人魚姫1‐2

 さて、この人魚姫をどうしたものか。


 人魚姫といえば海が舞台だが、それは物語の話。

 こちらの人魚姫は昨日、海水では泳ぐどころか苦しんでいた。

 その海水を真水で洗い流すと彼女の状態は回復した。そんな彼女を周囲が海水の小島に置いていくのは気まずい。

 相棒のAIであるレイヴンは彼女を警戒しているが、ようやく出会ったなのだからできることはしたい。


 あらためて周囲を見渡す。

 都市の広場地下の空洞は都市の地下に張り巡らされた水道の終着点らしい。

 私が通った地下水道以外にも何本か大小の横穴が壁に見受けられる。ここに集まった水は一定量が溜まると海へ流れていく仕組みなのだろう。そうして水源から流れ続ける水を有効活用していたはず。

 だが、水源からの供給が途絶えたか環境の変化で海水が流入するようになったのだろう。


 問題はここからだ。人魚姫はどちらから来たのか。

 海から来たのに海水が弱点なのは妙だ。弱っているだけというのもあるが、ならば海側の通路が塞がってしまったのだろうか。


 次に地下水道から来た場合。

 例えば水源に住んでいて、何らかの理由で広場に来てしまった。これなら海水に弱い理由は耐性がないからとなる。

 また、地下水道と広場には2メートル弱の高低差がある。大雨で流された後に水位が下がってしまうと、人魚の体では水路側に戻れなかったのかもしれない。


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