第13話

「フェルディナンド殿、入られよ」


「はい、失礼いたします」


 今日は家臣の新規採用面接です。

 才能がありながら、平民出身のため正当に評価されなかった者。

 持って生まれた魔力を利用しようとする、悪質な貴族につけ狙われ、学院に逃げ込んだ者たちです。

 よほどの才能があれば特待生になれますが、普通は働きながら高額な授業料を捻出しているのです。

 命と自由を護るために、ギリギリの生活をしているのです。


「さて、こちらでも資料は集めている。

 集めているが、それとフェルディナンド殿の自負が一致しているとは限らん。

 フェルディナンド殿自身が思っている得意な分野を教えてくれ」


 質問は騎士長のアレクサンダーがしてくれます。

 採用を決めるのはカチュアと私ですが、侯爵令嬢のカチュアと前侯爵夫人の私が、平民のアレクサンダーと直接話すことができないのです。

 非常にまどっこしい事です。

 不合理な身分差によるルールです。


 護衛も万全にしなければいけません。

 戦闘侍女がカチュアと私の背後に立ってくれています。

 私の斜め前方は、盾になれるようにアレクサンダーを含めた騎士四人が立っており、部屋の横壁には左右四人づつの従士が立っています。

 そんな圧迫された状況で、自身をアピールしなければいけないのです。


「はい、申し上げさせていただきます。

 私には莫大な魔力があります。

 特待生に選ばれるほどの魔力です。

 それは侯爵令嬢カチュア様のお役に立てると思われます。

 ただ私がやりたいのは、研究です。

 研究を続けさせていただくこと、研究費を補助していただくこと、それが家臣になるための条件です」


 堂々としています。

 別に無理に家臣になりたいわけではないと、胸を張って言い放ちます。

 なかなかの度胸です。

 まあ、召し抱えられなくても特待生を続け、いずれは教師になりたいと思っているのでしょう。


 ただまだ魔力をお金に変える知識と技術は得ていないようです。

 貴重な知識と技術は、学院でも限られた教師だけが閲覧できるのでしょう。

 弟子と言えども勝手に伝えてはいけないのでしょう。

 知ってからでは召し抱えられないですね。

 今が好機というわけです。


「では、具体的に魔力の量を確認させてもらう。

 ここに空の魔晶石が並んでいる。

 全てに魔力を込めることができたら、王族に匹敵する魔力量だ。

 ただし全魔力を込める必要はない。

 ちょうど半分でいい。

 我々がフェルディナンド殿を襲って洗脳する危険も考え、半分の魔力を込めてもらい、魔力量を確認する。

 いいか?」


「はい、大丈夫でございます」

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