1-2
街は死んでいた。
いや、分かっていたことだ。
街の外に延びる街道はなく、周囲に畑もない。
きっと、とうの昔に草原へと還ったのだろう。
そよ風を受けて白波のように揺らめく草原。
それを神殿からただ眺める。
街の外周に張り巡らされた白壁は何十、何百年と押し寄せる草原をせき止めてきたのだろう。街の中には自然の浸食は見られない。だが、そこに人々の喧噪はない。
街に入ってすぐ目についたのは、建物の劣化と石畳を覆った砂埃。
街の静寂と相まって、都市の「死」を意識せざるを得なかった。
神殿のベンチに腰掛ける。厳密にはベンチチェアなのか確かめる術はない。だが、街中にも石造りのものがあった。これも大理石製である以外は横長のベンチに思える。海と陸側それぞれの見晴らしのよい所に置いてあるのだからベンチだろう。
私にとって、この街の存在意義は大きい。
この街のおかげで自分と同じ人類がこの土地にいたのだと確信できた。
街に残されていた陶器などはどれも風化していたが、住居の装飾や落書きとして壁に残る人類の姿は間違いなく人間なのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます