第8話

 高校一年生の夏、私は登校日に最大のピンチを迎えていた。何と、痴漢に襲われていたのだ!

 どうしよう、気持ち悪い…。でも、あと一駅だし我慢しよう。そう思ってた時だった。

「何やってんだ、おっさん。」

 そんな声が聞こえて、手が離れた。満員電車で身動きが取れない中、後ろを振り向くと、同じ高校の制服を着た、男の子がおじさんの手をつかんでいた。

「あ、大丈夫ですか?」

「は、はい。」

 そう言うと、男の子は笑って頷いた。これが、私たちの出会いだった。

 それから、私たちは話すように、仲良しになっていった。多分、この頃から私は南十星くんが好きだったんだと思う。そして、三年生の春、その時は条件付きで付き合うことになったんだ…。


 そんな話を、長々とお義母さんたちに話している時だった。慌てたように看護師さんが来た。

「手術は、終わりました…。ただ…。」

 看護師さんは少しの沈黙の末こう言った。

「南十星さん、目を覚まさないかもしれないって、先生が…。」

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