第24話 冒険者ランク昇格と、新しい依頼
次の日、午前の
「エーベルハルト様、少しよろしいですか?」
「あ、冒険者として活動してる時は俺のことはハルでいいよ。様もつけないでいいから」
万が一、その辺の冒険者達に身分がバレようものなら、これからの冒険者生活はやりにくいことこの上ないものになってしまうだろう。「貴族の道楽」なんて言われて白い目で見られるに決まっている。まあ実際その通りなんだが。
「わ、わかりました……う、わかったわ。ハル君」
「うん、どうしたの?」
敬語も辞めてもらえるよう視線で訴えかけると、ようやく気まずそうにしながら受付嬢がタメ口になる。
「昨日、ゴブリンの群れを討伐したでしょう?」
「したね。まずかった?」
ゴブリンは見つけ次第討伐が推奨されているような、百害あって一利なしの魔物なので別に問題は無いと思うのだが。
「いえ、問題がある訳じゃないの。むしろその逆ね。Eランクの依頼を複数達成した扱いになるから、ハル君のランクがFからEに上がったわ。おめでとう」
「へぇ! それは嬉しいな。じゃあ今日もまたランク上げちゃおうかな」
どうやら俺の冒険者ランクが上がったようだ。まああれだけのゴブリンを討伐したら当然と言えば当然な気もするが。
「くれぐれも無理はしないでね。まだ冒険者の活動には慣れていないんだから」
「うん、気をつけるよ」
怪我はしないに越したことはないからな。
「それじゃあこれ、ギルドカードね。ランクと口座残高の情報を更新しておいたわ」
「ありがと。じゃあ早速依頼を確認してくるよ」
Eランクに上がったので、一人前と言われるDランクの依頼も受けられるようになった。Dランクからは危険度が高くなる代わりに、稼ぎもかなり良くなる。Dランクに上がれない人(世の中の人間の大多数がそうだ)は冒険者をやるよりも何か他に手に職をつけた方が良いのだが、Dランク以上になれるなら冒険者の方が稼ぎは良いのだ。
俺はまだEランクだが、EランクでもDランクの依頼は受けられるし、何よりまだ6歳で将来有望なので、近い内、確実にDランクにはなれるだろう。将来は北将を継ぐ身とは言え、若い内はやっぱり成り上がりを目指したいもんだよな。
「お……、これなんかいいな」
時刻は昼過ぎ。冒険者は朝が早いので、依頼ボードには常設依頼以外、碌な依頼が残っていなかったが、一つだけ良さそうなものが残っていた。
『ランタン遺跡の定期調査』
「ランタン遺跡。ハイトブルクから北方約20キロの森の中にある古代魔法文明時代の遺跡……。学術的な調査は既になされており、重要度は高くないが、遺跡保存のため異常が無いか定期的に冒険者を派遣して調査を行っている。達成期限、一週間。報酬、5万エル。……なるほど」
行って調査して帰ってくるだけで5万エルなら儲けものだ。20キロは普通に考えたら行って帰って2、3日はかかる距離だが、衝撃魔法の応用で高速移動ができる俺にとっては一瞬の距離だ。それにDランクの依頼であれば、危険度もそこまで高い訳ではないだろう。
よし、決めた。これを受けよう。
俺はその紙を取って受付カウンターに持っていく。
「あら、これを受けるの?」
「うん。これなら楽そうだし」
「ちょっと遠いわよ。大丈夫なの?」
「まあ、このくらいなら大丈夫」
「……そう、まあハル君がそう言うなら止めないわ。受理するわね」
紙を受け取った受付嬢が、依頼用紙に俺の冒険者IDと名前、そして受付嬢のサインを記入していく。ファンタジー世界なのだから魔法的な管理方法があるのかと思いきや、意外とアナログらしい。
「はい。これでいいわ。達成の期限は一週間だから、まあある程度気楽にやることをお勧めするわ。あとこれ、はい」
そう言って受付嬢が何やら薄い冊子を手渡してくる。
「これは?」
「今回の依頼を行うにあたって、遺跡の正確な位置と調査方法、調査項目が書かれているわ。詳しい説明はそれに書いてあると思うから、読んでから向かってくれる?」
「ほーん、アナログはアナログでも、システマチックなんだな……」
「え?」
「いや、何でもないよ。ありがとう。それじゃ行くよ」
「気をつけてね」
「はーい」
受付嬢に見送られて俺はギルドを出る。今回もまた荷車を牽いて行く予定だ。
それにしても、この荷車には愛着があるから我慢できるが、毎回毎回遠出する度にこうして荷車を牽くってのも考え物だな。よくあるファンタジー小説みたいにアイテムボックスなんかがあれば楽なのだが。
一応、それっぽいアイテムは存在はしているようだが、王侯貴族や大商人、軍隊などでないと所有できないほど高価な代物らしい。
おかしいな、俺は一応王侯貴族の内の一人だと思うんだけどな……。
まあ、冒険者に関しては俺が趣味でやっていることだ。好き勝手やる以上は、親に頼らず自分の力でやり遂げたい。それに、今すぐには無理でもいずれ手に入るような気がする。メイを見ていたら当たり前のようにそう思えてきてしまうから不思議だ。
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