第6話敵の一斉蜂起
そして二日後、俺達は検証の見学をした。そして見られる分だけ一通り見た後自宅に帰り皆と話し合う事にする。
「先輩、お帰りなさい。見て来てどうだったでしょうか?」
「ただいま。まあ、それなりだと思うよ『でも、内容が内容だし、テレパスで話そう』」
『解ったわ。それなりに重要と言う事ね』
『検証はまだ始めたばかりなのだから当然だとは思うけど、まだ何も変化は無い。でも、貝とかの素材を生成出来る奴を成長させて造るアイディアは自分で思い付きたかったな』
『なら今何か考えてみましょうよ。そう言うのを減らせるわよ』
『そうだな。漫画の技なんてやりたがる奴も多いだろうし、なんか考えてみるか』
そして明日支部長に提案することにして話を詰めて行くのだった。
次の日。拠点に移動し、支部長を探す。どうやら転送能力の性能テストを行って居る様だ。まあ、深海に転送的な特殊条件の物がまた来ないとは限らないのだから、それをやるのに否は無いのだが、終わるまで待つなら時間が空いてしまったな。さて、他の人の所にでも行こう。……はい?上からの呼び出し?ラティメリアの事に付いて?……来たか。第三国を間に入れた以上は隠せないし、目的としてもそれが有るのは悪くない。だが嫌な予感がするな。明らかにラティメリアを倒した、または撃退した事が要因なのだろうが。そして転移で本部に移動する。
「さて、水霧君にわざわざ来て貰ったのは他でも無い、仮称ラティメリアについてだ」
「映像は提出しましたよね?その上で何が聞きたいのですか?」
「では聞こう。倒せたと思うかね?」
「恐らくは、ですが、消えるタイミングが狙いすまされ過ぎているのが気に成ります」
「君としては倒したとすべきではないかね?そうしないのは不手際を自分から進んで主張、開示する事に成る上、面倒な事に成る可能性も高かろう?」
「だとしても、英雄だのなんだのと祭り上げられた挙句の果てに、実は倒せて無いなんて露呈した時の方が不味いです。人で無い以上は大人しくしとこうとはしないと思いますし」
「ふむ。君には支部に借金が有るのだと聞いている。それで支部に所属しているのだとも。ラティメリアの撃退報酬として君ら支部には一千万程の取り分が有るのだが、それとは別に此方が報酬としてその借金を相殺してあげる代わりに所属をやめないで貰えるとありがたいのだが、どうだろう?」
「……要はまた機会が有ればああ言うのと戦えと言う事ですか?」
「早い話がそうなる。十全にサポートはさせて貰うがね」
「……はぁ、解りました。ですが、それなりに待遇は良くして貰いますよ?」
「倒す上でのサポートなら保証しよう。それ以外の物についての保証は恒久的には無理だ」
「まあ、それはしょうがないですよね」
個人で召喚システムの根幹を手に入れる事が難しい以上、辞める気なんて無かったが。
「だが、既存の作品の物を使う事はやめたまえ。それらが弱いのでは無く、創作で知名度がある能力なんて、それに対して実効性が有るかは別としても、メタを既に張られて居て当然だと思うべきである。まさか有名な作品群に出る強い能力群や便利な能力群を、全て一切誰も使いたがらないし、攻略されようとしない、なんて事は流石に無理があるのでな」
「……そうなります?」
「普通そうなるであろう。能力を持つ事に特許なんてないのだから。後、そうだな。一つ気になるのは、高速自己回復とかが有るとあの倒し方では通用しないのでは無いだろうか」
「……あの戦闘でラティメリアが使って居たのは、あくまでも水と重力の力だけです。ですから、いわゆる能力の二点特化のステータス振りで有るはずです。バランス型であの水準の能力を使われて居たなら、特化の奴は更にやばくなるので、この意見には特化の奴であってくれと言う願望が入りますけど」
「今すぐに戦わないとしても、今後はどうだろうか」
「……それまでに相応にレベルを上げれば良いだけです。自然産で無いなら其処も対策をした上で再投入されるでしょうから、他の方法でも倒せないとですからね」
其処に他の人が来る。
「お話し中失礼いたします。今すぐに報告すべき事が有りますので」
「構わぬ。申してみよ」
「敵が気象衛星等の人口衛星に対して対策を敷いた様です。その国々側に連絡を取りました所、それは国側がやった事では無い様で、大型の怪獣が多数目撃されたとの情報が」
「現状の召喚システムで巨大怪獣が大量に?……何か裏があるであろうな。召喚システムに見落としが有るのかもしれん。検証班に催促を入れて置こう」
「ではその様に、他にも通達しておきます」
「頼むの。さて、直ぐに汝らの出番検案が来たようじゃ。今用事が有るのは別の者じゃが」
「ああ、そう言うのが居ましたね。此方も連絡を取ります」
前に捕まえた到達させない系の能力持ちの能力の詳細な情報が欲しいと言う事だろう。
「では支部長に連絡してくれんかの。その方が話は早かろう」
そして連絡をする事にした。
『ああ、話は聞いているよ。怪獣が大量に出たらしいな。で、此方に情報を開示しろと言う訳だ。報酬それなりにぼれよ?情報の手間賃くらいは欲しいからね』
「それはそうですが、今回の怪獣が大量に出た理由とは何なのでしょうかね?」
『例えば召喚システムで召喚した奴を育成していたのを此方が倒したのが原因とかなら、俺らが原因の一部では有るが、そうしなかったとしても、それが今すぐでは無くなるだけだ。むしろ十全な育成をする前に表に出させたなら対処もまだやりようも有るはずで、責められる謂れは無い』
「つまり、一般生物が進化した結果な振りをして密かに育成の為の放牧をしていたのを、此方が倒してしまったが故だと?」
『現状此方が原因ならの話だが、手札を各個撃破されるよりかはまだましと言う考えだろう。放牧育成がやりにくく成った為に全部出したのではないかなと』
「あはは、……洒落に成って無いですって」
「君ら支部が倒した奴と今回の者共が関連性のある場合は君らに対しての報復も有り得るじゃろうし、君らが倒した奴と同型の奴が出る可能性も十分にあるでな。その時は嫌でも矢面に立たされるであろうよ。何せそいつを倒した実績が有るのじゃからの」
「……多分それは旧型の奴を倒せたなら、それをベースにした新型のも倒せるよね?と言う無茶ぶりに成ると思うのですが?」
「類似の者を倒した実績が有るのなら、その実績が無い奴よりかは任せやすかろう?」
「……それはそうですが……まあそいつが出たら良いですけど」
「なら検証班の方にでも様子を見に行こうかの。今までの検証以外の検証を試すので有れば、流石に通常の範疇の法則性は見付かるはずじゃ」
「そうですね。召喚文に特定の文を加えた上でなければやれないとか有るとしてもそれを知れないですしね」
「ほう。お主も付いてこい。現状の失敗例を見せるので他に何か案が有れば欲しいのじゃ」
「え、今のそんなにヤバイ話でしたか?」
「特定の文章でアイディアが出ての。つまりは、該当者のみを示す独自の通り名や、口上、特定の神話等の元ネタの居る生物を召喚したければ、書ける内容にはある程度の縛りが有るのはないじゃろうか?試す価値が有る様に思えての」
「何なのですかね。キャラ崩壊禁止令でも有るのですかね」
そう言えば、召喚者の感情が見られているのだったな。なら文章内容の評価にも何かが有りそうでは有るか。
「分からぬ。今は試すのが先じゃ」
「解りました。急ぎましょう」
そして検証を行って居る所に移動し、試す。
「よし。簡単な物は出来たが、これでは倒された逸話が有る者や弱点が有名な者の召喚は控えた方が良いの。それの補強をシステム上スペックに含ませるのが出来ないでは無いか」
「それは厳しいですね……あ、そう言えば、悪魔の召喚は試しましたか?」
「追加で対価を要求する奴を召喚するのはコスパ悪いのう。それが簡単に可能な対価のみを要求して来るとは限らないのじゃからの」
「ああ、そうなりますよね……でも、何故大規模破壊兵器を使わないのでしょうか?レベルが足りないならそれに対する対策も完全では無いはずですし」
「理由は単純じゃよ。例えば相手に転移系の能力持ちが居る場合、そうしたら、敵に逃げられるどころか、此方が大量に自傷ダメージを受けるだけで終わるからの。兵器無効化ならそんな心配は必要無いはずなのじゃが」
「転移系の能力持ちが相手に居ると言う事ですか?」
「一勢に出て来ておるし、流石に怪獣を創るのをこのタイミングで一勢に試した結果……とは思えないのう。なら、今までは隠れていたはずで、それを可能にする能力なり何なりとの物が最低限有るはずじゃ。故に転移系の能力持ちが居る可能性も十分有るのう」
「つまり、現状では各個撃破は期待出来ないと言う事ですか?」
「大技で一気に仕留めない限りはそうじゃが、大規模殲滅的な大技を撃つのは転移系の能力持ちを潰した後で無いと厳しい状況じゃ」
「ゲームで例えるなら、相手側のヒーラーを潰した後で無いと、総撃破は現実的では無い的な状況ですね。……厄介な……」
「報告です。山間部、主に鉱石類を算出する鉱山が主ですが、それらの多くが崩れ、辺りへ土石流が大量に起きています。後ダムもかなりの数が壊されていますね。鉱山が多く崩れて居るので、犯人側の目的は鉱石資源回収がメインの物だと思われます。そうで無いと鉱山に拘らずとも良いはずですので」
「大地系の能力持ちか宝石類を産出する所はどうなっているかの?」
「そちらにはまだ影響は出ていない様です。そちらに部隊を派遣いたしますか?」
「そこらに大事起こしてでも欲しい様な希少鉱石の産出は無いであろうな?金目的なら宝石が算出される山を狙うべきじゃし、山が崩壊するレベルの人為的な土石流を起こせる奴が相手じゃから、土石流を凌げる奴かそもそも当たらない様に出来る、例えば空を飛べる奴が欲しい。だが山は無尽蔵に有る訳無いのう?暫く凌げばチャンスが来るはずだの」
「お金を払い手に入れるのが現実的で無い様な鉱石は該当の場所には確認されて居りません。それと山間部でばかり起きる上に流れた土砂で、簡易な山を再び作って居る様でして」
「……土砂が無い所に犯人側を移動させるのじゃ。コンクリートで全部補強工事されている場所でも無ければ土砂を全部回収したら溶岩流が代わりに操られかねなかろうしの」
「中核の者が小さい保証は有りませんが」
「それは一先ずは探してからの話じゃ。……まあ、恐らくはお金目的じゃ無いのう……」
「解りました。探査系の者をせかして来ます」
「何故表に出てきたのでしょうか?育成はまだまだこれからなはずですし、放牧育成が駄目だとしても、輸血パックを買うなり何なりとやりようも有るはずですし」
「成長速度が血液だけでは遅い、又は全体的には食わず、一部分のみしか食わない為の疑似的な栄養失調症に成る為の成長限界かの?」
「……成長速度がガタ落ちする羽目に成るから、大幅な強化が見込めない事に成るので動いた。の方で無いと困りますね」
「此方は最悪死刑執行後の死体を食わせる事を手配出来なくも無いがの。そう言うコネクション無しに死体を大量に確保すると成ると……外国は死体をそのまま土葬じゃ⁉墓荒らしすればある程度はやれるじゃろうし、迂闊。真の目的はそちらじゃ。ぬかったのう」
「つまり、土石流だけで勝ち切る必要は無く、死体の回収の為の偽装で、それで現状の問題で有るレベル不足を補えれば良いと言う事ですか」
「これはこの段階で出て来る様な者では無い者が出そうじゃのう……多発性の土石流を決め手では無く、手段として使う様な輩なのじゃから」
「では、どうします?」
「現地で直ぐに食らう訳ではなかろう。一体だけを育成したい訳ではなかろうしの。故に運搬されている途中の死体を奪い返すのじゃ」
「解りました。探査が済み次第向かいます」
さて、一先ずの行動指針は決まったな。準備しようか。これは死体を食らうのをするのを隠蔽している上での話なのだから、死体だけ転移させているとかを確認されたら露骨に何か有りますよと言っているのと同じだろう。準備を進めて行く。其処に館内放送が入る。
『手は止めなくて結構ですので、報告です。一定のサーチを行った結果、一定のエリア範囲を超えると土等の転移が行われています。単に能力の効果範囲限界な可能性も有りますが、それを隠れ蓑に死体を転送していると思われます。つまり、死体を其処に運ばれる前に奪えれば問題は無いはずです。転送エリアは……』
