第3話 エルフの耳には触らないでください!

「お、俺がウィザード・エンペラー!?」

訳せば、天気の王だよな。天気を操るとか…。

かっこよくね!?てか、転生しかのか!?異世界だよな!やった?!

1人で盛り上がっていると、コホンっとフィーネが睨んでいる。

「候様は、まだ力を手に入れてはいません。」

そんな風に釘を刺されたところで、城が見えた。

「うーわっ」

こんなデカかったのか。こいつの家。そうだよな、エルフの王の娘だもんな。

「なにをいまさら驚いているのですか、さぁ、中に入りますよ。」

中に入ってもシャンデリアや大きな鏡に圧倒され、奥の扉には一人のエルフの爺さんが立っていた。

「お帰りなさいませ、お嬢様、そして人間」

「こわ、じぃや、人間とは無礼ですよ、これでも天から舞い降りた神なのですから。」

「しかし、お嬢様、どう考えても…。」

そう渋った爺さんにフィーネが怒る。

「ごめんなさい、候様。この世界の者は人間を敵視するくせでして。」

そう、誤ったフィーネにいいや、なんの能力も持ってないのは事実だしと、苦笑いした。

それよりも、この世界の事の情報が足りない。

8つの層に分かれてできているウィザード・ホーム。

ここが天空にある世界の大陸の1つで、地上には宙に浮いてるため、飛ぶという手段が先決。

しかし、一番上の層は太陽に最も近く人間の俺は死んでしまうほどの暑さ。

一番下の層の魔女?が住んでいる層は、他の種族とは交流がなく、よくわからない。そして、極めつけは、たぶんエルフに限らず、どの種族も人間を下等生物のように思っているような感じ。

転生したのはいいけど、能力なしの真人間がこの先どうすればいいんだ。

本当はもっと、なんか能力持ってて、かっこよく崇めたてられるような感じがよかったんだけどな…。

「まぁ、色がまだ見えるだけいいか。」

そう呟いた俺は、また離れの部屋に閉じ込められていた。


「じぃや、この方は人間です。なにも危険なんかございません。」

「いいえ、旦那様からの申付けです。いくらお嬢様の頼みでも、彼をここから出すことはできません。」

「彼は、まだこの世界に召喚されたばかり、情報も少なく、混乱しておられます。」

「お嬢様もお部屋にお戻りください。このように出入りされているのが旦那様にバレれば、私らもお嬢様もどうなるかわかりません。久しぶりの来客でお話相手が出き、嬉しいのは分かりますが、どうか…。」

そんなやりとりを壁越しに聞いた。

箱入り娘か。最初のミッションは。

俺は、昔からゲームが得意。そして、目からの情報が昔から少なかったのか、他の五感は少し優れていた。

俺は、今できる事を考えた。

「そうだ、マナに呼びかければいい。助けてくれたフィーネを助けたい。」

マナはどこにでもいる存在、事によっては味方になってくれるかも。

その前に爺さんをどうにかしないと。

「ん?でも声は隣からか。静かになった所を見れば、フィーネが折れたな。」

試しに壁をコンコンとノックしてみた。

そうすると、コンコンコンと3回返ってきた。

無事のようだ。

この部屋には、机に椅子、ベット。殺風景なものだ。

机には、引き出しがあった。開けてみると。

「なんだこれ。」

手帳とペン。裏には名前がない。

(私にあった事はすべて事実。私は牢獄に閉じ込められ、女王になった。地から天に昇りつめた。しかし、また追放され、牢獄送りになった。これは、娘に託したころには、私はこの世にはいないだろう。神よこの世界を、壊してくれ。)

これはだれの字だ。そして娘に託す。フィーネの母親か?

