第12話

 あの日から、しばらく経って、夏休みは終わってしまった。南十星くんはまだ目を覚まさない。それでも私は南十星くんを信じて学校に来ることにした。一日中病院にいてもやることないしね。

「星来、おはよう!!」

 その声と同時に背中を思いっきり叩かれた。

「痛っ!あ、愛良ちゃん…おはよう…。どうしたの?急に叩いたりして…。」

「いや~、凛久から星来、元気ないって聞いたから元気づけようと思って~。」 

「そうだったんだ…。ありがとう。」

 私がそう言うと、愛良ちゃんは少し心配そうに私を見た。

「やっぱ元気なさそうだね…。大丈夫?」

「うん…。信じて待つって決めたから。」

「そっか…。強いね星来は…。」

 私が精一杯笑うと、愛良ちゃんはそう呟いた。

「そんなことないよ~。」

 そう言っている間にも、南十星くんが起きるかもしれないと、スマホは手放さなかった。何かあった時は連絡が来るようにお願いしてある。学校内ではマナーモードに設定するけど、休み時間は自由に使えるようになってる。(もちろん授業中は預けないといけない。)

「二人とも、おはよう。」

 そう後ろから声をかけられて、振り向くと凛久くんが走ってこっちに来てた。

「おはよう、凛久くん。」

「おはよ。走って来たの?」

「うん、ちょっとした運動にね。でも朝から疲れるだけで、何もいいことないかも…。」

 そうさわやかに言われると、なんだか説得力ないような…。

「星来ちゃん、少しは元気になった?」

「うん、愛良ちゃんに思いっきり背中叩かれたから元気出たよ。」

「愛良ちゃん…。確かに元気づけてとは言ったけど、何も叩かなくても…。」

「そこは、ほら、カツを入れるじゃないけどさ、そういう意味合いでとらえてよ。」

「えー…。まあ、星来ちゃんが元気になったならいいか…。」

 そう言いながら凛久くんは笑った。

 そんな時、手の中でスマホが鳴った。電話主は…お義母さんだった。

「ごめん、ちょっといい?」

「おばさん?」

 私が頷くと、その場に緊張が走る。

「はい、星来です。」

『あ、星来ちゃん、今ね…。』

 お義母さんの優しいけど、少し早口なしゃべり方で、何となく事情は分かった気がした。

 そして私と凛久くんは、学校に仮病で連絡して、授業のノートを愛良ちゃんに任せて、急いで病院に向かった。

 

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