第15話

 フェルディナンドはその場で主従契約を結んでくれました。

 その場で安堵のため息をつきそうになりましたが、必死で心を引き締めました。

 わずかでも隙を見せるわけにはいきません。

 これから学院の妨害と戦う必要があるのです。


「今からフェルディナンドの部屋を用意します。

 家老に相応しい部屋を用意しなさい。

 場所も私やカチュアが呼べば直ぐに来られる場所にするのです」


 アレクサンダーが驚いています。

 まだまだ思考が未熟です。

 シャーロットが他の侍女に何か命じています。

 フェルディナンドの部屋の準備のために、部屋の移動を命じているのです。

 私が、カチュアとフェルディナンドの間に、間違いが起こることを望んでいると察したのでしょう。


「アレクサンダー。

 フェルディナンドに内密に確認したいことがあります。

 護衛は侍女に任せて、部屋の移動をしてきなさい」


「承りました」


 私は騎士たちを部屋の外に出すと、カチュアに確認しました。

 フェルディナンドの魔力の色が何色だったかを。

 カチュアの答えは八色でした。

 ここで新たな疑問と疑いが生まれたのです。

 そこで今度はカチュアも侍女も部屋から出して、フェルディナンドと二人きりになり、重大な質問をしたのです。


「フェルディナンドに質問します。

 自分の魔力は何色に見えますか。

 いくつの色に分かれていますか?」


「十四色です。

 白、黒、赤、青、緑、黄、茶、橙、藍、薄青、黄緑、紫、金、銀の十四色です」


 フェルディナンドが少し動揺しています。

 それもしかたがありません。

 私が特別待遇しているのは明確なのです。


「フェルディナンド。

 貴男の魔力は特別です。

 私にはそれが分かります。

 私にできり限りの、最大限の待遇にする事を約束します。

 すでに主従契約を結んだからと言って、実力に相応しくない劣悪な待遇などはしません。

 だから望みがあれば何でも言ってください」


「ありがとうございます!

 公爵家の家老待遇にしていただけるなんて、思ってもいませんでした。

 もう過分な待遇をしてくださっています。

 十分な待遇を約束してくださっています。

 ただできれば、研究費をたくさんお願いします」


「分かっていますよ。

 我が家ならフェルディナンドの魔力をお金に変える事ができます。

 利益の半分を研究費に与えましょう。

 毎月金貨百枚は約束します」


「本当ですか!

 ありがとうございます!

 ありがとうございます!

 ありがとうございます!」


 私はを侍女を呼んでフェルディナンドを部屋に案内させ、カチュアを呼んで二人きりで重大なはなしをしました。


「カチュア。

 貴男の婿はフェルディナンド殿に決めました。

 今日からそのつもりで行動しなさい。

 今までのように、多くの婿候補に愛想を振りまいてはいけません。

 誤解されないように、毅然とした態度をとりなさい」


「え、あの、その、なぜでございますか?」


「フェルディナンドの魔力は伝説の聖人に匹敵します。

 性格に難のある他の候補者など塵芥同然です。

 絶対にフェルディナンドを婿に迎えるのです。

 カチュアもフェルディナンドにひとめ惚れしたのでしょ?」


「え、あの、その、ありがとうございます。

 ですが、家格の問題はどうされるのですか?

 最低でも侯爵家の家格が必要なのではありませんか」


「買います。

 フェルディナンドの魔力を使えば、困窮している侯爵家の養子にするくらい簡単な事です」


 さあ、これからは今まで以上に忙しく危険になりますよ!

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