第3話 エーベルハルト・カールハインツ・フォン・フレンスブルク・ファーレンハイト
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エーベルハルト・カールハインツ
・フォン・フレンスブルク・ファーレンハイト
性別 :男
年齢 :2歳
生命力 :12/12
魔力 :6354/6354
身体能力 :3
知力 :120
魔法属性 :―
固有魔法 :【衝撃】
固有技能 :【継続は力なり】
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これが俺の今のステータスだ。
まず、名前がクソ長い。日本にいた時の漢字三文字に比べたら、実に10倍以上の長さだ。ゼ◯使のル◯ズといい勝負である。
性別と年齢は見りゃわかるので飛ばして、次に生命力。要するにHP、体力のことだ。一年ほど前に風邪を拗らせて死にかけた(かなり焦った。この世界は医療技術が現代日本ほど発展してないから、乳児死亡率がハンパないのだ)時に残り1まで減ったので、多分0になると死ぬんだと思われる。ママ上が回復系魔法使いで助かった……。
次の魔力。そう、この世界が地球ではないとわかる最大の理由がこれだ。あとステータス画面。この世界、どうやら魔法が存在するようである。
感覚は地球になかったので何とも説明が難しい。格闘漫画の気みたいなものだ。生まれてからしばらく経って魔力の存在に気づいた俺は、クソと寝る時以外のほんの僅かな合間を縫ってはひたすらに魔力の操作に時間を割いてきた。初めは自分の中や外にある魔力を感じ取ることから始め、魔力を体内で移動させたり、形を変えたり、引き伸ばしたり、圧縮したりと色々やっていく内に魔力の扱い方を覚え、体内で循環させつつ圧縮する工程を繰り返すと少しずつ魔力が増えていくことに気づき、以降一年半に亘ってひたすら魔力強化に励んでいたらいつの間にかこんなヤバイ数値になってしまったのだ。
ちなみに魔力を感じ取る力を極めると、他者の体内に満ちる魔力をも感じ取れるようになってくる。その結果わかったことが、親父がだいたい4000くらいで、ママ上が3500、姉貴が100に、メイドの姉ちゃんが85だ。毎日トレーニングを欠かさず、部下らしき人と模擬戦を繰り返している親父を見る限り我が家はどうやら武闘派一家らしいので、メイドの姉ちゃんの85という数値が一般的な魔力の量なんだろう。俺の数値が化け物じみていて、それを理由に気味悪がられて勘当されては敵わない。なのでこの間ついに、魔力を身体の奥に圧縮・封印することで表面上の魔力量を隠蔽する、という技術すら編み出してしまった。将来何かと役に立ちそうな技能なので今の内に習得できてよかった。
次、身体能力。2歳児なので3という数値は妥当だと思う。立って歩いて、たまに走ってコケるのが今の俺の全力だ。4歳の姉貴にすら軽々抱っこされる始末である。
ちなみにこっちは親父のほうが化け物じみていて、正確な数値は鑑定が使えないからわからないものの、軽く2トンはありそうな巨大な猪(こういうところでも異世界を感じる)を軽々引きずって家の庭に持ち帰ってきていたので、ひょっとしたら5000くらいあるのかもしれない。あの親父の息子ならいずれ俺も
ネクスト、知力。多分IQのことだろうと勝手に思っている。この世界にはおそらく知能指数テストなんてものは無いだろうが、多分このステータス画面は人類が生み出したものではない。何らかの人智を超えた存在やら現象やらによって表示されているのだとしたら、地球産のIQという指標が使われていてもおかしくはないだろう。
ちなみに120というのは数年前に測った時の俺のIQだ。決して高いわけではないが、曲がりなりにも進学校で学年2位を取っていたくらいだから、努力すればある程度の結果は出せる数値である。まだ2歳なのでこれからの努力次第ではきっともっと伸ばせるだろう。目指せ天才! IQ200!
次の魔法属性。これはいまいちよくわからない。おそらく、ファンタジー漫画にありがちな基本四属性とか五属性とか、そんな感じのアレだと思う。火水風土とか、そういうやつだ。いくら考えても所詮は推測の域を出ないので、詳しいことは本を読むなり人に訊くなりして調べよう。
次に固有魔法。これもいまいちわからん。多分、俺にしか使えない、俺に固有の魔法なんだと思う。しかし、どうも使い方がわからない。脳内で「(衝撃!)」と叫んでみても、実際に「しょうげき!」と叫んでみても、何も起こらない。もっとも、誰もいないと思って叫んだら後ろにメイドの姉ちゃんがいて掃除していたのには衝撃を受けたが。可愛らしいものを見るような微笑みが少し恥ずかしかった。
最後に固有技能の【継続は力なり】。これが唯一にして最強のチートなのではないか、と俺は踏んでいる。というのも、この【継続は力なり】の部分だけ、タップするとリンクに飛ぶかのように説明文が出てくるのだ。
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固有技能:【継続は力なり】
塵も積もれば山となり、幾千万の雨垂れは岩をも穿つ。努力は必ず報われ、努力し続ける限り実力もまた伸び続ける。
成長限界:無し
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俺の魔力量があれだけ異常なのも、この固有技能の存在があることできちんと説明がつく。努力すればするだけ成長するという説明に嘘はないようだ。
異世界転生にチートはつきものだ。テンプレと言ってもいい。中にはノーチート、農民スタートのような人生ハードモードプレーヤーもいるにはいるが、前世で既にハードモードだった俺としては、今世はできたら楽してチーレムしたい。少なくとも、努力したら努力した分だけ報われる世界であってほしい。
事故死した後、俺は天(というか宇宙)に昇っていく際に「叶うことなら、今度はちゃんと努力が報われる人生を送ってみたい」と願った。神が本当にいるのかはわからないが、もしいるのだとしたら、俺は彼なり彼女なりに深い感謝を捧げたい。こうして異世界に転生して思う。今度こそ、俺は報われたい。頑張って、努力して、報われて、そして楽しく生きるのだ。
まだ2歳。この世界の人間の寿命が地球人と同じだとしたら、あと80年と少し。俺は満足できるような人生を送ってみせる。そして、努力もせずのうのうと生きている奴らを見返してやるのだ。そうすることが、報われずに死んでいった前世の俺へのせめてもの手向けになるだろう。努力の野郎め、今度は俺を裏切れないぞ!
*
さて、自分のステータスについてわかっていることはこのくらいだ。できたら近い内に本を読んで、魔法について詳しく知りたいと思う。流石に貴族、それも比較的高位の辺境伯家なんだから、魔法に関する本くらいあるだろう。ママ上も魔法使いらしいしな。
そうと決まれば、早速本を読むために行動開始だ。俺はよちよちと自分の部屋から出ると(まだ2歳なのにもう自分の部屋が与えられている。流石貴族……)、まだ見ぬ書斎を目指して探検を開始する。勝手知ったる他人の家、という言葉があるが、俺は自分の家すら食堂とサロン(居間の貴族版みたいなやつだ。めちゃくちゃオシャレでとにかく広い)と浴室以外には詳しく知らないのだ。階段とかが危ないので、基本保護者同伴でない時には部屋から出してはもらえない。家の外にだって、ママンと庭(これもまたおそろしく広い。イギリス庭園とフランス庭園足して割ったみたいな感じだ)を散歩する時以外に出る機会はない。
早く大きくなって行動の自由を手に入れたいものだ。幼少期はすることがないと、ひたすら退屈なのだ。
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