間章 秋の七草ミニ図鑑

秋の七草ミニ図鑑



作中に登場する秋の七草たちのプロフィールをまとめています。



正式名称や生育場所、開花時期は『デジタル植物図鑑(旺文社)』および『広辞苑第六版(岩波書店)』ならびに『ブリタニカ国際大百科事典(ブリタニカ・ジャパン)』を参照しています。



メモは作者の私見を交えたネタ帳です。



【ハギ】


・マメ科ハギ属(Lespedeza bicolor)/萩


・生育場所  :山野


・開花時期,色 :秋・赤紫色


・メモ:


万葉集での言及が極めて多い、秋の草花の筆頭格。個人的には歴史があるまちの道路脇に垣根代わりに生えていたり、寺院の両側に生えているイメージがあります。もうすこし具体的なお寺ネタを混ぜるつもりが、ただのカメラ女子との対話になってしまいました。後編(冬編)でお坊さんとの会話、という体で後日談を入れたので、一応お寺っぽい雰囲気は出せたかなとおもいます。



【オバナ】


・イネ科ススキ族(Miscanthus sinensis)/尾花


・生育場所  :山地・野原


・開花時期,色 :秋・黄色


・メモ:


いわゆるススキ。花の形を動物のしっぽにたとえて「尾花」というようになったそうです。何もない原っぱに群生しているイメージがあり、トレッキング中の夫婦が眺めている構造に。後編(冬編)がぱっと思いつかなかったのですが、夫婦の息子とそのフィアンセを主役に据えることで、時間が進んでいる感を出そうと試みました。



【クズ(バナ)】


・マメ科クズ族(Pueraria lobata)/葛


・生育場所  :山地・野原


・開花時期,色 :秋・赤紫


・メモ:


根からとれるデンプンが、高級な「葛粉」になります。くず湯、とろみがあって美味しいです。が、ちょっといいホテルの部屋にしか置かれていないイメージがあります。ここまで建物縛りをしていたので、ハギと対比させるべくこちらは神社で。きちんと地元に入り込む前に挨拶をしていくフィールドワーカーの教授でした。



【ナデシコ】


・ナデシコ科族(Dianthus superbus)/撫子


・生育場所  :山野


・開花時期,色 :秋・薄紅色


・メモ:


言わずと知れた「可愛い子」の代名詞。河原撫子と呼ばれることもあるようです。花のイメージが強過ぎて、恋愛ネタになりました。他の作品と違いナデシコの独自がありませんが、1作ぐらいこの手の話が混ざっていてもいいだろうと思い、気になるあの子に声をかけるきっかけとして、恋のキューピット的に登場してもらいました。



【オミナエシ】


・オミナエシ科オミナエシ族(Patrinia scabiosaefolia)/女郎花


・生育場所  :山地・野原


・開花時期,色 :夏の終わり〜秋・黄色


・メモ:

女郎の花と書くように、美しい花とされているようです。ナデシコのように可愛らしいというよりは、品のある大人の女性のイメージがあります。某猫のミュージカルに出てくる元娼婦猫のように、「かつて栄えた」「今は衰えた」「美しさは残る」辺りの言葉を軸に話を組み立てました。



【フジバカマ】


・キク科ヒヨドリバナ族(Eupatorium fortunei)/藤袴


・生育場所  :野原・川沿い


・開花時期,色 :秋・淡紫色


・メモ:

涼しげな場所に咲くイメージがあります。大分ししおどしのくだり長かったですね……前編(秋編)で料亭に来たお客さんを後編(冬編)にも出すことを検討したのですが、それだとくどくなりそうなので、後編ではメインで出てくる人間をバイトの女の子に変えました。



【アサガオ→キキョウ】


・キキョウ科キキョウ族(Platycodon grandiflorum)/桔梗


・生育場所  :野原


・開花時期,色 :秋・ 紫、白など


・メモ:


朝顔ではない(秋の七草を朝顔とする説もあるようですが、今回は桔梗説をとります)。仏前花にも用いられるようです。家の中に供えられていても不自然の無い花ということで、前編(秋編)では一輪挿しとして、後編(冬編)では押し花として小部屋に飾られています。

やはり私(水涸木犀)が、書き手として限られた時間内で、どこまでの分量を書けるのかを試す目的で執筆した作品ですので、最後のエピソードに登場させる人間は物書きにしようと決めていました。綺麗にまとまったかは読者の方の判断に委ねますが、一応の完結をみてほっとしています。

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