第24話呪紋印象
「あっちに人がいるよ!」
ティさんのよく通る声が遠くから聞こえてきた。
ちゃぷ
温泉の湯気が岩陰から漏れてくる。
たしかに誰かいた。
誰か?
腰まで伸びた銀色の髪。
その先端だけが鮮やかな蒼。
つー
静かに私の頬を伝う涙。
「アヤあれは」
バシャッ
足下のお湯を
「アリエス様ァ!」
「アヤ久しぶり」
どうしてここにという思いでいっぱいだった私はそれ以上は口を開けずに、代わりにリリアさんが、
「どうしたんですか?アリエス様」
「そっちこそどうしたそのカッコ」
流石アリエス様は一目で私だと気づいて下さる。
ささっとアリエス様にルゥさんから貰ったタオルを渡して、
体を拭いて、、
「アヤ、すまないが体を拭いてくれないか?」
え?私ですか?
どうにも最近体がうまく動かないのでな。
頼む。
「わかりました」
という声も震えていて、
大丈夫だよ?とリリアさんがフォローを入れてくれた。
腕から髪、頭、背中に至ったところで、
_?
何か視えた。
水気を拭き取るとうっすら浮かび上がってきたそれは、
「未代の新天地」
「どうりで。これはアヤの作品か」
最近ソーマの巡りが悪いので、実は温泉巡りをしていたんだ。
特にここの絵が効果的とわかった私は勝手なこととは知りつつも、<背面キャンパス>に呪紋印象させてもらってたんだ。
「そんな私なんか」
いや、よくできているよ。
流石だな。
これは私の技術から派生したものとはいえ、目を見張るものがある。
クウィウル鉱石で作った塗料にお前のソーマを流し込んだな?
懐かしい匂いがするよ。
「あぁアリエスぅ!!」
「えっと、なんでアリエス・ルゥがここに?」
ラさんは首をかしげていた。
その
「つまり?アヤが聞いた話と勇者たちの依頼内容に食い違いがあると?」
間に入って会議を取り持つのは稀代の名勇アリエス・ルゥ。
何しろ今自分達が使っているもの全てを作った人なのだ。
スマホ、タブレット、建物の仕組みに至るまで全部。
その全ては間違いなく自分達の生活の一部になっていた。
神と言って差し支えない存在が目の前にいる時、どういう態度でいるのが正解なのか、
それはどこでも習うようなことではなかった。
「ところでこの未代の新天地、いや龍貴晶というんだな。何らかの物語になっているな?」
「流石に気づきますよね」
私はアリエス様にまだ何も伝えていなかった。
それでも、彼女には、あぁ彼女には見透かされる!
嬉しい!
「ア、ア、アリ」
震え咽び泣く私をアリエス様は相変わらず男らしく肩を抱いて下さる。
_このアヤたらし!
元素世界では時間にしてほんの数年の話だが、ここファーリアでは1000万年ほどの
私もそれくらいの感覚があった。
これは実はどこかの誰かに依頼されて描いてみることになったものです。
「素性の割れない人の依頼受けたの?お姉さん」
有り得ないという顔をした5人組の末っ子に苦笑いのクマ。
_ま、そうなるよな。
「違うんです。ほら私と同じ服装してたし、国の偉い人だとばかり、、」
その時初めて私の服が違うのに気づいたアリエス様は
「そういえば制服はどうした?」
アヤはたしか白衣より制服が落ちつくと言っていたじゃないか?
あ、いや、
「私のせいです」
すまなそうに手を挙げるクマ。
「リリア?」
アヤのために私が元素分解を実行して、アリエス様に会いにいこうとファーリアに転移したのですが、視ての通りアヤの生地を私が吸いとってしまい、私はクマのぬいぐるみに、アヤは全裸でファーリアに舞い降りてしまいました。
その結果、現地の王国騎士に補導され取り調べ室で王国騎士の制服を貸してもらい、今に至ります。
「では王国騎士に配属されているのか?」
いえ、違います。
借りたままになってしまったので、折を見て返しにいこうと思っています。
ふむ。
「これはどこの時代かわかるか?」
え?
気づくとアリエス様はもう私達の話は聞いておらず、龍貴晶を見上げていた。
「視たところファーリアではあるが、現代ではないだろう」
現代ではこれほどの悪政を強いる者はいない。
一部そうしたものがいることは認めるが、彼らにそこまでの影響力はない。
私も時代までは気にしていなかった。
「悪政を強いていたのは、そうだな。
先代魔王の時代だろうな」
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