3-5

 博士ドクター、か。


「レイヴン、人魚の顔を映像として出してくれる?」

『情報が不十分ですが……』

「今できる範囲でいい」


 レイヴンは顔立ちや髪型を立体映像ホログラムとして映し出す。


『何か気になることでも?』

「彼女が博士に似ているかなって、ね」

『以前仰っていた方ですよね?』

「そう。変な博士。いやいや、気のせいだね」

『いや、これで人魚が知り合いに似ているから安全。とか言い出されても困ります。』


 そう言われると思ったさ。


「レイヴン、俺はもう寝るよ。明日は忙しいかもしれないし」

『そうですね。おやすみなさい、ジェイ』


 レイヴンが消灯すると、穴の中は星明かりだけとなる。

 広場の向こうで星空がゆっくりと巡る。



 ――実のところ。

 人魚と博士は似ている気がした。

 人に会わなかった期間のせいだろう。

 よくある特徴でも、その人だと思ってしまう事がある。たぶんそれ。


 何より、彼女の険しい表情なんて見たことはない……はず。

 いや、最後に見た博士はどんな顔をしていたのだったか。


 ――そんな事を考えたからか。

 いつぶりだろう博士の夢を見たのは。

 研究者らしい白衣と、中はクリーム色のネックセーター。

 髪はクセっぽいウェーブのブロンド。長さは肩より少し下。

 散らかったデスクで腕を枕にしながら、人が悪そうな笑みをこちらに向けている。


 ――デスクは整理しないのですか?

 夢の中で尋ねたが、博士に声が届いたかは分からない。

 博士はデスクの上で伸びをすると、欠伸と共に眠ってしまった。


 デスクから落ちた本を拾う際に博士の顔を見る。

 だらけきって眠る博士を見ると、夢であっても呆れる。

 呆れはするが――、それ以上に面白い人。


 何より博士のおかげだ。

 こうして、綺麗なで旅ができるのは。

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