そして転送が行われているエリアが羅列されていくので、それを軽くメモしていく。要は其処に死体を運ばれるのを防ぐのが今回の勝利条件なのだし、防衛ラインの把握は必須と言えるだろうしね。しかし、適正と言うか、憑依する上での下準備の話だな。だが憑依する奴側に負担全振りとか、それをするならわざわざ憑依させ無くても単体で運用すれば済む話だろうし、これは強制使役のパターンでもないとやる必要性自体が無いな。それをやると憑依される側は只の霊体の容器以上の意味が無いだろうしね。……あ、要は全身鎧扱いする為に憑依させるのは十分有りか。だが、それくらい自前で出来そうな気もするが。
「さて、他の人と合流して、行くとしようか」
「そうですね。流石に最低限としても戦闘要員以外にも死体の運搬役も欲しいですから」
そして放送で班分けがされ、集合場所に移動する。
「すみません。遅くなりました。では行きましょうか」
「その前に一つ、大規模殲滅技は基本的に使用禁止。今回の場合都市防衛戦でも有るから、敵より味方の方が防衛拠点を壊す様な事態は避けろ。そう成ると防衛出来ましたなんて言えた物では無い。敵より敵の目的を遂行する味方とか洒落に成らないからな」
そして該当エリアへと移動し、探査を始め、通信を行う。……暫くして、通信先が慌ただしい?何故か一緒に来ていた女性達が辺りに攻撃をまき散らし始めるが、白菊がそれを鎮圧した。白菊には問題は無い様だが……。
「先輩、不味いです。性別特攻の催眠術ですよ。これは」
「おい、不味いって、白菊の方には能力的に問題は無いのか。それを解きに回るぞ」
「解りました。場所を通信して確認次第解いて回りましょう」
通信を行い催眠術師による攻撃だと伝え、解きに回る事にする。別に彼女らが弱かった訳では無い。広域強制催眠とか勘弁してくれ。でも、何故女性だけ?性別を限定的にする事で威力を高めるなら、二回目で男性に向けて来るはず……暫くしてもそれらしい事には成らないでいる。普通なら両方カバーする様に作るはず。これをやっているのは元ネタが存在する奴な為に、男性側には無理なのか?女性限定強制催眠とかアレ過ぎる意図が透けて見えるが、元ネタが居るのか?明らかにヤベー奴なのだが?調べてみるか。……プート・サタナキア、か。あらゆる女性を意のままに従わせる能力持ちの悪魔。最悪だ。畜生め。流石に耐性持ちや催眠系能力を持つ奴には効いて居ない様だ。後、両性を内包する存在もある程度は抵抗出来ているらしい。そりゃあ催眠の対象外の部分を同時に内包している訳なのだから、当然だと言えば当然だが、それらを対処するのに時間を掛け過ぎてしまった。つまり、ある程度は死体を確保されてしまった訳だ。妨害に使わされ、人質にされ、解放して行くと途中で残りが自死しようとやらされ。気絶させた上で催眠の追加指令を通さない為に結界に隔離された。はぁ。ある程度は防げたにしても逆に言えばある程度は目的を達成されてしまった。相手はどうそれを配下に配分してくるかね?悪魔召喚は対価を二重に払う必要が有るアレな奴だと言う話じゃなかったのかよ。……対価が常識の範疇の可能性に掛けて召喚した?それとも召喚したのは良いが契約の不成立で暴走したとか?能力的に女の人が召喚する訳無いよな。そうしないとその能力の対象に召喚者自身が成りかねないし。それは自滅にしか成らない。だが、もし、偶然女性が召喚していたのなら?召喚者は傀儡化しているよな。偶然の召喚でそいつに対する専用の防護魔法陣なんて組んでいるはずないからな。敵対的な奴が召喚される可能性は殆ど最初から俺には開示されていた。でもそれは全員が知る事では無いし、内容が内容だけに、召喚の内容の当たり外れが大き過ぎる様に感じる。それこそかなり対策をした上でやるので無いと不味いレベルで。洒落に成らないだろ、そんなのは。召喚者では無く、召喚された側、今回の場合は悪魔側が元凶なパターンも有り得る訳だ。今回の物が偶然の召喚パターンだと、特大の外れが提示されてしまった訳だし、個人でやるのは初動段階でそう言うのを引くと完全に詰みだしね。
「あ、対価を要求するにもそこ迄の物を要求してこない可能性があるような気がしますが」
「普通の本物の悪魔だったならそうなるかも知れ無いが、此方がその存在を創ったパターンも有り得るし、その場合悪魔側が厳守なルールが無い可能性は十分有る。此処に居る召喚された奴らには先に謝るが、事前の取り決めを赤ん坊が必ず把握しているのを前提として行動するのは、確認も取れてないのに赤ん坊が全員転生者であるのを前提として話を進める様な物だ。流石にそれはギャンブルが過ぎるだろう」
「そう言う状況もあるかも知れ無いだろ?」
「……そもそもそれはブラックボックスのシステムの根幹次第な話です」
更に話そうとした時に辺りに竜巻が大量に発生し始めた。風系の奴に割り振って来たのか。そう思った所で重力干渉を行い地面に皆を押し付けさせる。それが予定より更に加速した。耐久性が一定を越えていない者は衝撃で意識が朦朧としている。呼吸するたびに血反吐を吐きながら内蔵が破壊されて行くなどと他の人が言う。俺は魔法生物故に呼吸は必要ないけれど、他はそうは行かない。つまり、呼吸と言う行為その物にダメージが発生する様にされたのか?洒落に成らないだろうそれは。回復技を受けながら対策を練る事にする。一先ずは結界を張る……竜巻は防げるが、呼吸には意味なし。空間側に何か仕掛けが有るパターンか?一人が悪態をつきながら結界の壁を殴る。するとそれは明らかに過剰な風圧を伴い、結界を一部破壊したので、結界を直す。
「おいおい。流石にそれはやり過ぎだろう?」
「違う。そんなつもりは無かったし、普通に殴るだけでこうなった」
「結界が弱かっただけと言う話だったりしないよな?」
「試してみて欲しいのですが、皆さんも手を扇いで風を作って見てください」
皆がそれを試す。すると負傷者が出た。
「恐らくはこれは空間上のいわゆる手風に威力を発生させる能力ですね。それで呼吸で起こる風に威力が伴ってダメージを受けているのだと思います」
「呼吸が起因の継続ダメージとかエグイのだが?」
「恐らく、元は自分の攻撃を風系の力で補強しようとした結果の失敗例ではないですかね」
「要は呼吸が必要無い奴にはメリットの方が大きい能力ではないかな?」
「手風の起きるレベルの行動がある程度気を付けてやらないと自傷ダメージを食らう原因にもなりますよね。例えば高速移動した後のスリップストリームとかも自傷ダメージを受ける原因として成立すると思いますし」
「行動制限としては面白い効果だろうが、それを受ける身としてはウザイとしか言えない」
「回復を逐次すれば良いだけですけどね」
「要は攻撃を回避するのに高速移動を使うとダメージを受ける形か……高速機動を出来る相手には有りかもしれんな」
「高速移動を隙間無くし続ければダメージをだいぶ軽減出来るかも?」
「そうだとしても十分行動を制限出来ているだろうな」
「それでどうします?」
「空間上にルールを追加された結果的な物だろうから、空間にそのルールを追加している根源を潰せば良いはずだが、問題は個々に別々に付与しているのではなく、一括で全部補強している事。個々にわざわざ付与していたらそれを逆探知すれば良いけど、細かく逐次設定にして無いから、犯人側が根源的な場所にもう居る意味無いからな。でもこれなら空間調整の奴が居れば対処可能じゃないかな」
「無理ですね。問題はそれをやれるのが女性な事ですよ」
「確かに明らかに催眠の集中砲火を彼女は食らう事に成るな。なら別案出すしかないか」
『ちょっと良いかな。先に出ていた存在を空間上に存在しないと換算されるようにする能力をやるアイディア思い付いたよ』
『だが、催眠の集中砲火食らうのはヤバイのでは無いか?いや、理屈に依るが』
『空間の調整で空間の状態を私の居ない状態と同じにする。それまでは良いよね?』
『それは良いが、それでは反撃出来ないだろう?』
『ポイントは消える為の能力では無く、消えていると扱う能力と言う事だよ。つまり、私の空間上への干渉能力はそれをやっても損なわれない……はず』
『それは良いように見えるが、要は本人と繋がる力が空間上に残っているままだろう?其処を突かれては不味いはず』
『今は結界が不自然無く張れるのだから、結界でそれを偽装して欲しいかな。出来るよね?』
『……解った。不可能では無い範疇では有るが、他の案が出なかったら頼む』
『そう言わずに私に任せなよ』
『それでも他の案が出なかったら、だ』
「一先ずはルールを追加した起点の場所に行きませんか。現物を見てからの方が対策を立てやすいはずですし」
「なら探査系に確認してもらおう。その方が早い。と言う事で頼む」
「今回は人使いが荒いね。まあ、しょうがないか。僕の出番ですねぇ。ええと、怪しい場所はここからは二キロ弱程離れた場所に有りますね。……対策をされたみたいで大体の位置ですが、エネルギーが大量に立ち込めていて、それが探査系を妨害しているようですね。だからそこらに大技を放つ事をおススメしますよ」
「……エネルギーを大量に散布して、探査系の能力の処理落ち狙いか。相手側の探査されたくない物が確かに有りそうだな。問題はどの程度の威力の物をぶち込むかだが、大規模殲滅的な能力は損害を増やすのも付いてくるからな」
「何か罠の気配がしますね。隠すつもりが無いようにも見えます。その手段を成立させたいなら、相当広い範囲でやらないと、むしろ此処に何か有ると言う事と同じですから」
「罠を潰すつもりで真正面からぶつかりに行くか?」
「やるにしても、罠の内容を把握してからにしたいですね」
「しかし、何を差し向ける?」
「それですよね。エネルギーの大量散布がそれだけで完結している確実な保証が無い訳ですよ。仮に大技の事前準備とかならかなりヤバイ事に成りますし」
「もう話してないでさっさと動いた方が無難だな。どうする?壊すか、消すか、砕くか」
「空間上にあれだけのエネルギーを配置しても準備が終わらないなら……必要なエネルギーが多過ぎて蓄積系の能力としては汎用性なさすぎる訳だが」
「なら、エネルギー系の攻撃をぶち込んで消滅させるぞ。辺りにエネルギーは大量に有る」
静止を振り切り彼は砲弾を放つ。
「行くぜ。螺旋火焔竜巻砲」
弾丸には螺旋状の凹みが刻まれており、それで空気抵抗により回転する砲弾を放つだけ……だったのだが、空間上にルールが追加されている結果、回転砲弾が横向きに竜巻を発生させた。いやまあ、手で軽く扇ぐだけで怪我人出るレベルの風圧が起きていたけれどね。
「ふむ。ちゃんと成功したか。効果範囲圏内の距離は二百数十メートルくらい。これは砲弾と撃ち出す火力を変えれば変わるあくまで暫定値だが、アサルトライフルくらいの射程距離は欲しかったな……」
「……長さが二百数十メートルそこらの竜巻を手軽に出せればもう十分では?」
「空気抵抗を利用する関係上射速も抑え気味だから、一定以上のスピードの奴にはまるで当たらないだろうし、火力方面に突き抜けてくれんと使えんのさ」
「そう言う事ですか……」
「さて、取り敢えず一キロ其処らの場所に移動するぞ。大量に撃ち込みに行く為にさ」
「一先ず行ってみますか」
そして転移で場所を移動し攻撃を打ち込む事にする。さて、何が起きるか。空間上に弾丸が幾つも召喚され、エネルギーが満ちているのであろう場所に撃ち込まれていく。……システムを逆用されて攻撃されるのは皮肉だな、と思って居たら竜巻が途中で途絶えた。ちっ。流石にそれは通らないか、まあ、相手への攻撃の根幹が相手側の能力の一部とか、種が割れれば自分の能力を対処する範疇で対処されるよね。でも、だ。それはエネルギー障壁の穴を作ってくれた事に等しいし、その攻撃の辺りのそれは発動しないようにしないと、砲弾の竜巻も通るからだ。つまり、その砲弾と一緒に攻撃を叩き込めば、攻撃が通る……と思ったが、すると砲弾側も竜巻が普通に発動して勢いが相殺されてしまった。
「さて、どうしたものか」
「地面が動き始めました。次の手が来ます」
「土系の何を仕掛けて来るかね?」
「流石に回数やりましたし、大抵の岩も砕け散った後だと思うのですけどね?」
「アレは砲台……か?!結界を多重に張れ、来るぞ!!」
結界が張られて直ぐに辺りに弾丸と暴風が吹き荒れ、まるで大量に物を巻き込んだハリケーンの只中に居る様だった。だが、重要なのは其処では無い。もう被害状況を気にする様な状況では無い。気にする意味が既に無くなった。つまり、大技解禁が可能に成るのだ。
『私に任せて』
『おい待て、まだ不味いだろう……が……ええ……』
「……これは何の冗談だ?」
「何なのでしょうか……」
