第12話
「今日は資金稼ぎをします。
いいですね、カチュア」
「はい、おばあ様。
今日は何をするのですか?
魔術巻物制作ですか?
魔晶石創りですか?」
「最初に魔晶石を創って、霧散する魔力を無駄にしないようにします。
次の空き時間で魔術巻物を作ります」
「はい、おばあ様」
カチュアが素直に制作に取り掛かります。
私が教えたことではありますが、お金の大切さをよく知っているのです。
上級貴族の中には、金儲けなど貴族のすることではないと言うバカもいますが、金儲けこそ貴族の仕事です。
家臣を雇い領地領民を護るためには、軍資金が必要なのです。
カチュアと私がこうして学院に留学できたのも、多くの護衛を連れてこられたのも、潤沢な資金があるからです。
個人的な収入源があるからです。
隠居領という名の台所領だけでは、とても無理です。
その隠居領も、国を遠く離れては輸送費だけで大きく、取り分は目減りします。
途中で輸送人が盗賊に襲われるかもしれません。
なによりも、息子のリアムが、女遊びのためにカチュアと私の台所領を横領するかもしれません。
幸いカチュアも私も莫大な魔力を持っています。
ですがその魔力も、使わなければ雲散霧消してしまいます。
そんなもったいない話はありません。
回復する量を逆算して、有効活用してきました。
それに我が家には、知る人が限られている魔晶石と魔血晶の創作術が伝えられていますから、それを有効的に利用します。
問題があるとすれば、材料が貴重な魔獣素材であることです。
ですがこれは購入すればすみます。
貴重で高価な素材ですが、完成した魔晶石の販売価格から見れば安いモノです。
次がある意味一番の問題なのですが、結晶を創作する最初に莫大な魔力が必要なので、上級以上の魔法使いしか創れないという事です。
いま学院に来ている我が家の人間では、カチュアと私だけです。
「おばあ様、そろそろ魔力が半減します。
魔術巻物作りに変えたいのですが、よろしいですか」
「ええ、大丈夫ですよ。
自分の魔力量にあわせて作ってください」
純粋な才能だけなら、カチュアの方が私より優れています。
ですが私も無駄に歳をとっているわけではありません。
魔術の精度、とくに省力に優れているのです。
限界まで無駄を省くことで、少ない魔力で目的を達成できるのです。
カチュアが、魔鼠の魔皮紙に魔鼠の血で魔法陣を描きます。
初級魔法を発動する魔術巻物です。
カチュアと私なら、亜竜の竜皮紙に亜竜の血で魔法陣を描いた、上級魔法の魔術巻物を作る事もできますが、それでは効率が悪いのです。
上級魔法の魔術巻物を買える者、必要とする者など限られているのです。
しかも材料となる亜竜素材が高すぎるのです。
初級魔術巻物が一番原価率がよく、効率的に稼げるのです。
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