第14話

 なんと!

 七色の魔力です!

 伝説の七色の魔力です!

 ここで眼にできるなんて、想像もしていませんでした!

 神に愛された、聖者や聖女だけに与えられるという魔力なのです!


 カチュアが驚愕の表所を浮かべています。

 それも当然です。

 このような奇麗な魔力を見て驚かない者はいません。

 ですが、おかしいですね。

 驚きの表情を浮かべているのがカチュアだけです。

 これは確認しておかないといけませんね。


「アレクサンダー。

 フェルディナンドの魔力は何色に見えますか?」


「素晴らしい輝きの赤と橙です。

 これほど光り輝く魔力は見たことがありません。

 僭越ながら、この者を召し抱えるべきです」


「シャーロット」


 私はシャーロットを呼んで、周りに聞こえないように、特殊な話法でアレクサンダーにしたのと同じ質問をしました。

 答えは黄、緑、青、藍の四色でした。

 これで確信しました。

 二人にしか確認していませんが、間違いないでしょう。

 恐らく、見ている人間が保有している魔力色しか確認できないのでしょう。

 だからアレクサンダーとシャーロットは、自分の魔力の色だけが見えるのです。

 そして私には赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色に見えるのです。


 え~と、困りました。

 カチュアの頬が鮮やかな赤色に染まっています。

 無意識に切なそうなため息をついています。

 目元がはれぼったく赤くなっています。

 瞳が濡れ光っています。


 初恋ですか?

 ひとめぼれの初恋ですね。

 ですがそれもしかたありません。

 聖者と言ってもいい魔力にあてられたのです。

 無垢の乙女が恋焦がれてもしかたありません。


「レイラ様、この魔力量は……」


 アレクサンダーはまだまだ未熟ですね。

 動揺を声や表情に現し過ぎです。

 でも、まあ、それもしかたありません。

 魔力量が莫大過ぎます。

 学院がよく我が家の面接を許しましたね。

 もしかしたら、まだ面接を受けているのを知らないのかもしれませんね。

 そうでなければ、皇帝を超える魔力を持つフェルディナンドを失うかもしれない面接は、絶対に阻止していたはずです。

 そう、私たちは嘘をついていたのです。

 魔力を量るための魔晶石は、皇帝の魔力の三倍分も用意していたのです。


「フェルディナンド殿、今この場で召し抱えると約束しましょう。

 研究はレネオス公爵家で続けてもらいます。

 研究費は全てレネオス公爵家が負担しましょう。

 待遇は研究職家老とします。

 ただし、フェルディナンド殿の魔力はレネオス公爵家のために使います。

 それでいいのなら、今この場で主従契約を結んでもらいます。

 よろしいか、フェルディナンド殿!」

 

 私は身分差による制約を破って自ら交渉しました。

 アレクサンダーに任せてはおけません。

 ここで契約してしまわないと、時間が経ったら学院が邪魔します。

 ぜったに邪魔します。

 ここが勝負時なのです!

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