空間上に有る全ての飛翔物が回収され、消え去り、エネルギー障壁も消え去っていく。……つまりは、空間を調整する事で、飛翔物を別の空間に全部持って行ってしまったのだろうか?その結果、もう辺り一面ほぼ何も無い廃墟に成っていた。そりゃあ飛ばす物が無くなれば脅威の度合いはだいぶ落ちるけども、けれども。
『回収した奴元に戻せるよな?』
『建物なら直せる人も居るし可能だけど、家財道具とかは完璧には無理かも』
『建物側が修復可能なのは良いとしても、家財道具が無理か。震災後の対処のならまだ可能なのも有るはずだが、通帳とかカードとかじゃ無い普通の通貨はどうなる?それは無理があるぞ』
『それなら真偽判定の人が居ればある程度は何とかなるとは思うけど、仕様を見抜かれての噓の申告とかされたら不味いよね。客観的証明が可能なら別だけど』
「惚けてないで行きますよ。チャンスです」
「お、おう。行きますか」
『じゃあ通信を暫く切るね。私は隠れとくよ』
『解った。無事で』
転移で中心部に移動した。さて、何が出るか。理屈の解らない攻撃と言うのは、普通に有るだろう。そもそも召喚システムの詳細も分からんからな。別の前提思想の元で動いている能力を理解しようとするのなんて、専門外の科目の授業(説明不足の物)をいきなり受ける様な物だろう。要はそれを理解する上での前提が足りない相手にその能力をぶつければ、それを解る奴なんて簡単には居ないだろうよ。だが、これはどうしてくれようか。空間にルールが追加されているのは明らかに解る。問題はその先。初見殺し的なルールを追加されて居たらあれなのだ。何時もの常識なぞ捨ててしまえ。そして細心の注意を払え。で無ければ此処で死ぬだけの話。石を一先ずそのエリアに投げ入れる。ある程度進んだ所で自壊。そして砂に成る。……自壊システムか?水を打ち込んでみる。氷に成る。……は?ランダム効果?ギャンブルにも程が、其処に石弾が飛んでくるので他の人が防ぐ。盾に結界付けて防御力上げている様だ。他の人が色々と攻撃を加える。反撃を往なしながら攻撃の種類ごとに別の物が結果として現れる。少しだけ別の手が加わる形で台無し。なんかそう言うのが故事になかったか?……ああ、蛇足だ。相手の力に自分の力を当てて、自分の力を加えて別物にしている様だ。なら、スピードや火力方面で加えるエネルギーを加えられる前に通り切れば押し通れるか?テレパスで試す様に提言する。まあ要は実力で勝てなければ意味はないし、強制ランダム技使用ルール空間とか戦いにくいな。まあ一応の法則性は有る様だが、多分あれだよな。反撃が弱いのは入れと言う前振りの気しかしないな。
『水霧君は此処で待機したまえ。恐らく先の水の様に別物に変えられてしまうだろうから』
『それを言うなら対象がエネルギーだけである必然性は有りませんよ……』
『と成ると入らず遠距離攻撃で破壊がやりたいが、法則を弄る力を強制破壊して、法則が元に戻らなく成る可能性もなくはない』
『重力干渉なら既にやれていて、それには問題は無いじゃ無いですか』
『アレは厳密には法則自体には干渉はして無いのだが、まあ今は良い。一度退却するぞ。此処でこれを破壊してもしそうでも成ると、責任問題で物理的に首が飛ぶ』
『だからと対処しないのもそれはそれで不味いですよ』
『じゃあ人体を構成する物質をぶち込んでみろ。それが変質したら、策無く侵入=死だ。上に意見を仰ぐ。壊したらそうなるとしても責任を分散するためにさ。別に死ぬために来た訳じゃないのだから』
『……解りました』
入らせるのが目的にしても、防衛目的的にも、ここは普通に逃げられる場面だろう。防衛拠点を守るのに敵が撤退出来なくしてどうする?と、言う話だからね。撃退と言う勝利条件を自分で減らす訳だし、別に壊されないなら壊されないで都合が良いはずだし。サイクロンがまた展開される余地も出てしまうが、別に死にたい訳じゃ無いし。そして実験し、そうなったので転移で撤退した。実際エリア範囲を急激拡張とかされていたらまずかったろうが、壊される展開を狙うならそれは余計な手出しに成る。まあ反撃が少ない時点でお察しだけれど、入らせるか壊させるかを狙うのに反撃を充実させすぎても、だからね……。
「どうだったか?」
「倒せていませんよ。意見を仰ぎたく」
そこでナイフが飛び、それが刺さったのは、
「蝙蝠?ああ、吸血蝙蝠ですか。不覚ですね。わざと逃がして情報を得ようとしたと……」
「全知全能なんて可能な理屈が有るとしても、その全知全能が自分にステータスを上乗せする方式ならそれ同士の戦いはその能力関係無しでの地力次第で力量に差が出る。同じスペックに成る能力でもそれに成るために必要なエネルギー量が違うのだから、さ。つまりは全知全能の能力を持つ者だろうが使い手が完全で無ければ完全では無い。まだ居るか」
壁から槍が突き出て、もう一匹貫かれる。壁飾りが勝手に動いた?サイコキネシスか?自動で侵入者が処理されるならもっと早くに対処出来て無いとだし。
「流石にもう居ないよな。念の為、探査を頼む」
「解りました。……居ないようですね」
「よし、本題に入ろう。あれだけ損害出しても討伐出来てないのは問題な訳だが」
「相手側が空間にルール付与を行っていまして、壊したらヤバイ事に成る可能性が高く」
「……てめぇ……つまりは、その時の責任を此方にも押し付けるつもりか?時間干渉系の物はシステム作成者側の都合的な意味である程度までしか戻せないとは言え、直前のなら普通に戻せる範囲だろうが……ああ、いや、ルール変更がされているのだから、それが通常通り効くか解らないか……よし。更に上に掛け合う。その方が都合よかろう?」
「早めにお願いしますね。相手側は放置なので」
「……今はそれに文句を言う場合じゃないか。一先ずは移動するぞ。付いてこい」
「解りました。行きましょうか」
「記録媒体を取りに行く。スケープゴートにされたくなければそう言うのも準備しておけ」
「はい。此方が持つ事にします」
そして記録媒体を確保して、上に掛け合いに行く。
「それでワシの所に来たのかの……そう言う事であるならば、他国に事前提示しておくと、良いかも知れんのう。一国内だけで全部済ますと簡単にトカゲの尻尾切りされるからの。他国が干渉する下地を創る事でそう済ませなくするためにじゃが、最悪の結果が無くなるだけで、他国に噛ませる事で報酬の最高の結果も無くなる。じゃが、最悪のパターンに成る前提で動いた方が無難じゃろうし、故に他国の大使館にでも話を通しに行くのじゃ」
「他国に対応責任をなすりつける気ですか?」
「話を通しておけば、あわよくば援軍も望めるからの。まあ、今は何処も対応に追われているじゃろうから望み薄じゃが」
「他国に直接話すのではなく大使館に、ですか。それはあくまで借りにしないためですか?」
「そうじゃ。名目上はあくまで、避難勧告じゃのう」
「じゃあまず大使館に行きましょうか」
「そうじゃのう。この国側には此方が連絡をしておこう。最後に、記録媒体を此方に渡せ。なに、もみ消すつもりは無いし、汝ら側に都合が良い話しかしてはおらぬが、捏造されても困るのじゃからそれのコピーを渡せと言う話じゃ」
「解りました。……これがコピーしたものです」
「宜しい。さて、動くとしようかの」
そして幾つかの大使館に移動し、避難勧告を行う。流石に援軍は無い。行くとしようか。まあ要は高火力技を使用する訳だから、あのエリアの近くに行く必要はない訳だがね。火力方面で行くらしいが何で行くのか。え?巨大な隕石を落とす?どうやって?つまり、隕石の欠片を用意し、空中で隕石を修復し、それを重力干渉で加速させ、ぶつける。素材は更地に成って居る辺り一面の土砂。隕石には隕鉄とか特殊素材が入る場合も有るのだが、それは含まずやる様だ。隕鉄があるならそれでもいいみたいだが……隕石を対処しきる個人と言うのは創作ではたまに居るのだが、破壊するだけでは破片が辺り一面に降り注ぐ事に成りかねなくて、なので映画の場合、爆弾で爆破して壊し尽すならかなり遠い場所にまだ隕石が有る場合が多い。ではそれよりも近くにある場合は、というと進行方向の側の表面側の一部に爆弾を設置し爆発させ、爆発力で横に押し、進行方向をずらし、当たらない様に受け流す形が有るのだとか。避難勧告を行う理由はそれかよと思う。そう対処されたらあれだろうし、……そうなるなら地面側に修復を発動させ、地面に戻す?卑怯臭いにも程が有るだろうそれは……。
そして隕石片が上空に撃ち出され、巨大隕石が顕現し、重力加速付きで落下を開始した。斬撃が飛ぶ。修復が発動する。それを逸らそうとする。重力加速追加により軌道修正される。破壊を三度されても構わず巨大隕石は蛇足空間に直撃した。えげつないにも程が有る。いや、種を知るなら、隕石片が上空に上がる前に対処するなり、全部消滅させるなり、やりようも有るのだろうが、質量兵器に対して消滅自体が相性悪いだろう。消す量が質量兵器故に多いのだから、さ。本当酷いな。これ。継続的な攻撃を行うのは蛇足空間展開が邪魔で出来なかったとしても、竜巻を起こすのは……いや、そちらも見た限りは下準備ありきか。……おかしい。まともに衝撃が来ない。まさか対処しきられた?いや、流石にそれは無いか。それなら反撃が有るはず。……は?探査系の人が言うには其処を見やると、空間に穴が出来ていると言うではないか。まさか此方の攻撃のエネルギーを利用して逃げられた?いや、蛇足空間は展開されたままだ。逃げるなら流石にそれは解除して行くだろう。第一何処に逃げると言うのだ。独自の空間なんて物はシステムの仕様の都合上上有り得ないはずだ。出来ていたとしても、更にシステム作成者側に目を付けられる可能性も高い。つまり、これはあくまで逃げ道が増えただけで、まだ追えるはずだが、今のタイミングで立て籠る先だ。罠が大量に有る可能性は高いだろうし、そもそもその空間で此方が大丈夫かも解らない。まあ、当てはあるけれども。空間の穴が閉じていくが、それは蛇足空間の中に有る。それに割り入れるならそもそもこうなりはしていないだろう。……異空間対応出来る奴を創らないと追跡は無理か、これ。くそ。……え?閉じかけていた穴から球体の物が弾き出され、蛇足空間から出て来て雁字搦めに拘束されていた。……ああ、システム作成者側に目を付けられた結果か……。其処なら介入してもばれないだろうからな。ということは、システム作成者側が神様気取りで介入して来たのか。そういやそいつが世界の中身を減らす様な物を創るはずないからな。これは利害の一致でしかない……異空間に行く奴を作るのは止めておこう。こんなのが有るなら逃げ場所としては論外だからな。
そして回収に向かう所でそれは爆発を起こした。自決に出たのかもしれないが、これでは事情の聞き出しが出来なくは、ないな。修復で乗り物側なら何とか成るはずだ。ん?乗り込んでいた奴はって?消え去ったのを修復したところで、それは同一人物と言えるのだろうか?もしそうだと仮に言えるのならば、ある程度以上精巧でさえあれば、コピーの存在もコピーでは無く、本人と言えてしまうのでは無かろうか。
さて、回収しに行くのは誰がするかね?追加で何か仕掛けが有る可能性があるので、遠隔解析?しばらくの間待つ。……マジか……DNA鑑定が出来ないレベルに灰塵に成り果てているらしい。ん?なら蘇生の件はどうなるかって?火葬された後の遺灰をくすねれば似た物は用意出来るし、そもそも敵の目的が遺体の大量回収なのだからついでに回収されている可能性も十分に有る訳で、結果骨のみ修復し、データベースとすり合わせる事に成る。まあ理屈は抜きにして、遺灰が混ざり過ぎて、誰を蘇生すれば良いのやら。此処で死亡偽装の可能性が出るのか。……一、二国のデータベースを見れば済む話ではないし、遺灰のみの場合、必要な検索範囲も膨大で有る。いやまあ、データベースに登録されているのと比較して、該当者を探すのが出来る国もあるが、出来ない国も有る。そういう国の奴の場合、即座にデータ照合完了とは行かないのだ。つまり、しばらくは検証結果待ちで有る。其処に海鳴が来る。
「ちょっと不味い事に成ったわ。……支配系能力の理屈を成立させた奴が出て他の精霊が支配され出したみたい」
「支配系能力?要は制御力で常に上回った結果の支配か?」
「それなら制御力が何らかの形で途切れた瞬間に支配力は解かせる事が出来るわ。細かい指令までははされないみたいだけど、傀儡師的な戦いをする分には問題ないレベルには制御されているみたい」
「ん?普通完全に支配しようとするよな?何故にそんな形だ?」
