第11話

 次の日。

「あ、星来ちゃん、こっちこっち!」

「凛久くん…。」

 病院に行くのに駅で凛久くんと待ち合わせしていた。

「ごめん、待った?」

「いや、今来たところ。」

 前はよく南十星くんと待ち合わせして遊びに行った。でも、今は出来ない。南十星くん、早く遊びに行きたいよ。

「あ、星来ちゃん、今南十星のこと考えたでしょ?」

「え?あ、うん…。」

「悲しいこと?」

「う~んと、早く遊びに行きたいなって…。」

「そっか…。叶うといいね。」

「うん。」

「じゃあ、行こうか!」

 そう言って私たちは病院に向かった。


 南十星くんは今集中治療室にいるから前のガラスまでしか行けない。そのガラスの前に今日はお義母さんだけ立っていた。

「おばさんこんにちは。」

「こんにちは。」

「あら、二人ともこんにちは。お見舞い、来てくれたの?」

「はい。」

 そんな感じで世間話をする。そうしてるうちに先生が来た。

「ああ、天羽さん、本当に申し訳ない。」

 そう言って先生はお義母さんに頭を下げる。昨日から何回も頭を下げられる。頭を下げるより早く南十星くんを治してほしい。

「先生、それで脳のほうは…。」

「あ、はい。脳のほうは問題ないです。脳波も正常でした。なのであとは目を覚ますまで待つしか…。」

「そうですか…。」

 待つしかないって…。そんなのないよ…。

「南十星くん…。」

 私がそう呟くと、先生は私のほうを見て言った。

「あなたが、星来さん?」

「はい…。」

「そうか…。大丈夫、南十星くんはきっと目を覚ます。」

「なんで、分かるんですか…?」

 あまりにも先生が自信満々で言うから驚いて聞いてしまった。

「南十星くんはね、入院中にこう言ったんだ。『星来が勇気をくれたから、あいつを置いて死ぬわけにいかない』って。」

「え…。」

「星来さん、南十星くんにこう言ったそうじゃないですか。『諦めちゃダメ、お医者さんと南十星くんを信じろ』って。それと、あなたの存在が、彼の勇気になったんですよ。」

 そう言われた瞬間、とめどなく涙が出てきた。ボロボロ泣きながら、南十星くんを見る。私が南十星くんの勇気になったなら、良かった。

「ありがとう、ございます…。」

 泣いてる私の背中を、凛久くんが優しくさすってくれる。

 私も信じなきゃ、南十星くんと、先生を。そして、帰ってきたら笑顔で迎えなきゃ。

 そして、もう一度言うんだ、好きって。大好きって。そしたら、きっと、南十星くんも笑ってくれるから。

 

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