第2話「モノホンのアレク様…?アレク様の奴隷…!?」「いや、話盛りすぎ」
それから私たちは連絡先を交換し合った。
纏っていた衣装を片付け、缶コーヒーを片手に束の間の休息。
ちなみにこの缶コーヒーが俗に言う報酬だ。
この時間で更なる衝撃の事実を知ることになる。
一条奏多くん。21歳、大学3年生。
「大学3年!?え!!若!!!」
「なに、そんなに驚くこと?」
「いや、大人っぽかったからてっきり社会人なのかと…」
私の3つも下なのか…。
なんか世間的には私も若いハズなのに一気におばさんの気分…。
「おねーさんは24歳なんだね。子供っぽいから勝手に俺と同年代くらいなのかと思ってた」
「童顔なの気にしてるんだからあまり言わないで…」
「なんで?老けて見えるのよりマシでしょ」
それは自分が年相応に見えないから…とかですかね?
なんて無謀な考えを口走りそうになったけどなんか無性に虚しくなって止めた。
「ふーん、大学って実家なのかと思ったら、1人暮らしなんだ」
「まーね、実家遠いし1人の方がコスプレの練習とかしやすいし」
「大人だね…バイトは?」
「んー、やってるっちゃやってる」
なんだその曖昧な返答は…?
「おねーさんは実家暮らしなんだね」
「うん。本当は歳も歳だし一人暮らししたいんだけどなんせ一人っ子で親が厳しくて…」
「あー、まぁ女の子だしね」
さも興味なさそうにスマホをタップしている一条くん。
なお、現在は機材一式を片し、一条くんが運転してきたバンのトランクに腰掛け談笑中。本当に、なんの時間だ。
と、ふいに私のスマホが通知を知らせる。
なにかと覗くと、私が愛してやまないソーシャルゲーム、【聖騎士団のRequiem】のイベント通知だ。
今週末に開催される大型イベントで、会場は20000人規模が入る特大ホール。
残念ながら私は参加抽選に外れてしまったためこのイベントは中継で参加するという嬉しいけどちょっぴり寂しいイベントだ。
「あ、やっと詳細アップされたんだ。いつ挙がるんだって思ってたんだよね」
と、ひょいっと身を乗り上げて私のスマホを覗き見る一条くん。
ちょ…近い近い!!イケメンは横顔も破壊力あるんだからちょっぴり自重してほしい!!しかしなんか良い匂いすんな…!?
「あ、そうか。アレス様のコスプレしているくらいだからこのイベントくらい知ってるよね」
「知ってるよ。俺も参加するし」
「参加するの!?え〜当たったんだ羨ましい…!!私は家で映像参加だよ〜
そう言うと、一条くんは考えるそぶりを見せた後私にこう提案してきた。
「…参加したいんだったら来る?」
「え?」
今、なんて?
聞き間違いかな?
参加したいんだったら…来る??
「だから、参加したいんだったら、俺と参加する?」
…聞き間違いではなかった。
「ええええ!!?そんなことできるの!?あ、チケット余ってるとか!?神すぎる!!!行きたい!!!是非行かせてください〜!!!」
「了解。じゃあ運営に連絡しとくね。アシスタント1人連れてくって」
「うん!!!………え?」
一条くんの顔をみる。
一条くんは「言ったな?」とでも言いたげな顔でこっちを見てる。
いや、それよりもアシスタントってどう言うことよ!?
「実は俺、本当にアレス様なんですよ」
と、とあるページを表示して私にスマホの画面を見せる。
そこには、私が楽しみにしているイベントの詳細、ステージに出演するキャストの名前も記載されていた。
アレス様の名前もそこに…
「…急遽出演決定…KANATA!?」
そこには今日のようにアレス様の装束に身を纏った、一条くんが表示されている。
「まぁ、来週は俺が空けてってお願いしたし、このイベントには初めから連れてくつもりだったんだけど…そんなにお願いされちゃー仕方ないよね。この日は俺がアレス様になって色々労ってあげるんじゃなく…付きっきりでイロンナコト、してもらうかな」
ん〜、と背伸びをしてバンのトランクから腰を上げる一条くん。
じゃあ今日は解散ね〜と私をせっせと下し、車を出発させる準備をする。
「あ、そうそう。当日は俺が迎えに行くから。また住所連絡しといてね」
と言い、私を置いて去っていく一条くん。
「…私は一体どうなっちゃうの?」
1人頭を抱える女を、アレス様ぬいはただ見ているだけだった…。
コスプレイヤーの男の子と出会っちゃった話 聖涼 @Ryo_hijiri
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