「わからないわ。でもその形に成る理由が有るって事じゃないかしら?」
「過程の省略は能力として十分成立する。なら水を制御する機器をそれの説明に使えば?」
「能力の理屈を既製品の引用で対応し、それの制御力を支配の能力として定義した?」
「そう言う事だろうよ……つまり、道具を使ってやれる事全てを説明の下地にして、それを元に能力で代用して構築していると言う事だろう。……数億度の炎が出て来るフラグとかじゃないよね、これ。一応設備を整えたらそれくらいのは実現可能らしいし……」
「……一先ずセーフティを作りに行きましょうか」
「だな。そうしよう」
「ちょっと待て。数億度のデータは条件を揃えた結果の物だ。しかも一時的な物だしね。有名なタングステンの融点は三千数百其処ら。魔法金属を持ち出さず、魔法剣よろしく只炎を纏わせるだけの火焔剣なんて科学的に常にやりたいなら、三千度其処らの物が限界だ」
「其処迄美味しい話は無いか。でも、つまりは魔法金属を持ち出せばその限りでは無いと?」
「そりゃそうだ。それに耐えられる様にする魔法金属を加工で作ればいいだけだろう」
「ちょっと試してきます」
「どうせ暫くは待機だから、拠点から離れなければ自由にどうぞ」
さて、検証の時間だが、一応召喚システムに頼るのは最低限にしたい。だから此処は検証班に持ち込みとしたい所だが、そんな時間は無いな。ある程度の配下を使役した後に海鳴が狙われる展開も有り得るしね。一先ずはフリーな水霊達と連携を取りに行こう。そう指示を海鳴にして、そうして貰う。強制労働が嫌な奴らにしてみれば渡りに船な検案なのだから、水霊達に協力を得る事は難しくは無かった。そして大体全体の四割程の協力を取り付けた。そして強制使役に対抗する為に存在連結を行う。その結果、存在が変質でもしたのか、エネルギーの質が全体的に変わる。結集体の名義はアーバーン=ウォーターに決まったらしい。アーバーンはゾロアスター教のアープと言う神の複数形の名称からの物らしい。つまりは中級神の名前を名乗る訳だ。あくまでも集合体としてはと言う話だが、まあ、全体の四割が協力している者とも成れば流石に一個人で低次神の奴よりかは上回らないと不味いわな。まあ五割を確保していないのだから、戦うなら早い段階でこちらから仕掛ける必要が有る。現段階では戦力差的には問題なく勝てるだろうが、問題は支配の力がどの程度にまで通用するか、だ。通用された場合は大変な事になるだろうしね。と言うか他の火とか雷とかの他の元素のでも似た検案が発生しており、そちら側に付く者も居るわけで、選挙で例えるならいわゆる浮動票者は二割弱。いわゆる中立を気取り、どちらが勝とうがそちらにすり寄れる様にしている集団で有る。それらをどれだけ確保出来るかが重要な訳だ。今すぐに出来る事は終わった。一先ずは上に報告しとくか。
「支配系能力に辿り着いた奴が出て、それに対抗する為に精霊が結託を始めた、と。で、その結託に水霧君が関わっている訳だ。よくやった。だが、このタイミングでこれだと、敵側が次の手に移ったと言う事だろう。恐らくは幾つかの属性は完全掌握を敵にされるだろうから、何とか防ぎたい所だな。他の属性精霊持ちに話を通しておこう。其方も其方で動くべきだろうし」
「他の属性の方は任せます」
「広く浅く、か、狭く深く、か、少なくとも属性がどの属性に成るかも分からないが、中級神級を数体は相手にする覚悟はしておけ。最悪上級神級も出かねないからな。そうならない様にはするが、期待はするな。じゃあ現場に戻り次の手を打て。此方も動くからな」
数体の中級神が相手に成る可能性が有る、か。強制使役の関係上密な指示を出すのも問題が有るはずだし、それから解放出来れば味方に引き入れられる。つまり最初が正念場に成るだろうが、他の属性の掌握の具合で難易度が変わる為、先ずは水神の力の確認作業だ。
「私達は水であり、水は私達で有る。されど私達は水のみの存在ではあらず、故に支配下の物は水のみにあらず」
そりゃあ純粋な水一本勝負の奴以外も居ただろうからな。他の属性をある程度得ているのも不思議ではない。……只の合算ならそれを持つ元の個体値の範疇でしかないはずだが、それを行う為のリソースがそもそも違う形に成るし、該当能力を全員が得ている扱いに成るのなら、その全員が同時にそれを使えば?……ヤバイ事に成る予感しかしなかった。支配とか言うのはそりゃあ支配系能力に対抗する為の協力なのだから仕方ないと言えば、仕方ないのだが、……展開の都合上必須枠が自由枠を減らす羽目に成った状況なのだから、アレではある。いやまあ、そもそも支配系能力に対抗する為と言う大義名目なのだから、展開上自由枠に出来ない物では有るのだが、だが、くそう。強い能力を入れられる所が対策に使用する事に成ってしまった。いやまあ、支配系能力が弱い訳じゃないけれども。ん?あ、これが有りならひたすらに該当属性の精霊を召喚すれば幾らでも能力の上乗せが出来るかも?頼んでみ……。召喚出来ない?ああ、作成者側からの制限が入ってしまったか。まあ、数さえ有ればひたすらに神格が昇華して行く理屈とか明らかに不味いだろうしね。召喚システム作成者側は此方には友好的では無さそうだ。それともシステム管理上の限界数に到達したのか?いやいや、それに成るには流石に早すぎる。流石にそれは無いだろう。
「調子はどうだ?」
「貴様は発案者か。此度の事、感謝する。……、やっぱり戻しましょう。今は能力の把握が大変ね。色々な属性も獲てしまっているから、それらの把握もしないとなのよね」
「……しかし支配系能力で良かったのか?」
「それは結集体に成らずとも出来る事の延長線上の物よ。全ての水は私で、私は全ての水。貴方が決めた事よね?だから今回の場合連絡も簡単に取れてスムーズに話が進んだのだし、それが水以外の能力を得た事で水以外にも及ぶ様に成っただけよ」
「言われてみればそうなのだが、卑怯過ぎるな、それは……ん?おいおいおいおい。それは何処までの事を言う?システムにも力が及んでいるなら、システムが動作不良起こしているのじゃあ無いか?何故なら制御対象の物も体扱いに出来ている訳だから、さ」
「つまり、システムに宿る人格に私が無理矢理成ってしまった訳かしら?……それは色々と不味いわね。完全にシステム作成者側に喧嘩売る形に成ったわよ。個々では許容範囲の能力でも、合わさるとヤバイ事に成る。そう言うシナジー効果迄事前に把握し尽すのは難しい物ね。……私消されるのかしら?」
「流石に重大性的には即座に対応されて然るべきだけど、仮にも中級神相応な訳だしな。消せずに何か打診が来る可能性も有るな」
「なら今のうちにやれるだけの事をやりましょう。展開的に、死にそうなのだし」
「……と言うにしても何をやるのか」
「存在的に私と溶け合いましょう。水の身体を持つ貴方に私を残して置きたいわ。そこから生き残れるかもしれないし」
「解った。じゃあそうしよう。蘇生の為の手なのだからつべこべ言う暇は無いし」
そして彼女と俺は一部が混ざり合う事に成った。システム的にはこれで別物なはず。後で修復能力の奴に治してもらおう。それで蘇生出来るはずだ。そして様子を見る事にしたのだったが、来ない。何も、無い。何故か考えて、気付く。これは初期に危惧した状況その物なのだ。システム作成者側が此処で干渉しない事で、間接的にシステム作成者側に此方を仕立て上げ、責任逃れするのが可能に成ってしまうのだ。流石にそれは無いよな?でもシステムに宿る意思なんて存在自体が爆弾みたいな物だ。行動を間違えれば殆ど関係無い事の責任問題の責任を取らされる可能性が有る。システムの由来の意思ではなく、後から乗っ取ったのをきちんと説明しなければ成らないが、それには此方の能力の説明もセットで無ければ成らないが、彼女達の能力は公に公開して良いレベルを既に超えている気がする。考えあぐね他と顔を合わしに行こうとした所で攻撃が来る。今更来たのか?反撃をした所で大声の静止が割り入る。どういう事かと思えば、どうやら味方の誤爆らしい。のだが、明らかに初見の神の奴らから一律にヘイトが向けられている……まさか……システム作成者……ヘイトが此方に向く様に進化の過程で何か他の奴らの存在に混ぜたのか?何か?つまりシステム産のこれ以降の強キャラ全員が強制的に此方にヘイト持ち仕様と言う事か?……これは死ねる。下手に軍勢を差し向けるよりかヤバイ状況なのでは?
「すまん。そんなつもりはないのだが、衝動が湧いてきてな。一先ず離れてくれまた。同じのをやりかねない」
つまり、敵対衝動の付与か?
「単に敵対したいのではなく、そう言う衝動が有ると。わざわざそんな仕様を入れたか?」
それを静止した人に聞くと、
「まさか。でも、あくまでもガチャ仕様を取る以上そう言う事も有るだろう」
「……頭痛く成って来た。つまり、造る段階でシステム作成者がシステムで生まれる欲しい奴を手下化出来る訳だ」
「そう言うのが有るなら、今までの奴にもそう言うのが含まれて居ない可能性とはどれくらいだと思う?」
「なら、召喚システムが意図的にオーダーされたのをそのまま作るのではなくガチャ形式にしていたのも怪しいですよね」
「なんだ?召喚失敗したと思っていた奴らが実は成功していたけど、中抜きされてシステム作成者側に盗られていた場合も有るとか言わないよな?」
「……強い設定を使っているのに召喚出来なかったパターンが有るからガチャ形式的な物だと言う認識だと成って居たのですよね?」
「……人々の願望の塊の個体の大量所持……召喚システムを使わせる事で作成者側が大儲けしていると言う事かよ……」
「……そう言うのは無いと思うわよ?私なら、そうするならもっと自然な形でやるわ。まだ確認していない事も有るしね」
「……ああ、所有能力に対する存在としての拒否反応か否か、か。……支配系能力に対しての対抗の名目で四割も即決で賛同して来たのが、そのまま此方に跳ね返る訳か。四割の奴らがほぼ即決するレベルに嫌悪する能力なのだから」
「なんだ?支配系に対抗する為に支配系能力を得たのか?そこは解放とか、支配系を崩す為の能力を得る所だろう?」
「能力同士のシナジー効果的な意味でそう成っただけで、狙って成った訳では無いです」
「ああ……そう言うパターンか……さて、一先ず離れたままで話を進めようか」
「そうするべきですね」
「実際水掛け論が嫌なら相手のステータスが関係無い形の殺し方を提示するべきだろう。そうでなければ水掛け論的にはそれが通じないステータスを持つと言うだけで終わるし」
「それは創造主の領分だと思うのですが?相手が死ぬと言うルールを相手に付与する……ああ、それはゲーム的に言えば死の宣告ですね。ああいうのは専用の対抗用能力持つ奴じゃ無いと幾らステータス高くても基本的には関係無く死にますし」
「それで相手に対抗の余地がない様にするだけで済む話だろうしな。それはさておき、上から来るぞ、構えろ」
