第102話 疲れる

王妃様が女官長へ、検討するように話している。

「遅くなってきましたので、そろそろお暇いたします」

「あ、あら、本当だわ、こんな時間」

窓の外は夕闇が迫っていた。濃紺の空を縁取る、地平線のオレンジ。

少し慌てたように王妃様は立ち上がる。

ドアまで来て、次回のお誘いを受けるが、お断りだ。

「いけませんよ、王妃様。待っている方々がいらっしゃるでしょう」

貴族の奥方とお茶するのはある意味、王妃様の仕事。そうそう割り込みしていては恨まれる。ショボンとした表情は、やっぱりセヴリップにそっくり。

「また機会があるようでしたら、お誘いください」

「ええ、ではまたの機会に」

ドアが閉まるまで笑顔を維持していたが、パタンと閉じた瞬間、真顔に戻す。

「おばちゃん…」

何も聞かないよ。顔、引きつりそうなんだ。

営業畑じゃないけど、社会人として笑顔は基本だ。やりますともよ、大人だもん。

それにしても消耗したわ…

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