Journey with Mermaid EP.6 夜空星空(ヨゾラホシゾラ)

夜空星空1-1

 すっかり夜になってしまった。


 私は手に収まる程度のポール型ライトをリュックから取り出した。

 電源を入れると、オレンジの光が周囲を照らす。

 プールサイドだけなら明るさは十分。


 メアリは光を放つそれに興味津々なのか、「触っていい?」と何度も聞いてくる。

 ライトを手渡したのは良いが、迷わず電源ボタンを押したので真っ暗だ。


「ジェイ、どうしよう!見えない!」


 急に暗くなると目くらましに近い効果がある。

 メアリは手探りで私をみつけると手で叩く。


「ジェイ、ジェイ!」

「同じ場所をもう一度押せばつくから」


 私も暗くてリュックの中が見えない。

 メアリが再び電源を入れるのを待ったが、彼女はしばらくして私のズボンを引く。

 仕方なく彼女から受け取り、照明を点ける。


「これも危ないよ……」


 メアリは急に暗くなり、怖かったらしい。

 まぁ、これなら今後素直に忠告を聞いてくれるだろうか。


「お、あった。あった」


 リュックの底からチョコレートバーとブロック状クッキーショートブレッドの銀袋を取り出す。その袋を破いて中のクッキーを渡す。


「好きな方を食べてみて」


 渡されたメアリはそれぞれの匂いを嗅ぐとチョコバーの方を選ぶ。

 そこまでは良かったのだが――


 彼女はオーケーサイン、親指と人差し指で輪をつくるほどの太さのそれを咥える。

 そして上を向くと海鳥やペンギンのように、それを丸呑みにしたのである。


「食べにくいかも?」


 いや、それを“食べる”とは言わない。

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