すると空間の遮蔽物が取り除かれていく?そして極太のビームが居る場所に撃ち込まれる。ある程度は干渉が間に合うが、そう出来なかった場所にそのままビームが拡散して直撃して行く。確かビームは雨が降る環境ではビームの光が拡散してしまう為に威力減に成るらしいので、故の空間の遮蔽物の除去なのだろう。既に辺りは荒地なのだから、表現としては大地を此方から確認が出来ない程に穿つ威力としか言えない。見る場所的にどれだけ深くまで貫いているか解らないし。と思えば、次弾が来る。ああ、金属の回収も目的じゃ無いかとかあったのだったな。金属塊の砲弾の連続高速射出。レールガンかコイルガンか何かなんて見ただけじゃ俺には分かんないが、ロングレンジから攻撃しないと負けるとか思っているのか?と思うくらい近距離攻撃無いな。不意打ち一発ならともかく、何発も打ち込む形では逆探知してくれと言うような物だが。いや、極太ビームを少数相手にぶつけるとか、少数相手に電子砲弾の大量射出とかやられているのだ。だと言うのに殺意有りません判定は流石に認識がずれすぎているだろうな。ゲームのコマンド技では無いのだから、ある程度の物が前提として必要な奴はともかく、色々な創作で使われている単なる低レベルの制御で説明が付く系の物は大抵出来ると見るべきだろう。ビームの次弾が来ないな。連射系では無いのか?いや、普通に防がれたのにまたやるのは違うし、だから次手の物がレールガンなりコイルガンなりの物が来た訳で、まさか、支配系の制御力が強個体に通用しない展開な場合なら、相手側はそもそもいわゆる神霊個体を用意出来なかったか、出来てもそれを従えられなかったパターンがあり得るのか?それともある程度以上の個体を造るのをして制御力が足りなかったら支配力を逃れた神霊にいきなり攻撃をくらう展開に成るのか。良かった。同等クラスの神霊を相手側が使役出来ていたなら、キャパシティー等の問題が有るにしても此方の奴らも支配系圏内に成る訳で、此方の奴らを失敗前提で使役を試みるのは別にしても、安全策を取るなら自分で一定レベルを超えた神霊の用意は無しに成る。……なら数で上回るしかスペックのみの観点的には勝ち目は無いか……。そして数で押すのが無理な奴を用意出来たのだから、最後の勝負の分かれ目は此方の奴らが相手の支配系能力の使役圏内か否かに成る訳だ。相手の勝ち筋が多すぎるよな。此処までやっても運任せに成るのだから。スペックの把握能力でも有ればある程度は解決出来そうな気もするが……水掛け論的には負ける所だろう。何とかしないとだが、催眠術の能力は催眠術能力持ちには効かなかったのだから、同じ能力持ちにはその能力は効かないのだろう。なら、アーバーン。つまり、海鳴は大丈夫な可能性は高い。問題は他の奴らだろう。どうするかね。支配系能力を相手にする事は集まる上でのそもそもの前提として解り切って居る。なら神霊達がそれに対して何かしらの対策能力を持つのは当然の帰結に成るが、どんな能力を持つか聞く間も無く戦闘が始まった訳で、つまり、それが支配系能力に対して有効かもまだ解らないままだ。だがあの反応なら支配系能力は無い気がする。何体かは支配される前提で考えて置こうかな。こんな事を考えている間にも攻撃は来ているが、基本的には無意味でしかない。まあ、相手側が一定以上の個体を用意出来なかった以上は個々の火力方面では基本的に負ける要素は無い訳だしな。精霊と言う存在がポピュラーだからこそ、創る奴が多く、数が相応に存在し、故にそれらの結集体も相応の奴が作れた。逆に言えば、創る個体に独自性を重視していたらこの手段は高い水準では使えなかった。それは独自性が高いが故に個体数が自前の奴しか居ないのだから、大量生産をやれる奴でも居なければ当然の話なのだが、ドラゴンだとか龍だとかは、システムの都合上、ファンタジーの代名詞の様な、ずば抜けて強い奴は構築が無理ゲー的な意味でまだ居ないはず。……但しボーンアンデッド的な骨だけで体の大部分が成立する奴は除く。な、訳だが。遺体の遺骨大量に食わせられるからやばそうな奴を創れそうではあるな。でも使役圏内に成る可能性有るのか?何か忘れている気がするが……其処に連絡が入る。大量の骨の個体が合体し巨大な骨の化け物が現れた?そう言えば他の場所にも同時に展開されているのだった。あ、そうだ。合体ロボ方式だ。部品それぞれを別々に個々の個体として使役しているまま、それを協力させ、でかい個体として行動をさせればいい。つまり雑魚共が居ても早く殲滅しないと不味いのだ。いや、存在連結ではなく、只の協力なのだから、協力封じ系が普通に通用する気もするけど。でも、何故此方にではなく、彼方に骨の化け物を用意したのだろう?もしや分断だろうか?骨の化け物とは言え、ベースはあくまでも人骨がメインなはずで、火葬してしまえば簡単に倒せるはず。ああ、材料に遺灰も混ざるのだから、耐火性能も上がっているのだそうだ。いやまあ、倒せるでしょう?は?骨の化け物で有るのだから、骨の制御が出来る。まあハイ、そういう物だろうとは思う。が、現地に居る奴らの骨を無理矢理操り、自傷させようとして来るのか、単に、近場に来なかったのは性能が対精霊向きじゃ無いだけか。骨が体の構造に存在する生物のみが敵の戦線に投入するべき内容では有る。それはもし行動を掌握されるとまでは行かなくても、制御力が及ぶ範囲での全体の敵の行動制限が成立するからだ。さて、とは言えそちらに一部が向かうと分断される様な物だし、介入するなら遠距離攻撃だけで対処しなくては。……は?石油基地を奪われた?いや今更石油?石油は人工でもう作れると言う話じゃなかったか?でもそう言えば石油は元と言えば、動物の死体が年月を経て変質した物。つまり骨を操れるなら操作可能な媒体の一つとして成立する。頭が痛い。要は札束殴り(此方側からの盗品で)だ。壊す方向で行くとそうすればするだけ此方の損害が跳ね上がる。天然の石油がこう言う奴が出て来たらもう実際使えない。天然の石油(敵の武器)を近場に置いとくとか、遠隔操作されたらヤバイ事に成るのだし。だが、今直ぐ人工の石油が天然の石油に全部取り替われるか?と言われるとそれはノーとしか言えない。これは召喚システム内部に有る全ての天然の石油を掌握されている、又は掌握する手段が有ると示されたと言う話な訳で、今回の奴を倒せた所でレシピ自体は彼方側の持ち物なのだから、似たような奴をまた作られる可能性も否定出来ない。まあつまり、最終的にどうするかは別として、相手側の完全殲滅を成功させない限りは、少なくとも今だけは今回の相手側と和解方面に行かないと、今後は天然の石油使う系の機器全般が殆ど使えなくなる訳だ。ははは、死ね。くそが。さて、なら此方も石油を掌握する系の能力を持つ奴を創れば良いかも知れ無いが、ゲーム的に例えるなら、似たのを創るだけではそいつの力のレベルが足りない。いわゆる強化素材を相手側だけが馬鹿食いしている状況なのだから、当然と言えば、当然だが、では数で大幅に上回る事で初期値その物で強化値を上回る事を目指すべきか?それをやるなら一発勝負に成る可能が高い。何故なら初期値が下回る奴を創ったとしても、相手側からして見れば動かなければならないからだ。それにどれだけの個体数が協力してああなったかを此方は知らない。そうするには余りにもギャンブルが過ぎるのだ。石油を掌握する能力なんてメジャーに多用されては居ない。つまり今回の様な周りから似た個体に沢山協力してなんて無理だ。だからこそ今回の様な事に成った。アンデッドなら作る奴はそれなりに居るだろうが、だからと得られるか解らない派生能力狙いで大量生産?骨を操る能力は既に相手側に有るのに?色々と無理があるな……これはあくまでも現時点では、と言う話でしかない訳だが。其処に敵側に音系の奴が居るのか、声が辺りに響く。……な……建国宣言……だと?くそが。取り決めをして和解方面に進むなら、敵の構成員が顔を隠すにしても表に出る必要が有った。そうしないなら誰と誰の間の取り決めかが確定せず、取り決めなんて意味が無いからだ。だからこその一方的な建国宣言。そして自国領土の主張。その領土範囲は今回の戦闘区域外も含まれており、無関係な人もそれなりに含まれている。完全に掌握した訳では無い場所を自国だと主張した事で、構成員の隠れ蓑を用意したのだろう……。後、攻撃を躊躇わせる為の実質の人質かね。拘束されている訳では無いから普通に逃げられるだろうに……。ちょっ、領土から逃げる人を他の人が拘束するかとか言い出した!?
「なんで避難民の拘束をするなんて話に成るのですか!?」
「無関係な人に紛れたスパイを炙り出す為だな。グレーゾーンなのを活かしたいなら、間違いなく、その中に紛れているはず。なに、真偽判定なり何なりとで軽く質問をするだけだ……それ以上は流石に対応としてまずそうだしな」
「……ふむ。でもどうしますか?あの国は……」
「テレパスに変えな。話はそれからだ」
『解りました。それでどうしますか?石油を掌握する能力なんて用意しても、強化値的な意味で勝てませんよ?』
『私も似たのをやれるかも知れ無いのだけど……問題は支配系能力の競合がどうなるかよ』
『自分で自分を操れば支配系能力を弾けたりしないのか?』
『それが有効なのは相手の能力エネルギーがそもそもの支配対象に成らない場合のみよ。そうじゃないと相手が何かしらの能力を発動していたら簡単に防がれるゴミ技に成るわ』
『なら他人に既に支配系能力を受けてればワンチャン有ると言う事か?』
『それなら一人を支配する能力で実質二人を支配する出力を出す必要が有るでしょうから、対少数相手用の支配系能力ならそうね。最終的には支配されて居るのを更に支配する形に成るから、出力勝負だけど、前提条件的に出力勝負で負ける要素は無いわ』
『なら行けそうだな。問題はタイミングか……』
『最強と設定すれば、実際に最強に成るなら苦労はしないが、は?広域に高圧電磁パルスが発生した?ああ、機械的な介入を防ぐのと人質の逃亡封じか。まあ極太ビーム撃てる奴が居るなら可能な範囲では有るか。それを元に占拠したと言いたいのだろう。潰さないと』
『とは言え、どう潰します?元凶を見つけないとアレではあるが、まさか完全な籠城するつもりは無いはずです。核でも撃ち込まれたらアレですし』
『電磁パルスが全域に有る訳じゃ無いはず。相手側の者はともかく、巻き込まれた奴らの分迄そう言う環境で生活可能な装備品を用意しているはずが無いからな。そうしていたら普通に持ち逃げされるし』
『つまり其処に転移で侵入可能なはずだと言う事ですね』
『とは言えそれはあくまでも人質を保持する上での都合。人質の意味が無い局面に移行した場合全域高圧電磁パルス展開と言う事もあり得る。一先ず真水でも投げ込んでみなよ。それでどうなるかが決まる』
『俺に隠密作戦でもさせるつもりですか?』
『高圧電磁パルス環境下でも動ける装備が有ればとか言えば、簡単だが、根本的な意味で絶縁破壊が起きない奴じゃ無いと、相手側に出力を上げられるだけで詰みかねないからな』
『それなら土系の結集体の奴が良いじゃ無いですか』
『そいつを投入する場合は隠密も何も無くなるだろうが』
『……土の奴の力の説明を聞いても?』
『一部だと、大地制御、鉱石等生成、存在リンクとからしい。存在リンクで支配系能力の使い手側の意思に介入して、潰す能力なのだと』
『……それだと掛かるまでのタイムラグの自由意志が前提なので、即座に掛かる系能力をぶつけられたら詰むじゃ無いですか……』
『個体値としてはそう簡単にはそうは成らないのではないかと言う話だな』
『あかんこれ。水掛け論のみが勝因は不味い。今回が良くても今後が……いや、存在リンク?今回の結集体を更に統合するのに使えるかどうか?使えるならワンチャン有るぞ……』
『それは出来たとしても無理がある。結集体の結集の取り決めが別々だから、全部一纏めにするには個々に要求される条件が多過ぎる』
『そんなの言っている場合じゃ無いですよ……』
『だが、だからと条件の摺り合わせや、契約の結び直しが簡単に出来るとでも?』
『……ですが、即座に効くタイプの物をくらうのは不味いでしょうが』
『ならこうしよう。味方と軽く既にリンクしておく。但しそれは一先ずは今回の件でのみの物にする。故に存在連結とまでは行かない簡易的な協力だ。人数が居れば支配系能力に使われているエネルギーを連携して潰せるはず』
『……つまり、先の話的に、支配系能力を既に他人に掛けていて貰おうと言う事ですか?』
『簡易的にだが、今回限りの話にしとけば何とか了承も取れるだろう』
『ならそうしましょうか』
『じゃあ行くぞ』
『結局そうなるのですか……』
其処で追加の連絡を受け取り、
『他が先に動いた様だが、恐らく監視カメラに映る範囲に入る瞬間に攻撃を受けているな』
『そんな自動迎撃な監視カメラなんてあるのですか?』
『まさか。監視カメラで得た情報を基に敵方が攻撃を行うだけの話だろう。それなら驚くには値しない。問題は攻撃方法だ。殆ど座標攻撃並みに攻撃の始点が無い。だが、座標攻撃なら監視カメラなんて無くとも普通にやれるはずだ。だから別の何かだとは思うのだが』
『見ることで攻撃が対象に完遂される能力なのですかね?』
『……それだ。邪眼か魔眼だ。何のそれだろうか?現象のレパートリーが多過ぎるが』
『私は一応原初の精霊だけど、特に私は何もして無くとも強化される事が有るわね。多分、設定上、他の水精霊が私よりも強くなると、同時に私の成長上限も伸びるからじゃない?』
『何そのインチキ能力……』
『前提的にその水を使う他の水精霊の強化が私にもある程度波及しているだけじゃない?』
『その理屈だと弱体化も受けやすいのではないか?』
『全ての水精霊の成長量を少数の弱体化能力で上回れるはずも無いわ。……まあ、神クラスの奴がやるならまた別の話かも知れないけどね。今回の奴は多分原初とか始祖とかのそれの能力持つ奴じゃないかしら?』
『原点にして頂点(強制的に)と言う奴か。本当酷いな……』
『スペックのゴリ押しが唯一の回答能力でそう言うのをやられたら、真面目にその系統能力の中での最高攻略難易度に自動的に成るものね』
