第253話 ライバルの新技
「今から君に教えるのは『
「ぴゅい」
北将武神流「裏」を構成する内の一つ、外の型『将の鎧』。その発展版である『
とはいえ、言うは易し行うは難しだ。そもそもが魔力を実体化するだけでかなり高度な魔力操作を要求されるし、加えてこれを維持するのにも相当な魔力量と忍耐力が必要とされる。その上で攻撃を相殺するのに最適な【衝撃】の魔力を練り上げるわけだから、いくら魔法に長けた神獣とはいってもこれを会得するのは並大抵の努力では足りないだろう。
だが、リンちゃんは天才だ(親馬鹿)。竜種の王者である
「リンちゃんは今のままでも充分以上に厚い装甲を持っているけど、これが使えるようになったら向かうところ敵無しになるぞ」
竜種の鱗は硬い。生半可な攻撃では貫通はおろか、傷一つつけることさえ難しい。その上から更に追加装甲が加わるとなれば、もう空飛ぶ重戦車とでも表現すべき変態重装甲が生まれるわけだ。
強烈な【衝撃】ビーム砲を搭載した、高速で自在に空を駆け巡る戦車。俺が敵なら絶対に戦いたくない相手だ。しかも神獣らしく『
「俺も空は飛べるけど、やっぱり空戦ではリンちゃんには敵わないからね。リンちゃんの防御力が上がったら更に選択肢と安心度が増すよ」
機動性だけを考えれば俺もリンちゃんと互角と言えなくもないのだが、最高速度では当然のように負けるし、たとえごく僅かとはいえ飛行に魔力と意識のリソースを割かなくてはいけない分、やはり生まれながらにして空を飛べる種族である
だからリンちゃんが空から、俺が地上からという感じで連携して敵を攻撃すれば、更に俺達は強くなれるという寸法である。
「そのうち『分身』とかも覚えさせたいな……」
事実上無制限の魔力量を活かして、無限増殖するドラゴン。想像してみると、なんだかバグったゲームの敵キャラみたいで嫌だな……。やっぱり『分身』を覚えさせる路線は無しかな。
「さあ、じゃあ練習を始めようか。まずは見本を見せるよ」
「ぴゅいっ!」
こうして一人と一体の、常識外れのじゃれあいが繰り広げられることとなる。
✳︎
「あら、エーベルハルトじゃない」
「うん?」
リンちゃんに魔法を教えていると、俺の名を呼ぶ声がした。見れば、我が家と同じ辺境伯家で、「東将」の役職を陛下より任されているフーバー家が誇る才女こと、エレオノーラがいた。
「エレオノーラか。久しぶりだな。元気?」
「わたしは元気よ。あんたも元気そうね。……今日は修行? それともじゃれあいかしら」
「両方を兼ねているつもりだ」
「そう。私の
確かに燃え盛る炎の精霊に触れようものなら、火傷どころか腕が焼失しかねないものな。なるほど、それは少し寂しいような気もする。
「……なんて、思っていた時期が私にもありました」
「何? ってことは触れ合える手段を見つけたんだ?」
「ふふふ……驚きなさい」
不敵な笑みを浮かべてドヤ街でもったいぶるエレオノーラ。言いたくて仕方がないのだろう。仕方がないので付き合ってやることにする。
「(ゴク……ッ)」
「いくわよ
「な、シャーマン?」
――――ゴオオォォッ……! という轟音を上げながら、灼熱の業火とともにエレオノーラの契約神獣、
「同じ魔力の波長を持つ者同士だからこそできる、一寸のズレも起こさない完全なシンクロ……。混ざり合った魔力のすべてを思うままに使うことができて、しかもその魔力の操作性は神獣並み。見なさい、エーベルハルト。これが私と
「なっ……かっこいい……!」
契約神獣との完全なる融合だって? なんだそのアニメや漫画に出てきそうな超絶燃える展開は! かっこいい。かっこよすぎる! クソ、悔しくて涙が出てくる……ッ!
「熱くて触れないから、どうにかして触れ合いたいという純粋な想いが結実した姿。それがこの『
「最初のほうの台詞は余計よ!」
まったくもう、感動が台無しである。
(※ エレオノーラの実家フーバー辺境伯家が「西将」になっていたので、「東将」に修正しました。2022/1/24)
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