第116話 修行仲間1
エミリアの自己紹介が終わって、皆の視線は次の者へと移る。次はかなりガタイのいい十代後半と思しき青年だった。
「ギルベルト・ハーゲンドルフだ。歳は16。実家はそこのシュタインフェルトと同じく士族で、三代前よりツヴァイク子爵家にお仕えしている。得意な魔法は『身体強化』だ。幼少の頃より騎士剣術と格闘技を叩き込まれているから、近接戦闘には自信がある。自己紹介は以上だ。よろしく頼む」
拍手が起こる。それにしても16歳か。ここまで12、13歳の自己紹介が続いていたから、かなり年上に感じるな。身長も180以上はあるし、筋肉も立派でがっしりした体格だ。相当鍛えられているのが伝わってくる。真面目そうな人だ。
「ヘムルート・ゲルトナー、14歳です。出身は港湾商業都市ハーフェンで、商会の息子のくせに何故か経理ではなく魔法の方が得意なのでここに呼ばれました。僕はデスクワークの方が好きなんですけどね……。得意な魔法は無属性の鑑定魔法です。なので戦闘よりも斥候とか調査任務の方が向いてると思います。買い物の時は目利きが利くと思うので、もしよかったらいつか一緒に買い物にでも出掛けましょう。よろしくお願いします」
ヘムルート君か。俺よりも二つ年上のようだが、パッと見では同い年か年下にしか見えないな。線も細いし、これで本当に戦えるのか疑わしいくらいだ。とはいえ、危険度の高い魔の森を踏破して無事ここにいるくらいだから、見かけによらずそれなりの実力は備えているのだろう。得意だという鑑定魔法がどう戦闘に活きてくるのか、見てみるのが楽しみだ。
「わたくし、クラウディア・カレンベルクと申します。出身は古都クレモナ、15歳です。得意魔法は主に水属性と土属性で、その中でも特に 『
次のクラウディアさんは15歳か。とても礼儀正しくてお淑やかそうな人だ。出身である古都クレモナは古代魔法文明発祥の地とも言われており、皇都以上に歴史ある由緒正しい街だ。上品な人が多いと聞くが、クラウディアさんもその例にもれないようだ。どことなく京都に近いものを感じるが、実際はどうなんだろうか? いつか行ってみたい街の一つである。
クラウディアさん本人に関しても『
「レオン・ホフマイスター。17歳だ。実家は最北の街ハーゲンで鍛冶屋をやってる。得意な魔法は鋼属性魔法だ。あと鍛治も見習い程度の簡単な仕事ならできるから、もし皆が武器の手入れをしたくなったら気軽に言ってくれ。俺でよければ見させてもらう」
次のレオン君もまた、最初のギルベルト君のようにがっしりとした体格の持ち主だ。17歳ということもあり、この中ではおそらく最年長に近いだろう。出身地である最北の街ハーゲンは、皇国の北側と南側にいくつか存在する港町の内、北側にある方の名前である。ハイラント皇国はドイツとフランスとイタリアとベネルクス三国にスイスを足したような規模の国土を有しているので、国土の南北両方に港を持っているのだ。
ちなみにハーゲンはドワーフ達の国とも距離的にかなり近いため、皇国の中では皇都と同じくらい鍛治が盛んらしい。皆の武器の手入れをしてくれるというあたり、頼りになる兄貴分的な雰囲気を感じるな。
「おれはマルクス・コルネリウス。12歳。大迷宮の近くのフォーレって村から来た。ここに来る前は地元で盗賊職の冒険者をやってたけど、おれ自身はあんまり強くないんだ。ここに来れたのだって、罠を張ったり木の上で寝たりしてコソコソ隠れながら魔物の目をかいくぐってきただけなんだ。だからあんまり期待しないでくれると助かるかな。とりあえずよろしく」
マルクス君は12歳という割には少し背が低いようで、同い年というよりはやや年下にも見える。魔力もあまり感じないし、本人自身の強さも感じられない。ぶっちゃけ強さだけならこの中でも最弱に思えるが、それでも魔の森をこうして無事に踏破できているということは、それだけ盗賊職としてのスキルに秀でているということだろう。言ってみれば忍者だ。一体どんな罠を駆使するのか、是非見てみたいものだ。
「ナぢ、……ナ、ナディア・ランゲンバッハ、12歳ですっ。南都マルスバーグから来ました。種族は
……ね、ネコミミきたあああああ! ナディアさんというのか。今までケモミミ獣人族を目にすること自体はあったが、親しくなる機会は無かった。多民族が暮らすハイラント皇国とはいえ、やはり多数派を占めるのは俺のような
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