第59話
礼二が宿に戻ってみると、天使たちが何やら訓練まがいのことをしていた。魔法を放っているだけといえばだけだが。
それを適当に無視した礼二は、宿の自分の部屋に戻った。
「・・・・なんでいるんだ」
「す、すみません・・・」
消え入るような声で恐る恐る弁解したのは、ミリナだった。怯える彼女を一瞥した礼二は大鎌をそばにおき、ストレッチを始めた。
「・・・・・・」
「何の用?」
黙っているミリナに、穏やかな声がかけられた。その声でようやく彼女は重い口を開いた。
「明日の作戦のことなのですが」
「・・・・・日程は?」
「順調にいって、2日ほどで魔王城が見えてきます」
案外ハキハキと答え始めたミリナに軽く驚きながら、礼二は話を続けた。
「2日の間に出てくる雑魚は俺がやるよ。大鎌も慣らしたいしな。魔王との直接対決は、なるべく他の天使たち中心で頼む」
「あなたは、どうするのですか」
「俺は後方で見てるよ。彼らだけで魔王を殺せればそれでよし。殺せないようならお前が魔王の遠距離攻撃を抑えろ。その間に距離をつめて俺がたたく」
簡潔に言うと、ミリナは何とも言えない表情を浮かべた。きっと、そんな簡単にはいかないと言いたいのだろう。
「作戦はあまり複雑すぎると、天使にも説明しなきゃいけないだろう? あいつらにそれができるとは思えない」
「・・・・ちなみに、それはなんででしょうか」
「緊張で頭が真っ白になったりするんだ。そんなひ弱な奴が殺し合いで平気でいられるわけないだろう?」
言われてみれば、もっともだった。緊張で気絶してしまうほどの人もいるのだ。命のやり取りなどという極限の緊張にさらされて平気なほうがおかしい。
「わかりました。その案で行きましょう。天使たちにはそれとなく伝えておきます」
「ああ、よろしく頼む・・・・・・・お前も、きちんと休みなよ」
部屋を出ていこうとするミリナに礼二は声をかけた。
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「・・・・彼が、先頭ですか」
天使たちにミリナが提案すると、皆が一様に顔を曇らせた。
「実力的には大丈夫だと思いますよ」
「それは私たちも分かってます。が、どうにも信用できなくて・・・・」
「そこも大丈夫です。私が見張っていますから。それにスキルでいえば、彼はなたたりよりもずっと弱いんですよ?」
ミリナは胸を張りながら宣言したが、内心礼二のほうが断然強いのではないのかと、自分を信じられずにいた。
※次回更新 6月14日 日曜日 0:00
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