第5話王太子ルーカス視点

「ソルトーン侯爵!

 貴公はこの事実を知っていたのか?!

 知っていて王家が認めた婚約を破棄させたのか! 

 返答しだいでは、余直々に王国軍を率いて、ソルトーン侯爵家を攻め滅ぼすぞ!」


「申し訳ありません!

 まことに申し訳ありません!

 全てはエーミールが勝手にやったことでございます!

 私は何も知らなかったのでございます。

 なにとぞ、なにとぞ寛大なご処置をお願い申し上げます!」


「知らなかっただと?

 貴公がソルトーン侯爵家の当主であろうが!

 それで知らないと言ってすむことか!

 知らないという事は無能であるという事だ!

 無能者に国境を預かる大切な侯爵家は任せられん!

 国王陛下が無能者に国境を任せるわけがない!

 貴公は王家に含むところがあって、王家の承認を蔑ろにしたのであろう!」


「違います!

 私が無能だったのです!

 私が無能であったため、国王陛下と王太子殿下に顔に泥を塗ってしまいました。

 しかしソルトーン侯爵家に叛意はございません。

 どうか、どうか、どうか私の隠居と、エーミールの勘当追放でお許しください。

 ビクターの跡目継承をお認めください!」


「余を騙して冤罪でナウシカを裁かせようとした!

 余に暗愚な王太子という汚名を着せようとした!

 それに対する国王陛下と余に対する詫びがそれなのだな?!」


「賠償金を支払わせていただきます!

 領地も割譲させていただきます!

 ですから、どうか、どうか、どうか寛大なご処置を!」


「シンクレア伯爵家に対するわびはどうなる?

 冤罪をでっちあげて、余も含めて多くの者の前であれだけの恥をかかせて、わびないというのか?」


「シンクレア伯爵家に対してもわびさせていただきます!

 賠償金を払わせていただきます!

 どうか、どうか、どうかそれでお許しください!」


「賠償金だけですまそうというのか?

 王家には賠償金と領地の割譲をするのに、シンクレア伯爵家には領地を割譲しないというのか?!」


「恐れ多い事ながら、ソルトーン侯爵家は王国より大切な国境警備の役目を与えていただいております。

 これ以上領地を割譲することは、役目を全うできないことになります」


「その心配はいらん!

 王家王国に叛意を持っているかもしれない家に、国境警備の大役を与え続ける気は、国王陛下にも余にもないのだ!

 当然、無能な者にも若年者にも任せられん!

 国境警備は他の貴族に任せればいいことだ。

 そうなるとソルトーン侯爵家は目障りだ!

 完膚なきまでに攻め滅ぼして王家の直轄領として、有能な者を辺境伯に任じて派遣するか、領地の大半を奪って転封するかだ。

 ソルトーン侯爵はどちらを選ぶ!?」


 さて、どう返事をするんだ、ソルトーン侯爵、エーミール、ビクター?

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