第22話制作現場

まず話の筋、それから公開済みのものとそうでないものを分けて組み立て直しに入った。


「ふぅまぁこんなもんか」

元ある話に加える形で進んでいった編集は七割ほど増した。


_盛るねぇ?

ギガ盛りだった。

まず始まりは


「国と国同士が争い人の数が減少し、やがて資源が枯渇し始めて、それを精霊たちの力で補いまだ戦おうとする人間逹。

見かねた魔族が間に入るものの収まらず、やむなく人質を取る魔族。

それに対して戦いを任された勇者。

意地の張り合いで止まらなくなった人間と魔族の間に入る龍。

龍は停戦協定を持ち掛けるも人間は納得せず。

共通の理解を得るために立ち上がった人間代表のアリエス・ルゥ。

彼女の説得で一時的に人間は剣を収めることとなった」


ふむふむとクマは読んでから、

「アヤこれじゃダメだよ。現実すぎる。

もっとファンタジーにしないと辛すぎて食べらんない」


言っていることはわかる。だが、どうしたものか。

「ここに原生鱗神龍げんせいりんしんりゅうを入れてみるのは?」

ティが珍しくまともなことを言った。

リリアは

「それじゃダメだよ。

このシーンは一般の上級龍がメインだし」

ラは

「セィンティア様を光臨させてはどうだろう?」


どこに?

「アリエス様の中に」

!?

中に?


「あ、いやセィンティア様を入れる器で相応しいのはアリエス様しかいないと思うんだ」

私が睨んでいるのに気づいてラさんは目を反らしながら言った。

_そういう意味ね。

だがどうしても納得いかなかった私はトラットリア一族の名前に差し替えた。


「うぅん。なるほど」

ラさんは唸りながら私の書いた話を読んで、

「やっぱさ?アリ、、、」

ごめんなさい。


自覚はない。

そんなに怖い顔をしただろうか?


ともかく話作りは難航を繰り返した。

何しろベースとしている話がひどい話なのだ。


それを美談にしようというのだから無理もない。


_でも、諦めたくない。

「アヤ、少し休んだ方が」

涙を拭いてくれたのはクマ。

私の心に影が差す。

「うるさいな。こんなんじゃアリエス様に合わせる顔がないじゃん。

リリアに私の気持ちがわかるの?

幼い頃からずっと一緒にいた人なんだよ?」


わかる。

今の私はリリアさん本人を睨みつけているということが。


でも、この世界がどうなってもいいなんて、どうしても思うことはできなかった。


本当に大切な人だったから。

その人が大切にした研究を無下にすることなんてできるワケがなかった。


だからこそ、自分でも今の姿は醜く映っているだろうことはわかっていた。

でも、止められなかった。


出ていけるならそれで良かったが、ここに逃げ場はない。


詰まる空気の中、リリアさんは

「少しアリエス様の話をしようか。

みんなも聞いて」

と切り出した。


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