愛は地球(主に尼崎)を救う
「特報です。この度、地球人とアブール人との間に和平が締結されました。未来永劫、双方は平等の立場を遵守する事を誓い、平和条約を交わしました。そしてアブールの科学力で、数々存在する公害問題、温暖化など解決していくことを約束しました」秀幸はテレビの電源を落とし目を瞑って深くため息をついた。
あの日、秀幸が守ろうとした物。それは、彼が飼育しているウサギであった。飼育委員の彼は責任感により怪獣が来る度に、危害が及ばないように見張っていたのであった。
その事を嵐山や学校の教師に告げると、呆れられたり怒られたり散々な目にあった。勝手に自分の事をミラクルワンだと思われていた事に文句を言われても、自分のせいでは無いと思った。
ふと視線を移すと今日も父と母が秀幸の目を気にせず、イチャイチャしている。まるで、夫婦お互いが秘密にしていた物が消滅して、より深く二人の愛情が深まったようである。
ちなみにあの後聞いた話では宇宙人アブールの姫であった母ことアブーは、自分の星の大学で環境問題を研究していたそうである。
その卒業の課題として選んだのが、公害問題で終末を迎えるかもしれない星「地球」だった。
酷い公害によって環境を破壊している阪神工業地帯を訪れた時にそのあまりの酷さに、死の淵を彷徨うほどの思いをして、この星の住人達を改心させねばならないと決心して、地球侵略を始めたそうだ。
一方、父は宇宙連邦のパトロール官だったそうである。そしてたまたま訪れた地球の浜辺で倒れていた少女を救い、彼女に一目惚れしてしまった。
その少女を守るために、そして、宇宙人アブールからの侵略を阻止する為に、この星に留まる事を決意した。
よくよく考えてみると酷く私情が絡んだ事情だなと思う。
アブール人による地球(主に尼崎)への攻撃が条約通り止めるそうである。必然的に父がミラクルワンに変身する機会も激減するだろう。
結局、地球(主に尼崎市)の危機を救ったのは熱い夫婦愛であった。
おしまい
「……って、俺って何者なの?」秀幸は頭をかきむしった。
FIN
ミラクルワン 上条 樹 @kamijyoitsuki
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