婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

第1話悪女テレーザ視点

「ねぇ、エーミールさまぁ。

 私と結婚してくださいぃ」


「いや、そんな事を言われてもな~。

 もうナウシカとの結婚を王家に届けてしまっているんだ。

 いまさらなかったことにはできないよ。

 それにテレーザとは遊びの約束じゃないか」


「そんな事は、分かっていますけどぉ。

 本当にそれでいいんですかぁ。

 ナウシカと結婚しても、つまらないですよぉ。

 顔も童顔ですしぃ。

 身体も子供みたいですよぉ」


「まあ、それはそうなんだが、ナウシカは金を持っているからな。

 結婚したらあそこの聖銀鉱山の利益の一部をもらえるんだよ」


「それは、利益の一部ではありませんかぁ。

 子供が二人産まれたらぁ。

 二人目がナウシカのシンクレア伯爵家を継ぐのでしょ?

 そうなったら、もうその一部ももらえませんよぉ」


「そな事はない。

 支援を約束してくれてる」


「それは、エーミールさまの借金をしらないからですよぉ。

 借金の後始末をさせられたら、王家に離婚を申し込むのではありませんかぁ」


 エーミールが黙り込みました。

 バカで浪費家で浮気性いクズ男でも、自分の借金額が、愛想をつかされるくらい莫大だという事は理解できるようですね。

 これなら大丈夫でしょう。

 一気に畳み込みましょう。


「もしエーミールさまの借金額がソルトーン侯爵に知られたら、跡継ぎから外されるのではありませんか?」


「なんだと?!

 ある時払いの催促なしだと言ったではないか?!

 父に言いつけるつもりか!」


「私と結婚してくださるのなら、そんなことは言いませよぉ」


「だが、しかし、この結婚は父上も王家も乗り気なのだ。

 いまさら婚約を解消するのは難しい」


「大丈夫ですよぉ。

 私がナウシカに虐められたことにすればばいいいのですよぉ」


「ナウシカが?

 テレーザに虐められた?

 誰がそんな話を信じるんだ?

 まるっきり逆じゃないか!」


「ふっふっふっふ。

 そんな事はないですよぉ。

 私は気が優しくて大人しい女なんですよぉ。

 ナウシカは意地悪で気の強い女なんですよぉ。

 多くの貴族士族が証言してくれますともぉ」


「金か?

 金の力で偽証させるのか!」


「エーミールさまぁ。

 ソルトーン侯爵家から勘当されたいんですかぁ?

 そんな事になったらぁ。

 取り立ての者に殺されてしまいますよぉ」


「なんだと?!

 俺を脅すつもりか?!」


「そんなつもりはありませんがぁ。

 我が家も又貸ししているだけなんですよぉ。

 金主は本当に怖い人なんですよぉ」


「まさか?!

 金主は犯罪者ギルドか?!」


 これでエーミールは、私の台本通り婚約破棄のセリフを言うはず。

 その時に合わせて呪術を発動してナウシカを殺せば、婚約破棄のショックで死んだことにできるでしょう。

 ナウシカは天涯孤独の身だから、残された財産は婚約中だったエーミールのモノになはずです。

 エーミールが婚約破棄を口にしようとも、王家が認めなければ破棄されたりはしませんからね。


 ソルトーン侯爵だって聖銀鉱山が手に入るのなら、どのような手段だって使いますし、父上もあらゆる裏工作を行ってくれます。

 私がエーミールと結婚して、あの聖銀鉱山を手に入れられれば、この国を私の手で動かすことだって夢ではないわ!

 エーミールは目障りになれば殺せばいいだけ。

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