第15話
あれから数日。私と南十星くんで私の家の前に立っていた。今日は、約束した両親に挨拶する日。
「やばい、緊張してきた…。」
そう言って南十星くんは手を震わせていた。その手をそっと握る。
「大丈夫。家の両親優しいもん。付き合ってることだって話してある。だからきっと大丈夫。」
「…ああ、分かった。」
そう言ってるうちに時間は迫ってくる。大丈夫、きっとうまくいく。
「よし、じゃあ行こうか!」
「ああ!」
そう言って私たちは家に入る決心をした。
「ただいま。」
「お邪魔します。」
そう言って入った私たちを出迎えたのはお父さんとお兄ちゃんだった。
「おかえり星来。そちらが紹介したいと言っていた人かね?」
「うん。そうだよ。まあ、立ち話もなんだし、座ってゆっくり話そ?」
「そうだね。遠慮なく上がってくれ。」
「は、はい!」
南十星くん、すごい緊張してるな…。大丈夫かな…?
「わ、すごいごちそうだね!」
リビングに行くとテーブルの上に今まで見たことないくらいの料理が並んでいた。お母さん、頑張ったな…。
「あら、いらっしゃい。待ってたのよ~。さ、こっちに座って。」
「はい、ありがとうございます。」
そんな感じで私たちは席に着いた。お兄ちゃんもどこかから椅子を持って来て開いてるところに座った。このテーブル、5人じゃちょっと狭そう…。
「えっと、じゃあ早速…。この人が今お付き合いしてる天羽南十星くん。私、南十星くんと一緒に生きていきたいです。」
南十星くんがご両親に紹介してくれた時のように、私も自分の気持ちを先に言った。
「はじめまして。天羽南十星と言います。よろしくお願いします。」
南十星くんが頭を下げる。それを見てからお父さんは頷いた。
「うん、良い人そうじゃないか。星来を幸せにしてやってくれ。」
「星来、よく話してくれるのよ、南十星くんのこと。だから、私たちは大歓迎よ。」
意外とあっさりで私たちは顔を見合わせた。
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」
「ほんとにいいの?」
お礼を言った時にお兄ちゃんがそう言った。
「え?」
「だってその人、2週間くらい星来を泣かせたじゃない。そんな相手を簡単に信用していいの?」
「お兄ちゃん…。」
そこで重い沈黙が訪れる。
「お兄ちゃんが言ったことはもっともかもしれない。」
そんな沈黙を、私は破った。
「でも、それでも私は、あの泣いてた時に思ったの。もう離れたくないって。」
これは、私の本心だった。
「何回泣かされてもいい。それ以上に私は南十星くんの隣で笑っていたいの。だから…。」
そう言った時、膝の上に置いていた手を、南十星くんがそっと握ってくれた。南十星くんを見るとこっちを見て頷いてくれた。
「お兄さん、俺、何回も星来を泣かせました。それは事実です。」
そう言って少し俯く。それから、顔を上げた時の表情は、思いが固まってるような顔だった。
「でも、だからこそ目を覚ましたあの日、決めたんです。泣かせた以上に、星来を幸せにするって。星来と生きていくって。」
そっか、だからあの時、両親に挨拶したいって言ったんだ。
「だから、俺たちのこと、認めてください。」
「お願いします。」
私たちは頭を下げた。するとお兄ちゃんは満足そうな声を出した。
「顔、上げなよ。…良かった、二人とも本気なんだね。」
「どういう意味?」
私が聞くとお兄ちゃんは笑顔で話してくれた。
「俺がああ言った時に、諦めるとか、言い訳するようだったら本気で反対した。まあ要は鎌をかけたのさ。でも、二人ともそんなことしなかった。だから本気なんだって分かったんだ。だから、いいよ、認めてあげる。」
なんかいろいろ言いたいことはあるけど、認めてくれるならいいかな。
「ありがとう、お兄ちゃん。」
「ありがとうございます。」
そんな私たちを見て、お母さんたちも安心したのか笑顔になった。
「さ、それじゃ、ご飯食べましょ!南十星くんも、遠慮しないでね。」
「はい、いただきます。」
それからは、出会ったきっかけだとか、どんなお付き合いをしてるのかとか、そんな話が待っていた。
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