『技量負けは普通にあり得るだろ?油断大敵だぞ』
『そうね。要するにこれはオートパワーレベリングを受けているだけだもの。私に技量が無いとは言わないけど、その実力に成るのに相応の訓練量不足と、実力に見合う技量不足に陥りやすい仕様ではあるわ。まあ、なら技量もフィードバックすればとか言う奴は自我なんてどうでもいいのでしょうね。能力に自我に関わる物を弄らせているのだし』
『それに頼るのは余りに嬉しくない訳だ。あくまでもゴリ押し封じ用だと思う方がいいな』
『鍛錬を怠らなければある程度は補えるわよ。……でも、実力が戦闘中に今まで以上に上昇する類いの奴は厳しいわね。スペックなんて二次創作的には余り意味無いとは思うけど』
『二次創作はともかく、相手側だけが実力に見合う鍛錬をやっていて、それに此方が順応する時間が無い形に成るからか。実力が元の実力では対抗不可能レベルに上がられでもしないと倒す迄は無理じゃ無いか?そして、それは戦闘中が初じゃ無いとダメだろ。そんなレベルの実力の変動にそいつが対応出来るのか?根拠無しに出来ると言うなら両方が可能で話は終わるぞ』
『対象が一人じゃないのだから、別の面では普通に勝てたままの場合も普通に有るわよ』
『無根拠な最強能力的な内容なのに、ちゃんと理屈を成立させてあるとかむしろ性質悪い』
『結果として鍛錬と実力相応の技量の不足に成りやすいデメリットも有るわよ』
『特攻能力とか、全部特攻対象とか言う単に所有者の攻撃力が高いだけの物を除けば基本的には対象を絞るはず。特定の何かに勝つことだけを目的としていて、全てに対しての最強能力には絶対に成らないが、これの場合はある程度補える物しか捨てて無い訳だろ?』
『今回それに頼る意味は無いわよ。今後はともかく、今回の敵についてなら、前提条件的にスペック上なら能力関係なしに敵は格下しか有り得ない物。その一部の例外以外はね』
『魔眼や邪眼持ちの始祖か何かが必ず来そうだ物な』
『それより、なんかジャミング入って来たわね。見えにくいわ』
『こちらもそうだな。知覚その物に干渉?いや、まさか。多分空間内にゴミを撒き散らかした様な物だろう。……あ、ヤバイ、水を辺り一帯に撒き散らせ。速く!』
そして俺と彼女が水を撒き散らし始めた所で辺り一面に大爆発が起き、爆風を受けた。
『ケホ……無防備で受けるよりかはマシか』
『何が起きたの?』
『恐らくは疑似粉塵爆発じゃ無いか?ジャミングにしてはお粗末だと思ったから、何かの下準備としての物だろうと思った訳だが……話す余裕はもうないな。次が来るぞ』
色々な魔法が来るが全て壊す方向で行く事にする。
『ええい、くそ。例え雑魚技だろうが、ちゃんと処理しないと不味い状況とか勘弁してくれ。強コンボ技の始点が単体だと雑魚技のパターンを見せられた後に雑魚技なんか見せられて警戒しない奴は馬鹿だろうが』
『でも、ブラフとして此方の力を測る為や、力の浪費させるためかもしれないわよ?』
『くそが。そうだとしても、こうしないと不味いだろうが』
『邪眼はどうしますか?』
『要はカメラに見え無くなれば良い。光の屈折率の調整で監視カメラを欺け。インジビブルなんて有名な奴だからやる奴も流石に居るだろう』
『エネルギーの偽装の問題はどうするの?偽装の為のエネルギーを見られたらアレよね?』
『……』
『ないのね。なら私が内部に有る水分で分身を創るわ。それなら倒されても問題ないし、先の案も使えるわ』
『……頼む』
『解ったわ。じゃあ始めるわよ』
そして彼女が分身を大量に発生させる。
『よし。カメラの回線を見付けたから、無力化したわ。今なら普通に侵入可能よ。電磁パルス展開はそのままだけど、ルートも有るわね。其処に行きましょう』
『……城の設計でよくある敢えて侵入経路を残して敵を其処から来させる事で対処しやすくする為の奴か。ええい。それでも他より侵入し易い場所なのは確か。行くぞ』
『それならいい考えが有る。そのルートに大量に水を流し込みそれを結界扱いにしつつ突入する。どうせ問題の場所への道筋が分かるならそれで其処迄行くのが速い。行けるか?』
『つまり、私に猛攻が有る場所に一番槍しつつ皆の壁になってと言う事かしら?一番槍はまあもうしているからともかく、全ての攻撃を通さない保証は完全には出来ないわよ?』
『それでも無防備に入るよりかましだ』
『やる場合理論純水でやらないと感電で皆やられるわよね?そうしないためには理論純水の中を普通に進めるスペックが必要よね?それは皆に有るかしら?全員には無いわよね?』
『……結集体の奴らには全員が可能だろう』
『それはそれであれだけど……まあいいわ。やってやりましょうか。でも、私だけじゃ今の状況では捕虜を保護なんて捕虜側が拒否するわよ。だって、怪物が相手の主力なのに人間以外が助けに行っても信頼も何も無いわ。人間に来て貰わないと、話にならないのよ』
『……なら俺が行っても同じか。……来てもらいますよ?』
『あはは、元よりそのつもりさ』
『じゃあ行くとしましょうか。サーフィンで進むとして、板を出して貰える?』
『それくらいなら……』
『よし。それを水で押し流して行くから板に掴まりなさい』
そして移動を開始する。水を結界扱いする事で相手側の視界を遮りつつ、攻撃を防いでいく。大量に穴を用意されるが、そもそも制御下の水な以上は関係無い上に氷の膜を張り塞いで行きつつ進む。通路全てに水が満ちていく。だが、他の場所に比べて進行可能で容易であることが前提条件的に必要なのだから、そもそも完全に進行不可能な仕掛けなど用意は出来ない。いや、そう出来はしても、そうしたらわざわざ此方の侵攻ルートを限定的にした意味が無い。もしピラミッドの殺界的な仕様にするつもりなのだとしても、捕虜を救助したら解る話だ。罠だとしても今は踏み切り壊して行こう。
『結界の外に出ないで。安全域が潰れて来た。電磁パルス展開が全面になって来たのよ。安全域が無い訳じゃ無いけど、恐らく其処には敵が居るでしょう。戦闘に備えなさい』
『おう、行くぞ』
すると辺りが一気に冷却されていく。まあ、水をメインに使い攻めてくるなら凍らせるのも手の一つだろう……が、凍る氷を氷のままで液体状に操り、無意味にして行く。要は此方の力には氷の制御も含まれているのだから、氷が氷の塊に成る原因を制御で崩しただけである。冷却だけじゃこちらには通じ無い……が、
『今……何度だ……?』
只の人間には別の話だ。
『まだ氷点下マイナス二、三度ですよ』
『着こんでいるならともかく、薄着でこれはヤバイだろ……』
『ちっ。服を出してくれ。着こませる』
更には酸素が薄くなり始める。……此方に人間が居るのを解った上で、そいつに狙いを完全に絞って来ている。
『ふいー。あったけー。速く目的地に着かないと不味いだろ、これは。これについては小型の酸素ボンベなら君らに付いていく関係上持っていたから、対処出来るけどね』
『捕虜が知り合いならもっと簡単に話は済んだのに……』
『足手まといの要介護者で済まんな……。だが思い付いた事が有る。他が自分より強ければ其処迄足りないステータスを上昇させる。この説明だと、他が弱体化しても関係無いのでは?発動条件がそもそも同種の奴らが何らかの形で君を上回る事なのだしね』
『他が弱体化すると一緒に弱体化すると言うのは敵や他人に自分の強さを依存する奴ら全般の問題よ。相手一人を基準に相手よりある程度強いステータスに逐次なる能力とかその相手が只の雑魚だとステータス的には只の雑魚に成るのだもの』
『うわぁ……別に常に強い奴を基準にしとけば良くないか?』
『大人数が対象に出来れば済む話だけど、それでもステータスが特定の状態や値で有る事が戦法の前提条件にある奴よりスペック上強くなったとしても、同じ戦法取れないわよね』
『例えばHP量が少ないからこそ成立する戦法取る奴よりHP量を増やしても……』
『ああ、目的地にエネルギー反応が増えたわ。……飛ぶ骨の武器……かしら?何か格落ち感が有るけど油断しないでよ?』
『今迄の流れからすれば、格落ち過ぎて逆に怪しい』
『そいつが居る場所に突入するわ。構えて』
「がっ。体内に入られた。先の骨の化け物の分体の奴な様だ。……割とこうしているだけでも不味いな、これは。自害……させられそう」
『早く倒すに限るな。おい。エネルギー反応増大して来ているぞ。一先ず拘束させて貰う』
『マウスピースもくれ。舌を歯が噛み切りそうだ』
『解った』
『来るわ……あれ?普通に防げ……て、無いわ。粉状に崩れて空気的に結界内に入って来ているわね。流石にそれくらいなら潰せるけど……』
『問題は其処じゃない。結界を通過する方法を掴まれた方が問題だろ?』
『とは言え、それで侵入して来る骨の粉は全部防げているわよ?』
『本当にそれで入って来ているのは骨の粉だけか?』
其処で首を絞められ始める奴が出始めた。いやまあ、よく見ると空気内に極小のエネルギー反応が有る骨だけでなく空気内にも何かを仕掛けて居たのだろう。ヤバイな。呼吸でそれを吸い込んでいるかも知れない。
『抵抗しないで。今から体内の異物を全部取るわ。空腹は我慢よ。じゃ無いと死ぬわ』
すると彼の内側から刃が出現した。
『はあ。間に合わなかったわね。一先ずそれでも異物の除去からよ。……これでよし、と。さて、大体は掴めたわ。対処に行きましょうか』
『シンプルに耐性持たれていたらヤバイ事に成る気もするが』
『他の世界ならともかく、この世界のシステムでは能力として耐性を求めるなら、理屈が必要なのよね。故に耐性を完備されてようがそれを成立させる方式さえ割れば崩せるのよ』
『方式なんて簡単に割れるか?単純に耐火性能が高い場合もあるだろう?』
『それは能力と言うより、素ステータス側のそれね。今の話で扱っている部分じゃないわ』
『それだとスペックゴリ押しされたらメタ出来ても意味ないじゃ無いか。後システム関係なく使える奴は?』
『能力メタの話でスペックメタの話を持ち出さないで貰えないかしら?システムで不利益を受ける奴で大層強くて本格的に時間遡行を使える奴が居るなら、結果論的にはシステム自体即座に潰されているわよ。もしそう言う超存在が居るならばだけど。もし不利益が大きいのが居たとしても、対処出来無いレベルに主犯よりは弱いだけの可能性も有るわね』
『でも、テレパスでとは言え、こんな話をしていて大丈夫か?一応敵の前だろ?』
『そもそも基本的には此方の防御を抜けないのだから、無問題よ』
『いや、なんか大剣創り始めているが……』
『何の手段かは知らないけど、威力がやばい気配がするわね』
『流石に不用心過ぎない?』
『いや、エネルギー反応がいきなり跳ね上がったのよ』
『……そんなに簡単に異常に威力ブースト出来て堪るか』
『素材その物は元のままだもの。エネルギーの強化度合いが異常なのだとしか思えないわ』
『……強化は入って来ているか?』
『来ないわ。素ステータスはそのままなのかもだし、強化値が此方を上回って無いのかも』
『なら自己強化してみてくれ』
『解ったわ……って相手のも威力が上がって来ているわよ?』
『相手のステータス依存の火力強化の何かだろうか?一先ず完成する前に破壊しといた方が無難だな。攻撃していくか』
『……駄目だな。生半可な威力では当たるだけで壊れていく』
『……威力上昇量やばくないか?逃げた方が良いか?』
『遠距離攻撃をこれが出来たら完成までの時間を与えるだけだ。壊さないと……』
『近場に生存反応は有るか?』
『こいつ以外は無いわね』
『なら火力をある程度なら出しても問題無いだろ?』
『此方の力依存でスペックの上がる物なら、最低限多分同格を壊し尽す威力出さないと壊せないわよ?粉々にしてもそもそも骨の粉が集まって出来ている物なのだし』
『敵が強ければ強い程強くなる武器……此方は人数が居るのだし、辺りに影響が行かない様に結界張って、その上で潰そう』
『過剰威力に成るか解らないし、軽く一当てして良いかしら?』
『そうしてくれ……で、どうだった?……十分威力ヤバイ物をぶつけているけども』
それに当たらなかった部分の余波で見える限り、大半は防がれた上で壁が五、六枚くらいは撃ち抜かれているが、それは殆どビクともしていない。
『通常の鉱石は同様の鉱石をぶつければ壊す事が出来るけど、エネルギーの強化値がだいぶでかいわね。全力でも何でもないとは言え、威力が足りないわ』
『電磁パルス避けの為とは言え、生体反応無しの場所で通路をわざわざ通る意味がアレに成る結果だが、生体反応?何で骨の粉に有る?なんかヤバイ事に既に成って無いか?』
