第19話魔物退治

 オレは自由を手にして、北の名門キタエル剣士学園に入学。

 お姫様マリエルと同居を開始。魔の森に実戦式の特訓にきた。


 ◇


 森の浅いところで、魔物の群れを発見。

 武装した五匹の子鬼ゴブリンだ。


「よし、マリエル。攻撃の前に、最終確認しよう。作戦は浮かんだ?」


「はい、まずは私の剣術技……風系の斬撃で先制攻撃をしかけます。その後は、攻撃力が高いハリト様が追撃を。この策でどうでしょうか?」


「良案だね」


 前回の襲撃では、マリエルは風系の剣術技を使用してきた。

 おそらく得意な分野なのであろう。


 風系は先制攻撃にも向いているので、理にかなった作戦だ。


「よし、その作戦でいこう」


「はい」


 いよいよ戦闘開始。


「ふう……」


 マリエルは剣を構え集中。

 体内の魔力を高めていく。


「それではハリト様、参ります! 『風の斬撃よ、彼方の敵を斬り裂け!』……剣術技【第二階位】二の型……【飛風斬ひふうざん】!」

 」


 詠唱を終えて、マリエルは斬撃を繰り出す。

 鋭い風の斬撃が、剣から発射。

 子鬼ゴブリンに直撃する。


 ザッ、ゴォオオオオ!


 着弾と同時に、風の衝撃波が発生。

 凄まじい爆音と風の波が、こちらまで伝わってくる。


 今の攻撃で二匹の子鬼ゴブリンを仕留めた。


「ナイス、マリエル! よし、次はオレの番だ!」


 相手は混乱している。

 オレはすぐさま追撃に移る。


 茂みから飛び出して、混乱している三匹の子鬼ゴブリンの中に、突撃していく。


「ふう……」


 オレは駆けならが、深く息を吐き出す。

 腰だめに剣を構える。


「今回こそは、成功させるぞ……」


 意識を集中して、魔力を高めていく。

 魔力による高揚感が、全身にみなぎる。


 よし――――今ならいけるかもしれない。


 マリエルとの戦いの後に、頭の中に浮かんできた言葉一つ。

 剣術技を詠唱する。


「『春雷よ、敵を斬り裂け』 ……剣術技【第一階位】一の型……いくぞ【雷斬ライ・ザン】!」


 無事に発動できた。

 オレの右の手から光の筋、雷撃をまとった斬撃が繰り出される。


 ゴォオオオオオ、ザァアアン!


 次の瞬間、子鬼ゴブリンたちが吹き飛んでいく。

 オレの新しい技が成功したのだ。


「よし!」


 油断せずに周囲を確認。

 今のところ他の魔物はいなそうだ。


「お見事です、ハリト様!」


「マリエルも先制攻撃、凄かったね!」


 二人で合流して、子鬼ゴブリンが他にいない再確認していく。


 どうやら本当にいなそうだ。

 後は魔物退治の事後処理をする。


「ハリト様。魔物は倒せましたが、この後はどうすればよろしいのでしょうか?」


「そうだね。まずは子鬼ゴブリンの死体の後に、“魔石”があるはずだから、回収しておこう。授業でも教えてもらった感じで」


“魔石”は魔物や魔獣の体内にある器官。

 死後は結晶化して、小さな石となって跡に残る。


 街の魔法専門店にいけば、魔物の強さによって換金できるのだ。


「そうでしたね。ですが、この状況では……?」


 マリエルが心配するのも無理はない。

 五匹の子鬼ゴブリンは、跡形もなく吹き飛んでいた。


 オレたちの攻撃がオーバーキルすぎたのだ。

 小さな魔石を探すのは困難そう。


「でも、大丈夫。こんな時も【探知・魔】を使えば大丈夫だよ」


「なるほど、そういうことでしたか。では、さっそく……」


【探知・魔】は近距離なら、魔石も探知可能な技。

 マリエルは発動して探す。


「あっ、ありました、ハリト様!


 そして地面の下から魔石を発見。

 周囲を警戒しながら、二人で回収していく。


 よし、全部で五個あった。

 これ子鬼ゴブリン討伐は完了だ。


「次はどうしますか、ハリト様?」


「そうだね。まだ時間も有るから、次の魔物を探してみようか。まだいけるマリエル?」


「はい、私は大丈夫です。それでは、また探知で魔物を探してみます」


 マリエルは【探知・魔】を詠唱して、再び発動。

 今度は先ほどよりも、少しだけ広範囲。

 次の魔物を索敵している。


「ん? 反応がありました。でも、この反応は? 先ほどと違う感じです?」


 マリエルは眉をひそめる。

 一体の魔物は発見。


 だが“魔物とは違う反応”が、その近くにいるという。


「違う反応? じゃあ、オレも調べてみるね」


 オレも意識を集中して【探知・魔】を発動。


 でもさっきよりも少しだけ、魔力を弱めて。

 またキタエルの街までいかないように。


(おっ、いた。これか……)


 オレも発見した。

 一つ目は魔物の反応。

 先ほどの子鬼ゴブリンよりも、かなり大きな反応魔物だ。


(あと、こっち反応は……あれ、これは?)


 マリエルの言っていたように、もう一つは違った。


(これは人か……それも剣士の?)


 もう一つは人を現す反応だった。

 授業でも習ったもの。


(それに、この相手の魔物の大きさ……これはマズイな……)


【探知】によると対峙している魔物は、かなり強力な部類。

 オレの全身が警戒音を発している。


「ハリト様……どうしましょう?」


 マリエルは不安そうな顔だった。

 おそらく彼女も感じているのであろう。


 オレたち新入生には太刀打ちできない魔物がいる、危険な状況だと。



「よし……行こう、マリエル!」


「えっ、ハリト様……」


「大丈夫だ、オレに任せて。この人を助けよう!」


「はい、ハリト様! お供します!」


 こうしてオレたちは魔の森に迷い込んだ人を、助けて向かうのであった。

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