べてなくて。ありがとうございます。砦の責任者アルバターロ・ゴゴリガさん、それで、信じていただけましたか」


「まあなあ。まずは先遣隊をだす。お前さんの言う草原とボロ小屋が見つかれば嘘じゃないということになるの。そうしたら開拓団を送り込もう」


「嘘じゃないです! 市長の加護だって嘘じゃないですよ」


「何はともあれ先遣隊じゃ。先導は頼めるかな」


「もちろんです!」


 というわけで、先導したよ。森を苦にしない私だけで進んでいるわけではないので、かなり時間はかかった。この身体の凄さが垣間見れた感じがする。よきよき。


「ここがボロ小屋です!超古代文明の遺産である宝箱もここにありますよ!」


「確かにあるな……。よし、報告に戻ろう」


 とんぼ返りで大砦に戻ったよ。


「本当のようじゃのう、今本拠地に伝令を出した。追って希望者がここに来るじゃろう。それでだな、サクラちゃんよ」


「何でしょうか」


「ここから開拓団を出すということは、わがルーデルに帰属するということになるが、それでよろしいか?」


「えっ」


 考えてもみなかった。確かに、開拓団を出したところが縄張りを主張しての良いのは自明の理だよね。


「えっと。その場合開拓地のリーダーは」


「交代してもらうことになるのう」


 私死ぬがな。多分それ私死ぬがな。


「だ、駄目です! 市長の交代は認められません!」


「それなら開拓団は出せないのう。そのシチュー食べたらボロ小屋にとっとと帰りなされ」


 ぐぬぬぬ……。


「……れば」


「ぬ?」


「私が募集すれば私の開拓団ですよね」


「まあそうじゃが、見つかるかいのう、ここにはあぶれた開拓団なんておらんからのう」


「じゃあ、そのルーデルってところで募集します。ルーデルってところから開拓団が送られるって先ほどおっしゃったじゃないですか」


「……好きにせい」



 よーーし、ルーデルで熱意にあふれた人を見つけるぞい!!


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