『……貴方みたいな事に相手もしたのかもしれないわね。つまり、骨の化身みたいな物に相手も成ってしまって居るのかも』
『最悪だよ。これ以降遺骨とか遺灰とかどうすんだよ』
『今はそれよりもこの骨剣の処理よ』
『……さっきは結界が足りなかったのだから、もっと強い奴をやる必要が有るな』
『じゃあやるわよ』
そして攻撃が加えられていく。スピードは其処迄でもなく、威力が有る様には見えない攻撃を行うと骨剣が砕けてきている。
『何をやっているのかわかんねーな……』
『骨剣の骨の粉の結合部分を破壊して行って居るのよ。スペックゴリ押しだと後続の敵が居たらアレだもの。MP回復のタイミングを確保出来るか解らないのに大技連発してMP切れに成るなんて間抜けな展開にはしたくないもの』
『ぶっちゃけた話、倒せたとして敵が骨の化身の一部に成っているなら、どう裁くよ?遺灰も含むのだから、生半可な設備じゃ遺灰も残さず焼き尽くせないぞ……これ、現場判断で殺すのでもしないとかなり面倒に成る奴だろ?』
『結局は火力が有れば良いだけで、全回収して、全部燃やし尽くすのをすれば良いだけよ』
『……なぁ、その手法以外の方法も試すべきだと思うのだが。主に壊したくない系の物の化身に成られる可能性が今後もある訳だし』
『化身に成るのに、その何の化身に成るかの部分で普通なら量産品とか、出来る限り多い物の化身に成るべきなのよ。そうじゃないと化身系に成る利点が死ぬのよね……』
『ああ、汎用性を問題なく得られるのをわざわざ捨てて、その場においてのみ有効なのを創るとか、確かに後先考えるなら無いわな。人間の化身とかどうなる?』
『他にも盛るならともかく、それ単体なら人間の出来る事の延長線上の事しかできなく無いかしら?後、前提として相手側は強制使役が前提に有るのよね?なら完全に骨の化身との融合はしていないはず。そうしていたら多分骨の化身に飲み込まれて終わるものね。……だから、あくまでも外付けパーツでしかないわ。だから、要は骨の粉の状態でも生きられると言うだけであるはず。だからこれは骨の化身を倒すのではなく、化身系に寄生した奴の対処方法を行うわ。……化身の倒し方なんて私は広めたく無いもの。強制使役されているだけなら骨の化身側は交渉で何とか出来るかもしれないものね』
『仕方ないか。俺的には俺の倒し方を提示される様な物だが贅沢言っている場合じゃない』
『もう貴方とは私は融合しているわよ?』
『ごほっ、アレはそう言う意味かよ!?』
『惚気るのは後で他でやれ』
『すみません。でも、どうしましょうか。一先ずここの物を全回収すれば良いのですかね?』
『例えば他人に奪われた際の裏設定的なの有るとヤベー事に成るから、壊す方向で行くべき。まあ、フィクションならそんなものは無い。……で、済むのだろうが、そもそも今回は相手が設定を全開示しているわけじゃ無いからな』
『相当硬いですし、元が骨の粉の塊な以上は粉々にするだけでは意味が無いですよね?』
『命を粉一粒だけに全て込められてなければ何かしらの塊が有るはずで、塊の中には壊れたらヤバイ物も含まれているのかもしれん。ならそれさえ壊してしまえば良いはず』
『……要はスライムの核を壊せば勝ちみたいな話になりましたね』
『外付けパーツだけを壊せば良いと言うだけの話ならそうなるのも自然だが?』
『それはそうなのですが、イメージ上の格落ち感が凄いですね』
『言い換えればロボットを止める為にロボットの操縦者を狙い撃ちしようと言う話で、ロボットが格落ちした、と言う解釈か?そうなるのはロボット側の落ち度では無いと思うが』
『第一、骨の粉の大きい塊なんて有るのですかね?』
『それが無くとも、外付けパーツな以上は替えが効かないパーツは有るはずだ。それの替えを利かせたきゃ、融合出来てないとアレだろうし、それは前提として無理だろうから』
『つまり、攻撃を避ける部分を見付けられれば、それが外付けパーツですかね?』
『恐らくは。最初は全体的に攻撃をするのが無難だろうけど、防御無視とか簡単に出来れば良いのだが、ゲームならダメージ計算上防御力を考慮しないと言うだけで済むけど』
『なんか動き出したわよ。結界を壊しに掛かってきたわ』
『……骨粉の集合体なのだから、それは自由に動かせる。これは解る。……それで外側の粉だけ動かして刃がドリルに成る?そんなの有りかよ?』
『制御力と硬度がそのまま威力に直接繋がるのだから、かなり良い物だと思うわ……まあ、一瞬で突破されなかった以上、対処は簡単よね。私は一瞬で突破されても関係ないけど』
『打ち消し系をされたらやばく無いか?』
『そもそもメタ視点的にも召喚システム圏内全てをカバー可能なレベルの打ち消し能力なんて、システムの根本的な否定なのだから、成立するはず無いわよ』
『でも流石に相手の火力が弱いわよね……。強制使役な以上、火力が骨の化身自身に抑え込まれているのかしら?』
『なら、協力可能かもしれんから話し掛けて見ようか』
「骨の化身よ。此方は君を強制使役などしない、良待遇を約束出来るが、使役者を此方に差し出せられるか?」
『相手側が動作不良に成りだしたわ。使役者がそれを無理矢理抑え込もうとしているのでしょうけど、行動の威力減が発生する程度には拮抗しているなら、不可能では無いはず』
『使役者が無理矢理それを抑え込もうと前よりも力を多く振るい、結果此方にそいつらが分かり易い形で露呈する……と』
「じゃあそれを壊すと言う事で良いな?行くぞ」
その部分だけを狙い撃ちし、戦闘は終了した。……すると残りの骨の粉が女性を創った。
「救助を感謝させて貰います。私はフラワシ。ゾロアスター教に置ける下級神を名乗る者です。手加減していたのは伝わりました様で何よりですね」
「……例えば体内から刃が出た時に頭を狙えば一人はやれていただろうしね」
「ええ、そうですね。制御者に勝たれては此方も困りましたから、いい機会でしょう」
「しかしフラワシ……か。えげつないのを創りやがる」
「ええ、森羅万象に私は宿るのですし、基本的には世界全て壊されでもしないと死にませんし……力量不足でまだまだやれない事もある下級神ですけど、ね」
骨系ばかり使って来たのは骨を大量に食ってその部分だけ成長したからかね。奪った奴を大抵余すことなく使って来やがるな……。囮目的では無く、全部目的なパターンか。
「会話は聞こえていますので、悪しからず。情報は彼方には漏らしては居ませんけど、同じ性的快感を共に味わう事を性行為と呼ぶなら、私はひたすらにレ○プをされていますし、作り主に思うところは有ったので、そいつを倒そうとする奴を邪魔するなんて流石に……」
「……そういや、そうなるのか。と言うか、それだと世界のありとあらゆる拷問も受けているのでは?……調整は可能だろうけど……と言う事は味方と扱っても?」
「先の話はともかくとして、今回限りについては出来る限りは協力させて貰いますね」
しかし、何でもかんでも自分と言う定義にする系設定は業が深いな。効果が絶大過ぎてアレだが。大した理屈も考えずに全能故に最強とか、思う奴に対するメタ回答には成るか。しかし、強い個体に対して一度支配したら術者の介在しない支配系なんて、要は追加のエネルギーを術者側は追加しないと言う事だからな。その支配の力の出力さえ超えてしまえば支配からは抜けられる。そうで無ければそもそもの話として敵側の数ならもっと増やせたはずだ。支配能力の継続に術者が介在する必要が無いのに数制限が有るはず無い。
「……水の彼女を創ったのは貴方なのね?……その割には信頼されているようですが?」
「速い話、そうしたのが事故的な結果だと解るだけの物は有ったもの。即座に謝られたし」
「……そこまで言う必要あったか?」
「メリットだけに目を向けて創ったのは貴方も同じでしょう?と、言う話よ。まあ、その後に責任を取る感じにしてくれたので別に良いのだけど」
「……でも、なんか成り上がりのロマンに溢れた性能しているよな」
「同じモンスターでも強さは変わります。例えばスライムは強さが変わり過ぎますから、同じモンスター(内情のステータスが全然違う)とか倒して同じ奴倒せたと言えますか?後、人間一人殺すのを意図的にしなかっただけで自慢する私への皮肉ですか?」
「それは、ほら、二次創作に置ける只のゴリ押し撃破なんて、例えどんな存在でも倒せるから……後、それについては下級神と言っているだろ……」
「良いでしょう。今は急ぎましょうか。特筆すべき支配されている敵なんて居ませんけど」
「なんでそんな事に?」
「制御力がギリギリなレベルなのに増員の制御者が居ない時点で安定性よりも数を優先した事くらい解りますよね?そしてギリギリの数の制御者も減りました。なら制御キャパシティーなんて確実にもう足りなくなり始めますからね。ならもう後は容易いでしょうし」
其処に大量に色々な奴が来る。身構えるが、敵対されるどころか感謝されたな……。
「貴方方が倒した奴の支配下に有った者達は敵の支配下から外れました。つまり、この条件に於いては支配系能力持ちを一人倒すだけで、戦力比率が激変する訳です。ほら、もう後は容易いでしょう?」
少数精鋭にするのではなく、支配下の奴の数の多さを優先した結果がこれか……。其処で辺りが光り始める。……ヤバい。衝撃から身を守ろうとして、
「全員身を守れ。爆発が来る……ぞ?何処、此処?まさか異界にでも飛ばされたのか」
其処に居た全員が転移させられたか?中性的な風貌をした奴がいきなり顕れ、話し出す。
「最終決戦中に失礼。我が名はロプト。いや、召喚システムの作成者、と言う方が君らには分かり易いかな?」
「貴様が元凶か、死ね」
「やれやれ、相手に用意され渡された刃で相手を討てるのはそうなる可能性を相手が容認している場合だけだ。奪う場合は又別の話だが」
「……打ち消し系の力を当てたはずだが?」
「どんな力も打ち消せる力がもし本当に有るとして、なら何故それを発生させられて、制御できるのさ?其処に付け入る隙はあるのだよ、素人が」
攻撃を打ち込んだ奴が舌打ちをした所で再びロプトと名乗った奴は言う。
「さて、君らには大変迷惑を掛けたが、それは基本的には君らの自業自得なのは理解しているね?召喚システムを使えるようにしたとは言え、わたくしは君らに召喚システムを使う様に仕向けた覚えなんてないのだから」
「プレゼンテーションはしたくせに何を言っている?」
「もし仮にそうだとしても、使ったのは君らの選択の結果だ。重ねて言うが、わたくしは君らに強制はしていない」
「使わなきゃならなかっただけの奴だって居るだろうが。そう言うのは無視するのかよ」
「ならこう言おう。君ら人類の自業自得だと。麻薬に手を出した奴が居たから、仕方なかった?違うな。科学兵器で倒せる範疇の奴しか造られて無かっただろう?」
「それは違うだろうが」
「初期の怪獣は兵器だけで倒せたのに?」
「そうできない奴だって居たはずだ」
「現実可能かどうかはさておき、事実として初期はそう言う状態には成って居た。研究の結果良いのを作れる奴が居てもそれはまた別の話だ」
「ふざけるなよ、てめえ……」
「わたくしを批判する事が出来るのは此方の提供したシステムに一切頼らずまともにシステムの中を戦い抜いている者だけだ。で、なければ只の僻みであろう」
「システムを利用しているくせにシステムなど不要等とはほざくなって言うのか、くそが」
「さて、本題に移ろう。この状況はわたくしの本意では無い。簡単な話だ。城を得ようという時に目的の城を全部壊してどうすると言うのだ?」
「殲滅目的ではなく、物資等の略奪目的のシステムだから、システム上の物を全部ぶっ壊すのは都合が悪い……と……完全に手前の都合だな」
「だが、そちらにも悪くない提案では無いか?」
「ならもっと速く出てこいや。近場はもう更地だろうが」
「天変地異を起こされて広範囲が更地に……と言うのを戦闘毎に繰り返す事になりかねない訳だが?大義名分は防衛なのでは無いのか?」
「だからと直接的な原因では無いとしても、遠因の奴と手を組めと?」
「提案を蹴るのは自由だが、証拠を見せないとアレか。召喚された奴らの召喚文の提示でもしてやろうか?」
「提示出来ても、召喚者が此処に居る以上、只の本人に対する読心かも知れ無いだろう」
「だとしても、そう言う物を君らからサルベージ出来る立場なのは解るだろう?召喚文の写しはこれだ。受け取りな」
