夜空星空1-2

 あまりの出来事に言葉もない。


 私とメアリとでは、上半身のつくりも違うらしい。

 とりあえず、チョコバーをのどに詰まらせることがなくて良かった。


 私は落としてしまったショートブレッドを拾う。

 その砂埃すなぼこりを払ってから、噛んで食べてみせる。


「こうしないと食べにくいし、味がしないんだよ」


 新しく銀袋を破る。

 メアリは私が食べたショートブレッドの方をゆびさすので、そちらを渡す。

 不思議そうにそれを口に入れて噛みはじめるが、しばらくして頷く。

 何か喋ろうとした彼女だが、咳き込んだので水筒を渡す。


「匂いとは別のもの?があるね。口が乾くけど」

「それが“味”ってやつ。喉がかわくかはモノによるかな」


 それを聞きながら、自分が噛んだ断面を眺めるメアリ。

 彼女の行動を見るに人魚は文明を持たず、魚を捕まえてすぐ食べるような野性に近い生活を送ってきたのだろうか。


 ああ、野性といえば。


「メアリは服を着るのと着ないのどっちがいい?」


 私は彼女が羽織る上着と私自身のシャツをゆびさす。

 上着をこまめに羽織り直す彼女が気になっていたのだ。

 彼女にとって服は邪魔なのだろうか。


「これ?好きだけど、すぐ動いちゃう。あと、少し重い」


 服そのものは気に入っているらしい。

 ただし――


「ねぇ、ジェイ。どうしてあなたは、着ているの?」


 とは、シャツやズボンのこと。

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