Journey with Mermaid EP.2 廃墟街の人魚姫(マーメイド)

人魚姫1‐1


 目が覚めた時、潮の香りがした。


 広場の地下は風音もなく静かだ。

 穴から差し込む陽の光が小島を舞台のように照らし、舞台を囲むように並び立つ柱は自然のパッチワークとして舞台をいろどる。


 この舞台の主役は人魚。

 いや、演劇ならば人魚姫とすべきか。

 彼女はかつて栄えたであろう都市遺跡の地下で眠っている。

 廃墟街はいきょがい人魚姫マーメイドだ。


 人魚姫の様子を見るが、今も穏やかに眠っている。


 まだ薄暗い地下で、自身が輝くかのような淡く白い肌。

 こちらを向いて眠る彼女は傷一つない彫刻のよう。

 寝息の呼吸がなければ“生きている”とは思えないほどだ。


 彼女はブランケットにくるまるように眠っている。

 ブランケットの下はターコイズブルーの下半身。この下半身はさっぱりした青に緑を薄く混ぜたような色合いだが、その上に細かな虹色の煌めきがある。昨日、抱えた感触としては細かな鱗があるのだろう。

 この上半身と下半身が同一人物の体であることには驚きしかないが、実際に見てしまうと受け入れるほかない。


 あと、人間と同じ上半身は私より一回り小さいが下半身は長い。

 尾の先で立てるのなら、私を超えて全体で2メートルほどになるだろうか。

 この鱗と長い下半身から、彼女は蛇女ラミアにも見えなくはない。だが、下半身の背中に魚のようなヒレと、尾の先もイルカやシャチのようなヒレがある。

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