各自の下に紙が飛び、各自がそれの内容を確認する。マジかよ。でも何故、システム上効かないではなく、メタを提示してきたのか?それは出来ないか?要するに基盤は用意したとしても他は各自のロジックな訳だし、料理人が違う料理も価値的に同じ物ですなんて言うと叱られそうだしね。結局は相手が格上だから通じなかった?何の面白みもないな。それではこいつの行動理由に合致しない。全て実力云々が原因ならあんなにドヤ顔出来る状況じゃ無い。開示されているこいつの優れている点、それは召喚文の全把握。つまり。
「敵方に能力に原理上貴様の味方側の奴では攻略出来ない奴でも出て来ましたか?」
「そう言う事だ。倒せる奴の種族縛りをする系の奴が強い能力持ちに成ってしまって、な。それを汝らに用意して貰いたい訳だ。そいつの召喚文は開示しよう。端的に説明すると、そいつを倒せるのは特定の種族だけと言う設定にプラスしてその種族を種族の前提として支配下に置く設定がセットに成って居る。まあ、つまり、倒せる奴に成ろうとしたら全てそいつの手のひらの上に乗る必要が有る故に、新しい奴を創っても支配下にされるだけだ」
「その種族が倒せる奴の条件として成立する理由は?そのシステムが分からないと挑んでも無駄死にしか成ら無いだろう?」
「それはこの紙に書いてある。だから受け取れ。後、他の奴は当て嵌るが、自分には当て嵌りようも無い条件付けの能力ならそれを返されても問題無いし、幾らでも性能を盛れる」
そして詳細の書かれた紙を渡される。特定の奴(種族)じゃ無いと倒せないなんて、インド神話のラーヴァナの時点から存在している古典的設定では有る。能力的に支配下の奴がその限定対象とか、酷すぎるとしか言えないな。だが。今回のその能力の解釈は、言うなれば他の奴らの自分への能力的な挑戦権の掌握な様だ。つまり、能力の所有者を害する行動に出る事自体が例外以外に対して能力的に根本的に潰されて居るのだ。問題なのはその能力の基準。どうやって挑戦権を支配下に成らずとも手に入れるか、だ。ゲームで言う回避や解除するのが前提のギミックみたいな物だと考えればいい。言わばこれは特定の内容に限定された思考その物を潰す能力だ。なら攻撃その物に害意無しで有れば良いのなら、爆弾投げ?爆弾を投げる時点でそれは発動する。そうで無いと、そもそも能力としての体を成していない。それが有りなら遠距離攻撃系自体大抵素通りする事に成るし、一応殺害権の掌握では無いのだから、殺す事自体は可能ではある。挑戦権の掌握なのだから、自衛権は有る。つまり、防御系は通用する。となれば攻撃を誘い、此方の防御の力に当てて、自滅させれば良いが、それくらいなら相手も解るだろう。それに対応で専守防衛されればそれでは倒せなくなる。では相手が攻撃をせざるを得ない状況に追い込むか?他の奴らを全員倒してから挑む?それでは逃げられたらそれまでだ。支配系で無理矢理手勢を増やす輩な以上、強さを考慮しなければ部下はいくらでも替えが効く。部下を人質に、は、却下。反撃行動に意思が混ざる奴は無理だし。後……。
「挑むなら早くしろ。敵側は最悪逃げれば立て直しが効く」
「ええい、くそが。なら実際に戦いながら検証しないと駄目か。システム作成者権限は本当に召喚文の全把握だけか?戦わずに倒せないか?システムをそいつの周りだけ圏外にするとか、やりようあるはずだろ?」
「その場合、他に君らはわたくし側扱いにされるだろうが、よろしいか?」
「……くそが。だからこその協力の打診か。今の状況でも既に簡易的真偽判定ならそう取られてもおかしくないからな。なら報酬をよこせ。そうじゃないと割に合わない」
「では別枠システムの作成権限でも渡そうか?もっとも、受け取れば他からは完全にわたくし側扱いに成るだろうが」
言ってみる物だな。今となってはそれで起きるデメリットも受け取ろうが受け取ら無かろうがほぼ同じであろうから、ここで受け取らない手は無いだろう。召喚された奴らを守る上でも別枠システムが有れば他人の都合に左右されずに済むのだし。
「良いだろう。その提案、乗らせてもらおう」
そして力が俺に渡される。
「ようこそ。わたくしたちの領域に……さて、追加で召喚された奴が居る様だ。要は自分の周りの空間を通過する為に必ず一定時間以上掛かる様にすると言う物。スピード殺しか、まあ、まだ穴は有るが、システムを得た君にはそれよりももっと簡単な回答が有る。あくまでもシステムの上の能力でしかないのだからその土台自体ごと壊せ。それで攻撃は通る」
「……それなら倒せるじゃ無いか……つまり、最初から勧誘が目的か」
「そう言う事だ。頑張って来たまえ」
やっぱりまだ他にも有るじゃ無いか。噓が能力にばれなかった。つまり、能力の判定詐称をやりやがったのだ。まあ、仕組みを把握し尽していてもやれなくは無いが……。
「この力が偽物と言う事は無いだろうな?」
「意義的にそれだとわざわざ勧誘した意味が無いだろうが。それが本物で無ければ此方の骨折り損のくたびれ儲けでしかない。但し、あくまでもシステムの種の様な物だから、今直ぐ此方と同じ所業の域に成れる期待はするなよ。それの状況ならまだ他にも言い訳が付くだろう?システムで力を得たがあくまでもこれは自分で創った物だと。まあ他人に少し被る程度でパクリだとか言いたいなら、突き詰めると徹頭徹尾独自概念だけで話をそれなりに創ってから言えと言う感じだが、有望株に恩を売る営業みたいな物さ。じゃあ、転送する。まあ、頑張れや」
「待ちなさ、くそ、これじゃ駄目じゃないの。育成論の説明と方法を何も聞けてないじゃ無い。要は飼育方法を一切知らずに一発で動植物育てを成功しろと言う事よ、これは」
考えろ、単純に強い事だけが俺が奴に有望株扱いされていた基準なはずは無い。そう言えば奴はラティメリアを回収している疑惑があったな。仮に此方の有望株の認定が其処なら、それ関連の見られた原因は?俺は体内にまだ残っていた地脈エネルギーを件の貰った能力のエネルギーに混ぜる事にする。……よし。成功だ。要するに料理では無く、料理の具材が被るだけでパクリとか言われたら大抵の物は何を創ろうがパクリだと思うけども。
「最低限の制御だけなら今直ぐ何とか成りそうだ。ちょっと敵を倒してくる」
「もう使い方を掴んだのかよ⁈」
「俺が奴に有望株扱いされた理由から逆算した。まだシンプルにしか使えないが、十分だ」
「貴方が行くなら私が行かない意味が無いから私も行くわ」
「すまんな。じゃあ行こうか」
「待て、直接の害意を持たずになら絨毯爆撃くらいは可能だろ。そいつが居ると知らせず爆撃ポイントとして指定してくれれば良い。そして此方はそれを基地破壊としてやろう」
「……スピード殺しのせいで簡単には当たらないとは思うが、能力処理に過負荷を掛けられるだろうから、意味は無くは無いか。頼んだ。出来れば元素系の奴のみで頼む。此方は巻き込まれる前提にした方が良さそうだし」
「了解、なら此方も準備と行こう。最後に確認だが、小型太陽投入して良い?只の炎の塊をそう言って居るだけの奴じゃ無くて、ガチな奴。熱波で辺り一面埋めようと思うのだが」
それを承諾した後に敵の居る場所に突貫する。最早、口上など不要、と言うか、ドヤ顔のこいつを叩き切る。俺は能力の影響を無理矢理ねじ伏せながらそいつの場所に突き進む。能力を信頼しているなら、そもそもこの攻撃は通らないと思われて居るはずだ。ならこの最初の一撃こそ無防備な、こいつに攻撃をまともに叩き付けられる最大のチャンスに成る。システムをぶっ壊す卓袱台返しでは有るが、もし無敵化能力系が絶対と思って居るのなら、この初撃はその能力以外のまともな防御などされない。火力は関係無い。過剰な自信と言う名の致命的な油断を突く。只それだけの話。故に初撃で首を切り、決着は付いた。……うん。卓袱台返しが前提に有るとは言え、今後は無敵化能力、それ単体だけには頼らない様にしよう……。後、取り敢えず頭も両断しておくか。さて、後始末を始めよう。まあ、まだ他にも敵は居るけど、戦力差を覆せそうな能力はもう無さそうだしな。……キャパシティー限界ギリギリ迄支配系を使って来て居るなら、支配していた奴を開放して代わりに此方の奴を支配されるのが怖いが、能力上の扱いとしては既に支配していたのと同程度の奴達のみくらいじゃ無いと無理だろうしな。実力を無視してやれるなら下級神が相手側の最上級の奴に成りそうもないし。コスト内ならどんな奴でも他をしなくすれば使役可能のパターンは、数の差が更に酷く成るし、無いとして、システムを此方に渡したからシステム上の奴を消せる……訳は無いな。それならシステム上の全員を消して終了だ。それが出来るならああ言う主張はしないし、もしそれが出来るなら、不都合な奴は全消しで……済まないな。提供した以外の生命エネルギーが混ざる奴はシステム上の奴を消した所で残るはず。基盤がシステムのみに依存して居ないのだから。……じゃ無いとシステム上のシステム産では無い奴も含めて全員は既に命を手に握られていて、なのに世界を奪うのが目的?まさか。此方にシステムを使わせる事で何かしらの利点が有るのだろうが。システムを消しただけじゃ、もう殺せない奴がある程度出始めたから、勧誘したのか?もしこれが正しいなら、要するに既存生命との存在の融合はシステム仕様外な訳だが、デメリットとかが何が起きてもおかしくはないか。まあ、今の所は問題ないが……うん。今回の件が終わったら色々と研究だ。システムを作り上げてやる。絶対に。
「思っていたよりも簡単に倒したわね」
「こいつに直接的に向ける害意が潰れるだけだし、こいつの居る場所に対する害意は潰せない。要は、ターゲットを別の物にして、それの余波に巻き込めば良い。結果としてターゲットのみに効果を及ぼす系は当てられない訳だ。単品ならともかく部品としては十分優秀じゃないかな」
「そういうのも潰せる様にすれば良いのではないかしら?」
「……それを言い出したら、個人でしか戦えないぞ。味方側の行動もかなり制限しそうだしな……まあ、工夫はしようは有るだろうが、今は後始末が先だ。じゃあ戻ろうか」
「そうね。……まあ、戦力差を覆せる系の能力持ち以外は個体の強さとしては前提条件的に下級神以下しか居ない訳だけど」
「その一部の例外が怖いと言う話だが、手早く済まそう。行くぞ」
「相手の立場的には、支配系能力で相手が此方との戦力差を埋めようとした結果、それが原因で負けるのだから、皮肉な話ね。彼方にも襲撃は有った様だけど、簡単に終わったわ」
「支配系能力にも利点が無い訳じゃ無いけど、そう言う能力無しで同格以上の勢力が敵に居る場合、戦力を崩される原因に成る根本的な要素に成るのは痛いからな。格上なら普通に支配能力解いて来そうだし……話は終わりだ。行くぞ」
そして後の奴らは簡単に制圧した。まあ、要は支配下に置く奴らがかなりの割合で大量離反された様な物なのだから、これで相手が勝てるならそもそも質より量なんて作戦は取るはずも無いのだし、前提条件の違う強さの前提条件を無視して比べても仕方ないけれど。
さて、瓦礫類の撤去に整地と衛星写真等を基にした建物の再建、それが終われば所有権の客観的証明が可能な家具類の修復と返却。ついでに誰のか解らない貨幣類の扱いは復興費用に寄付された扱いにして、それで支給物資を買い、供給し、還元。正確に記録の取られている銀行や通帳が有る奴はまた別の話だが、細々としたお金迄正確に再分配しろとか詐欺入りそうなので、こう成る。元々は何も帰って来ないはずのお金だ。文句を言う場合は支給品側の受け取りをさせないとしたら大抵の人は黙った。理由としては銀行に入れていたお金に影響は無いし、黙らない一部の奴の大抵の理由は家財道具が戻らない為、要は自宅に金品を大量に置いていたお金持ちが一番損害を受ける形に成って居る為だ。つまり、此処で問題なのは基本的には一部の大金持ちだ。家財に何らかの保険を掛けている奴や法人等の購入の領収書の纏めを持つ場合等の幾つかの場合は、それが客観的証拠に成るので、それを修復しろと言うのも詐欺では無いとしても良いのでは無いだろうか。その為、一番損害を最終的に受けるのは保険に大金持ちなのに保険に加入するのをケチった奴な訳だが、国側が何の対策もしていなかったはずも無いけど、高額取引か何かで大金の運搬中とかの奴はご愁傷様ですとしか言えないな。
そしてやるべき事が山積みの日々はこれからも続いて行く。力を貰えたのはその意図的に此方に都合が良いだけとは思えないけれど。
召喚システムが変える日常【改稿版】 @azeru1000
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