第4話校庭闘技場
全能少年こと千草全治も十歳になり、少年として後半期を迎えた。クラスは変わったが、四年の学級全体が黒之派と全治派に分かれている事に変わりは無かった。しかしその勢いは大きくなり、担任教師の持つ「クラスの絶対支配者」をしのぐ程の勢いになった。
「全治君、黒之派の奴ら今度のサッカークラブの練習のために、運動場を独占しようとしています。」
全治派の伊藤正人が話しかけた。
「本当?そもそも運動場を独占ってできるの?」
「僕も信じられないけど、黒之派は各クラブのキャプテンを自分の仲間にして、この学校で影響力を持ってしまいました。今じゃ先生でも黒之派には手を焼いているというし、本当にあいつらはどうなっているんですか?」
全治はため息をついた。
「全治様、お疲れですか?」
「いや、黒之の事が気になってね。」
「あいつなんか焼け死んでしまえばいいのよ。」
ちいさなドラゴンになったルビーファイヤードラゴン・略してルビーが言った。
「ところでその話、どこで聞いたの?」
全治は伊藤に質問した。
「黒之派の奴らが言っているのを聞きました、というよりあいつらから言いふらしています。」
「そうか・・。」
全治は何も起きなければいいが・・・と思っていたが、翌日に心配は現実になった。
翌日、全治が野球クラブのメンバーと一緒に運動場に行くと、黒之派の三人が声を掛けた。
「よお、全治派の諸君。」
「どうしたの?」
「今日からこの運動場は、黒之様がリーダーであるサッカークラブのものになった。」
「はあ!?運動場はみんなの物だぞ!!」
北野が言った、ちなみに全治は北野に誘われ去年野球クラブに入った。でも黒之と違い、キャプテンでは無い。
「そうだ、だがなクラブの時間だけは違うんだよ。」
「何を!・・お前ら最近調子に乗っているな?」
北野が殴りかかろうとしたが、全治が止めた。
「みんな、落ち着いて。確かに北野くんの言う通り、運動場はこの学校に居るものがみんなで使う場所だよ。」
「ふん、だったら先生に訊いてみろ。それではっきりする。」
「・・・わかった、先生に聞きに行く。」
そう言って全治は職員室に向かった、そして教頭先生にこれまでの経緯を説明した。
「そうか・・、分かった。」
「それで、運動場の問題は解決してくれるの?」
「・・・キャプテン同士で話し合うがいい。」
「教頭先生、それで解決するのですか?」
「教師が間にいないと駄目なのか?」
教頭先生からの問いに、全治は言葉が詰まった。
「教師だって一々問題を解決できるわけではない、もう出ていきなさい。」
仕方なく全治は職員室を出た、北野ら野球クラブのメンバーが全治のところに来た。
「どうだった?」
「キャプテン同士で話し合ってくれと言われた。」
「はあ!?何だよそれ!!」
野球クラブのメンバーは全治以外全員ブーイングした、しかしみんなで押しかけてもかえって問題になると悟り、その日は走り込みと筋トレで終わらせた。
その日の夜、全治は夢の中でゼウスにこの話をした。
「ふむ、流石はクロノスの末裔だな。」
「それでゼウスはどうしたらいいと思う?」
「うーむ、話し合いをしたら黒之の思うつぼだ。おそらく全治を引き寄せる罠だ。」
「かと言って校庭を無くしたり動かしたりしたら、皆が困る・・・。やっぱり黒之と話し合ってくる。」
「危険じゃ、クロノスの全能はわしの全能より上じゃ!!」
「それでも行きます、もしもの時は・・僕の眷属をお願いします。」
「・・・わかった、くれぐれも気を付けろ。」
そして夢は終わった。
そして一週間後、全治はサッカークラブが独占している運動場に一人でやってきた。すると黒之自ら全治のところに歩いてきた。
「黒之、話し合いに来た。」
「そろそろ来ると思っていたよ・・。」
黒之は指を鳴らした、すると校庭にいた他の生徒たちが校庭から出始めた。
「何をしたの?」
「この学校内を二人きりにする。」
そして校門から生徒先生達が、群れを成して出ていった。
「これでいい・・・。さあ始めよう、神々の戦いを・・。」
黒之はそう言うと、前にバスを襲ったゴリラと銀色の鎧を装備した少女の戦士と黒い羽根の天使の群れを召還した。
「こいつらは我が眷属だ、我が思いのままに戦う。」
「眷属なら、僕にも二人いる。出てきて、ホワイト・ルビー。」
全治はホワイトとルビーを出した、ホワイトとルビーはすぐに巨大化した。
「ウガオオ!!」
「黒之ーーっ!!お前を倒す!!」
「へえーーっ、なかなか強そうだね。」
「で、始めるの?」
「ああ、勿論。」
全治と黒之は互いに覇気を高めて、二人きりの戦いが始まった。
戦いは数が多い黒之の優勢になるのかと思われたが、全治の雷とルビーの爆炎で黒之の天使達は一掃されてしまった。
「中々やるね。」
「・・そっちこそ。」
「でも君はボロボロだ、その点僕は汚れ一つ無い。」
「だったら私の炎で、焦げ付かせてくれる!!」
ルビーが爆炎を黒之に吹きかけた、しかし少女の戦士が盾で爆炎を防いだ。
「なっ・・・。」
「黒之に刃向かうものは・・殲滅する。」
少女の戦士はホワイトとルビーめがけて斬りかかった、しかし全治がパンチで攻撃を防いだ。
「・・・っ、強い。」
「よくカナエの攻撃を防いだね、でも!!」
黒之は言うが早く、全治に正拳突き三回・蹴り上げ一回・そしてドロップキックをきめた。
「・・・うっ・・・。」
「全治様!!」
ホワイトがゴリラを突き飛ばして全治を庇おうとしたが、カナエの斬撃に阻まれた。止めを刺そうとする黒之にルビーが立ちはだかる。
「全治は、殺させない!!殺したいなら、私を倒してからにして!!」
ルビーは口に炎を溜め、ブレス攻撃の体制に入った。
「ならこれでいいかい?」
「がはっ・・・・。」
黒之はルビーの喉元に正拳突きをした、ルビーは口に溜めていた炎を失い前のめりに倒れた。
「さあて、君もここまでだね。最後に質問を一つだけ聞いてあげる。」
「・・・・どうして・・クロノスは・・・、僕とゼウスを・・殺そうとするの?」
全治が細い声で言うと黒之は答えた。
「それはかつての戦いで負けたことへの復讐だ、クロノスはもう一度神々の王に返り咲こうとしているんだよ。君を殺すのは、後々邪魔になるかもしれないからさ。」
黒之は右腕を振り上げ全治の胸を殴ろうとした時だった・・。
「ドンガラガッシャーン!!」
「・・・っ!!何だ今の雷は!!」
「あっ・・あれは!!」
その場にいた全員が上を見上げると、煌々しいきらめきを放つゼウスの姿があった。
「・・ゼウス!!ついに現れたか!!」
「黒之・・・、全治の身を預からせてもらう。」
ゼウスは全治の体を抱き上げた。
「全治を返せ、俺が止めを刺すんだ!!」
黒之が言った時ゼウスは雷で黒之達をくらまし、全治とホワイトとルビーを連れていった。
全治はベッドの上で目を覚ました、そこにはゼウスとホワイトとルビーの姿があった。
「ここは・・・。」
「全治よここはそなたの家だ、わしが運んだのだ。」
「ゼウス、ありがとうございました。」
全治の無事にホワイトとルビーは安堵の涙を流した、全治は黒之の事が気がかりながらも、身の無事を噛みしめた。
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