第24話幸せで順調な日々が

 オレは自由を手にして、北の名門キタエル剣士学園に入学。

 お姫様のマリエルと、猫獣人の少女ミーケ、三人で同居しながらパーティーを組む。


 ◇


 そんなオレのキタエルでの生活は、今のところは平和。

 オレが二ヶ月間の個人練習に通っていた時も、三人で順調だった。


「マリエル、朝だよ……起きて」


「むにゃ……むにゃ……ハリトさまぁ? あっ、これは失礼しました!」


 相変わらずマリエルと一緒のシングルベッドで、オレは寝ている。

 彼女の抱きつきクセは、前よりもかなり凄くなっていた。


 前に館の女主人イザベーラさんに、もう少し大きなベッドを頼んでみたこともある。


 でも『あら? ハリト殿、なぜ、うちのマリエルを“大人の女”にしてあげないの? もう少し官能的なベッドにした方がいいかしら? それとも、女の身体の扱いについて、私がハリト殿に、教えてあげた方がいいかしら、この熟した身体で?』と密着で言われてしまった。


 だからベッドの問題に関しては、諦めることに。

 肌面積が多いマリエルのネグリジェに、ドキドキしながらの毎晩と朝と過ごしていた。




「ハリトたん、おはようニャー♪」


 あと同じ部屋で寝泊まりしている、ミーケも元気にしている。

 基本的に彼女は屋敷内では猫型。


「おはよう、ミーケ……って、人型? それに裸⁉」


「あっ、これは月に何回からある猫獣人の“発情期”ニャン! 気にしないでニャン!」


 でも、たまに人型になって、オレたちのベッドに入り込んでいた。

 かなり狭いからオレが真ん中になって、サンドイッチ状態。


 マリエルとミーケは細いから、なんとかギリギリ寝れる。

 けど、やっぱりシングルベッドに三人は狭い。


 寝ているオレの上に、必ずどっちかが乗っかり、寝ぼけて抱きついてくる。

 ネグリジェの透き通るような半裸と、褐色の元気な全裸のどちらかが。


 とにかく睡眠不足にならないよう、オレは心を落ち着かせて夜を過ごしていた。



「よ、よし、そろそろ、時間だし、校舎に出発しよう!」


「はい!」


「わかったニャー」


 そういえば、ここ二ヶ月で大きく変わったことがある。

 猫獣人のミーケが、キタエル剣士学園に転入したのだ。


 これは一ヶ月ほど前に、オレから『強くなるためだったら、せっかくだから転入試験に、挑戦してみたら?』と、ミーケに提案したのだ。


「頑張るニャン!」


 結果としてミーケは試験に、一発合格。

 オレとマリエルと同じクラスに、彼女も転入してきたのだ。


 ちなみに学園内では彼女は、常に人型で生活。


 もちろん制服も、ちゃんと着ている。

 でも制服を着崩して、ちょっと肌の露出が多いけど


「みんな、おはようーニャン!」


「あっ、ミーケだ! おはよう!」


「ミーケちゃん、おはよう! 今日も耳を触らせてちょうだい♪」


 そんなミーケは、この一ヶ月でクラス内に、すっかり馴染んでいた。


 彼女の持ち前の明るさと、小動物的な可愛らしい容姿。


 あと身体能力が高い、剣士として実力。


 多くの魅力で、クラス内でも人気者になっていたのだ。


 これにはオレもひと安心。

 何故なら猫獣人族というのは、珍しい種族。


 場所によっては差別されることある。

 だが、このクラスの人たちは、それほど差別的ではない。


 互いにライバルではあるが、最近では仲間意識も芽生えてきた。

 過酷な訓練の授業を共に乗り越えて、クラス内が団結してきたのだ。


『それにしてもマリエル王女に続き、猫獣人の姫まで陥落させるとは……さすがはハリトの奴だな……』


『そうだな。しかも最近は急に強くなってきて、天には二物を与えるものだな、イケメンには……』


『ああ、だな。さすが“魔道具クラッシャー”ハリトだな……』


 うっ……なんか、クラスの男子も変な感じで、オレに好感をもってくれている。


 悪意はないから嬉しいんだけど、その“魔道具クラッシャー”という二つ名は、そろそろ忘れて欲しい。


 まぁ、でもクラス内でもオレたち三人は順調。

 本当に良かった。