この後のけページは読めなくなっていた。多分、内容だろう。

そして一番最後のページには、血のようの物が跳ねて、かき消されていた。

「それは、フィーネ様のお母様の手帳でございます。最後はこの部屋でお亡くなりになられました。」

そう言って、立っていたのは爺さんだった。

「どうゆうことだ。どうしてフィーネにこれを渡さない。それにこの字は俺にも読める。なぜ、人間の字なんだ。」

「それは、あなたと同じ、召喚された人間だったからです。」

「人間!?どうゆうことだ。」

「そのままの意味です。1500年前召喚され、当時のツユカ様はお美しく今のあなたより若かった。当時は私もまだ若く、見守ることしかできず、初めての人間だったことで、すぐさま、能力を持っていないと判断され、牢獄に入れられた。」

「理不尽だな。」

そう言った俺に、少し涙を浮かべながらもその人がどれだけすごいかを話してくれた。

「爺さんは、俺の味方なのか?それとも、牢獄に送るのか?」

「いいえ、どちらでもございません。旦那様には私は逆らえません。」

「なぜ、そこまでの忠誠心を?」

「それは…。もともと別の種族だからと迫害されていた私を助けていただいたのは今の旦那様、国王様だからです。私は道に迷う途中で会談を降りました。そしたらあの森の湖に行きつき、幼き国王様に拾われたのです。」

よくある話だな。と思いながらもゲーム慣れした俺はこの後の言葉もわかっていた。

「どうか、私の代わりにお嬢様をお救いください。残りの寿命が…。」

「なるほどな、エルフと人間の子は、純粋なエルフの子供よりも生きられないと。」

箱入りになるわけだな。国王もそれを知っているのか。

「本人は知っているのか?」

「知りません。ツユカ様のことも遠い昔に死んだと。」

まあ、本人が聞けば、気の毒か。

「じゃ、俺がなんとかしますか。フィーネちゃん可愛いし。」

胸もなかなか…。

「本当ですか、しかし不死の薬をといいますと…。」

「第7層、雨の多い森林か、その中から薬草とか?」

「いいえ、最深部にあります、洞窟にわずかな昆虫の液体、それに緑色の花が必要でございます。しかし、最深部までは遠く、魔女似合う確率も…。」

なるほど、魔女を恐れて、だれも近づかないわけな。

「爺さん、俺、行ってくるよ。その花と昆虫探し。」

「しかし、魔女に合えばなにされるか…」

「大丈夫、どうにかする。」

そのためには、条件が必要だな。

「国王とも、話がしたい。娘のためなら俺の自由をどうにかしてくれ。」

「わかりました。明日お話できるよう説得いたします。」

「ありがと、じいさん。にしても俺殺されないだろうか。」

「行動に謹んでいただければ大丈夫かと思われますが、保証しかけます。」

まじか~。最後かもしれねぇ、あの大きなおっぱい拝んどくか。

「フィーネには会えないか?今」

「少しだけですよ」

そう言って、了承してくれた。

女の子の部屋は初めてだな。緊張する。

コンコン

「はい、どなた?」

「俺、候、少し話がしたい。」

どうぞ、そう開けて入った部屋は、白を基調をした部屋で女の子らしい部屋だった。

すげー、テンプレ通りだな。そして、いい匂いが…

「候様、また鼻の下が伸びていますよ。」

「こ、これは嬉しくて…」

「まったく、それで話とは。」

「君を助けにまず、国王に会ってみようと思う。それから、第7層に行く。」

「なぜ、突然」

「君に助けられた、だから、俺の番だ」

「候様、しかし、国王に会うのは。」

「危険だっていうんだろ。大丈夫。君を必ずここから出してやる。」

そう言った、俺に涙を浮かべながら、コクンと頷いてくれた。

そして耳元で

「自由になったら、また俺にいろいろ教えてね。」

そう言った俺に、真っ赤になりながら、耳を抑えてぺたんと力が抜けたように座ってしまった。


「エルフの耳は性感帯に近いものなんですぅ…。弱いのでささやかないで…。」

この姿にすぐに俺の息子が反応したのは言うまでもない。


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