第14話

 あの後、お義母さんたちは先生のお話を聞きに行って、凛久くんは「邪魔しちゃ悪いから」と言って、出て行ってしまった。私は、少し落ち着いて南十星くんのベッドの横にある椅子に座って話している。

「その、俺どれくらい寝てたんだ?」

「えっと、2週間くらいかな。」

「そんなに…。」

「そうだよ、すごく心配したんだから!」

「わ、悪かったって…。」

「まあ、帰って来たからいいけどね。」

 冗談めかしてそう言うと、南十星くんも少し笑ってくれた。

「あ~あ、もっと早く起きるつもりだったんだけどな~。」

「いい夢でも見てたの?」

「まあな、もう覚えてないけど、いい夢だったことに変わりないかもな。」

「そっか…。」

 嫌な夢じゃないなら良かった。

「なあ、星来。」

「ん?な…。」

 なに?と聞こうとしたら。キスで口を塞がれた。ファーストキスだった。顔が真っ赤になるのが自分でもわかる。でも、嫌じゃない。むしろ嬉しかった。

「南十星くん…。」

 キスが終わり、名前を口にすると、南十星くんは少し照れたようにはにかんだ。

「どうだ?忘れられないものになったろ?」

「…うん…。」

 私が頷くと南十星くんは満足したように笑って、真剣な顔になった。

「なあ、手術の少し前、星来と俺の両親が一緒に来たときあっただろ?」

「うん、あの時ね。」

 私がお義母さんたちと初めて会った時だ。

「あの時言ってたこと、星来の両親にも挨拶に行くって話…。」

 そう言えばそんな話もしたな。

「退院したら、すぐにでも行きたい。」

「え…。」

「その、俺、やっぱり星来と生きたい。これからも、ずっと。そのために、まずご両親に挨拶しないと何も始まんないから、だから、その…。」

 そんな風に思っててくれたんだ。嬉しい。

「私も、南十星くんと生きたい。」

 そうだ、私も伝えたいことがあるんだ。

「南十星くんが寝てる間。ずっとずっと南十星くんのこと考えてた。もう、離れるなんて考えたくない。」

 そう言って前のめりになると南十星くんは頷いて髪を撫でてくれた。

「私、それくらい南十星くんが好き。大好きなの。だから、両親に紹介させて下さい。」

「こちらこそよろしくお願いします。」

 私が頭を下げると、南十星くんも一緒に頭を下げる。そして、二人でまた笑ってしまった。もう、こんな日々を邪魔するものはない、そう思った。

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