第4話ナウシカ視点

「すまない!

 本当にすまない!

 全部余のせいだ!

 余が愚かな欲に捕らわれてしまったから、ナウシカをこのような眼にあわせてしまったのだ。

 なんでもする!

 この償いは必ずする!

 どのような願いもかなえる!

 だから目を覚ましてくれ!

 死なないでくれ!」


 血を吐くような言葉でした。

 懺悔とも言える告白でした。

 神に対する誓いにも聞こえました。

 ですが、言葉面だけを聞けば、私に対する願いと約束ともとれます。

 私はそこに付け入る事にしました。


「ほんとうですか?

 本当に償ってくれるのですか?

 本当にどんな願いもかなえてくれるのですか?」


「おお、おお、おお!

 たすかった!

 生き返ってくれた!

 おお、おお、おお!

 本当だとも!

 どのような償いでもしよう!

 どんな願いでもかなえて見せる!」


「では、私を女伯爵としてください。

 シンクレア伯爵家の当主として認めてください。

 そうしていただければ、無理に結婚しなくてすみます。

 ソルトーン侯爵家のエーミールのような、バカで浮気性で浪費家と結婚しなくてすみます。

 だから女当主を認めてください。

 料理屋を開く後見人になってください!」


「え、あ、なんで?

 いや、その、女当主はわかる。

 え~と、後見人もわかる。

 女の身で貴族家の当主は風当たりが強い。

 よろこんで後見人になろう。

 だけど、そこになんで、料理屋がからむんだ?」


 まずい!

 冷静にさせてはダメです。

 支離滅裂でもいいのです。

 勢いで押し切ればいいのです。

 人生の目標だった自分がオーナーを務める料理屋。

 オーナーシェフになる夢!

 自らの手で野菜を作り、自らの手で獲った魚肉で作る創作料理!

 今ならかなえられるのです!


「ああ!

 嘘だったのですね?

 償うと言ったのも、願いをかなえると言ったのも、全て嘘だったのですね?

 口から出まかせだったのですね?

 私を騙したのですね!

 王太子殿下は自ら口にした約束も守って下さらない方なのですね!」


「いあ、嘘じゃない!

 余は嘘などつかん!

 ナウシカに償いをしよう!

 ナウシカの願いをかなえよう!

 余が後見人になってシンクレア伯爵家の当主にしてあげる!

 だがなんでそこに料理屋がからむんだ?」


 理由があれば認めてくれそうです!

 なぜか分かりませんが、私に対する負い目があるようです。

 泣き落とししましょう。

 女の涙は武器です!


「私の夢なのです!

 幼い頃からの夢なのです!

 自分の手料理を多くの人に食べてもらうのが夢なのです!

 ルーカス王太子殿下!

 私が夢をかなえる手助けをしてくれませんか?」


「手伝う!

 手伝ってあげるとも!

 ナウシカの夢の手伝いができるなんて、こんなうれしい事はない。

 それに、余も食べに行ってもいいのか?

 余もナウシカの手料理が食べられるのか?」


「はい、ぜひ食べに来てください」

 

 

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