Journey with Mermaid
1-1
ジャック・ガーランドは旅人である。
カーキ色の野球帽にコート、黄土色のリュックとカーゴパンツに登山靴。
彼は人を探して旅を続けている。だが、どこへ行けども人の姿はない。
あるのは人の去った遺跡ばかり。
山頂から白煙を上げる山を遠目に捉えつつ、黙々と広大な草原を歩いてゆく。
しばらく歩いたのち、小高い丘から海沿いの街が見えた。
町ではない。街だ。
「あれか……」
目的地があるのは良いものだ。
ここ数日は旅が放浪というより遭難、大海原を漂流する筏の気分で過ごしていた。
「陸地を歩いて漂流者気分ってのもねぇ……」
自分でも妙な表現だと思う。だが、ここ数日はそんな調子だった。
これまでは時折見かける数軒だけの集落――といっても土台の丸石と風化した木材片、あるいは石垣だったのか平地に積み上げられた大小の石から人類の営みがあったと信じるしかなかった。
だが、今回は違う。あれは間違いなく人類文明の証だ。
映像で見たギリシャのパルテノン神殿が向こうの丘にある。
正しくはそれに酷似した何かだが、少なくとも古代ギリシャ並みの文明が目の前にある。
旅を始めてから、ようやく文明らしい文明を見つけたのだ。
神殿の下には遠目からは隙間がないほどに建物が密集しており、2階建て以上の建物も多い。この街なら一定以上の文化・教養もあるだろうからコミュニケーションもとれるはず。後のことはその時判断すればいい。
リュックを背負い直すと私は街へと歩を進めた。
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