46話 2番手

俺の人生は常に2番手だった。

生まれた時からずっと。


俺だって遊び惚けていた訳ではない。

負けず嫌いの俺は悔しさをバネに、人の何倍も努力した。

あいつを超える為に。


だがそんな努力を嘲笑うかの様に、常に奴は――双子の兄は俺の進む道に立ち塞がる。


成績では常に兄が学年トップ。

運動でも追いつけず。

初恋の幼馴染は、兄に告白する始末。


努力しても努力しても追いつく事が出来ない。

兄は常に俺の一歩先を行き続ける。

しかも何の努力もせずに。


見た目、能力。

双子だというのに、何故これ程の差が生まれるのだろうか?


親や周りの人間はそんな俺を哀れみ、兄は天才だから競うのは辞めておけと諭す。

確かに兄は天才なのだろう。

全てに追いつくのは無理だという事は、俺も理解していた。


だが一つくらいなら。

それならば努力し続ければ、いつかは報われる。

そう信じて俺は頑張り続けた。


そんな俺に春がやって来る。

社会人になり、頑張る俺の姿を見て、誰よりも好きだと言ってくれる恋人が出来たのだ。

今までの様な兄に近寄る為の足場としてではなく、俺だけを見てくれる人が。


だが――


「ごめんなさい。やっぱり自分の気持ちに嘘は付けない」


26の時、婚約者かのじょが俺に告げた言葉だ。

顔合わせの席で兄を見て、一目で好きになってしまったと泣きながら謝られた。

もう何年も付き合っていたのに……それなのに、彼女の気持ちは一瞬で兄に持っていかれてしまった。


その事がきっかけで、自分を支えてきた信念に揺らぎが起きる。


俺は未だに、何一つ敵ってはいないのではないか?

努力は本当にいつか報われるのか?

そうでないのならば、俺のやって来た努力は無駄なんじゃないのか?と。


途端、気力が湧いてこなくなり。

何もかもどうでも良くなってしまった俺は――川に身を投げた。


我ながら馬鹿な行動だと思う。

高々1番になれない程度で命を投げ捨てるなんて。

だが結果的に、それが俺に幸福を齎した。


いや、齎すはずだった・・・・・・・――



「今度こそ!今度こそ俺が1番だ!」


転生。

それは選ばれた者だけに許された奇跡。

そう、俺は選ばれたのだ。


神に!

世界に!


与えられたチート能力で異世界を無双し。

綺麗なお姫様と恋に落ち、やがては世界の王になる。

そんな誰もが認める、最高の、ナンバーワンの人生が待っていると俺は信じきっていた。


――奴が現れるまでは。


「初めまして、ブレイブ君。俺はガルガーノだ。これから一緒に頑張ろう」


大賢者ガルガーノとは、魔王討伐パーティーの編成で初めて顔を合わせた。

彼は自己紹介と共に、笑顔で俺に左手を差し出す。


兄そっくりの声と顔で。


希望に満ちていた筈の未来が音を立てて崩れ落ちる。

その音を、俺の耳はハッキリと捉えた。

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