第3話

 放課後。南十星くんはすっかり元気になって私たちの教室に来た。

「あ、南十星。貧血って聞いたけど大丈夫か?」

「凛久。ああ、もう大丈夫だ。」

 南十星くんがそう言っても、凛久くんは少し心配そうに見ていたけど、ふっと表情を緩めた。

「南十星、少し鍛えたほうがいいんじゃない?」

「いやなんでだよ。」

 愛良ちゃんの言葉に笑いながら南十星くんは言った。

「いや、鍛えれば貧血も治るかなって…。」

「なんだそれ。」

 なんだか南十星くん元気になったみたい。良かった。

「どうした、星来?」

「ん?なにが?」

「いや、ニコニコしてるから。」

 そんな顔してたかな?

「何でもないよ。」

「そっか。」

「うん。」

 今は内緒にしとこ。

「さて、帰るぞ。」

「あ、うん。じゃあ明日ね、愛良ちゃん、凛久くん。」

「うん。」

「また明日。」

 そう言って私たちは教室を後にした。


 少し歩いたところに、公園があって私たちはいつもそこでおしゃべりをしてから帰る。学校からそんなに離れてないのに一本細い道に入るから同級生とかに見られないからゆっくりできる。

「で、今日の授業でな…。」

 大体その日の出来事とかを話すんだけど話をすればするほど楽しくてつい話し込んじゃう。

「っと、もうこんな時間か。」

「あ、ほんとだ…。」

 気付けばもう日が傾いてしまっていた。南十星くんと話してると時間が足りないよ…。

「ほら、送ってくから帰るぞ。」

「…うん。」

 いつも寂しくて俯いてしまう。そんな私を見て南十星くんはため息を吐く。そして頭を撫でてくれる。

「そんな顔するなよ。俺だって帰りたくないんだから。」

 そう苦笑いで言ってくれる。

「うう、もっとお話ししたいよ~。」

「また明日も会えるんだから。な?」

「うん…分かった。帰る。」

「よし、いい子だ。」

 そう言って笑ってくれる。こんな毎日が大好きで、でも秋にはお別れしなくちゃいけなくて…。

 今この瞬間を大切にしようと思った。

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