 あと週末の三人での特訓も、順調にしていた。


 基本的には土曜日は三人で、魔の森で実戦稽古。


 日曜日はオレが一人、ソロで森の奥へ大型の魔物狩りへ。


 マリエルとミーケは森の中盤で、二人で魔物狩りを。


 各自の強さのレベルに合わせて、鍛錬している感じだ。


 おかげでオレたち三人は、メキメキと実力をつけている。


 クラス内でも上位の強さに入る三人になってきた。


 ◇


「みなさん、おしゃべりもそこまで。午前の授業を始めます」


 あとカテリーナ先生も元気にしている。


 いつも白衣姿と知的なメガネで、真面目なクール雰囲気。

 オレたちに生徒に、剣士としの技術と心得を、丁寧に教えてくれる。


「……ハリト君。放課後、私の部屋に来てください。話したいことがあります」


「えっ、話ですか? はい」


 先生はたまにオレのことを呼びだす。

 今日はいったい何だろう?


「とりあえず下着裸になってください、ハリト君」


「えっ……下着姿に⁉ ど、どうしてですか?」


「まずはハリト君の会得した超希少な『雷系統の剣術技』について、全身を触診して調査します」


「えっ……また、あの密着した触診をですか……?」


 とにかく個室のカテリーナ先生は、別人のようにエロスに溢れている。

 本人は研究者として真面目だから、なおさら大変だ。


「この後はハリト君が、ここ最近、急激に強くなった理由を、触診で調べます」


「さ、更に、また触診を……?」


 オレも自分の謎の力について、少しでも知りたい。

 だから頑張ってエロスな触診に、耐えている


「次は……天然物扱いにもなっている猫獣人族。その王女ミーケさんとの性行為の痕跡がないか、触診でしらべます。学会発表用に、よろしいですよね?」


「い、いえ、さすがに、それは……ごめんなさいです!」


 でも下半身のだけは、まずい。

 毎回、服を着て遠慮している。


「ふう……仕方がないですね。それではハリト君の方で、マリエルさんと、ミーケさんとの性関係についてレポートを提出してください。もちろんレポートなので詳細に」


「ご、ごめんなさい! 失礼します!」


 とにかく個室のカテリーナ先生には、オレは振り回されっぱなし。


 でも普段は親身になってくれるから、本当はいい先生だ。


 上手く付き合っていこう。




「ん? クンクン……ハリトたんの全身から、カテリーナ先生のフェロモンの匂いがするニャン! しかも下半身もだニャン!」


「えっ……ハ、ハリト……様。詳しく話を聞いても、よろしいでしょうか?」


「い、いや、マリエル……これは、その……」


 こんな感じでバタバタしながら、オレの学園生活は順調だった。


 ◇


 気が付くと入学してから六ケ月、半年の月日が経っていた。


 そんな順調で平和な、ある日の朝のことだった。


「なぁ、ハリト。知ってるか? 隣のクラスに今日、転入生が来るらしいぞ!」


「えっ、転入生?」


 クラスの男子から、そんな話を聞く。


「そう。かなり美人で、剣も凄いらしいぞ。この時期に、ヤバいよなー」


 隣のクラスと、うちのクラスとは、あまり仲良くない。

 クラス対抗戦とかあるので、ライバル関係が強すぎるのだ。


「強者か……それは気になるね……」


 でも、強い剣士と聞いて、オレは心が踊る。


 どんな型の剣技を使うのだろうか?


 一人前の剣士を目指す者として、オレはどうしても気になるのだ。


 今度、こっそり見に行こうかな。


 ――――そう、思っていた時だ。


「入るわよ!」


 なんと噂の転入生が、オレたちの教室にやってきたのだ。


 明らかに強気なその少女の顔を見て、オレは心臓が止まりかける。


「ここに“ハリト”って、豚のような生徒がいるんでしょ! どこにいるのよ⁉ 出てきなさい、ハリト! いるのは分かっているのよ!」


 何故なら怒鳴りこんできたのは、顔見知りの金髪の女剣士。


「え……エルザ……?」


 オレの幼馴染である『聖女』エルザだったのだ。

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