第5話 卒業式
美術部の後輩であるコユキと会話を交わした僕は、彼女の口にした「東京の芸大を目指す」と言う意味がとても気になった。
それは僕が千葉大学を第一志望として居る為なのか、それとも前から東京の芸大を目指して居たのか、僕には分からなかったからだ。
そこで僕は彼女に、こんな質問をぶつけてみた。
「僕が北大を第一志望にしたら、コユキはどうする?」
するとコユキは少し考え、こう答えたのだ。
「先輩は千葉大に決めたんでしょ! それより、このスケッチの線のラインどうでしょうか?」
そうコユキが言うと、僕は彼女の右手を優しく包むかのように握り、二人の右手が重なり合って、鉛筆から一筋の弧が描かれ、キャンパスの中に溶け込まれていった。
この時、彼女の背後で僕は、彼女から女性特有の甘いフローラルな香りを感じ、心臓の鼓動が速くなっていったのだ。
そして、この心臓の鼓動を見透かされないよう、僕は気が気では無かった。するとコユキは、僕にこう言ったのだ。
「先輩、2月14日の日に会えますか?」
突然の彼女からの申し出に、僕は驚きながらこう答えた。
「まあぁ、大丈夫だけど…」
その時だった。美術室の扉がガラッと開いたのだ。
つづく…
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