第60話
次の日、昼頃に村を出発した天使たちは、さっそくトロールの群れに出くわしていた。
(・・・・汚いな)
大鎌を担いだまま、ボヤーっとトロールたちを眺めている礼二とは対照的に、天使たちは緊張に体を強張らせていた。
「は、はやく攻撃を、」
「おまえらは温存してなよ」
軽い口調で吐き捨てた礼二は、散歩でもするかのような歩調で歩き始めた。当然、トロールたちはその倍以上の速さで走ってくる。
「「「ガアアアアアアア!!」」」
意外にもきれいな発音で人間に近い雄たけびを上げた先頭の三頭が礼二の頭よりも大きいその拳を振りかぶった。
(振りがでかいんだよ)
礼二がほとんど視線を動かさずに大鎌を振るうと、綺麗に三頭の首が吹っ飛んでいった。
「これじゃあ、慣らしにもならない」
ため息交じりに、礼二は走り出した。役立たずだとわかったトロールたちに、もう用はなかった。
先頭がやられたショックからまだ立ち直っていない群れのなかに駆け込んだ礼二は無表情で大鎌を振るっていく。
まるで雑草をチェンソーで切っているかのような手ごたえが、やけに感情を逆なでしてくる。
立ちはだかっていたトロールたち、総勢20頭をわずか3秒ほどで殺しつくした礼二は、大鎌を担ぎなおした。
「先進むぞ」
「・・・・・は、はい!」
いち早く状況を把握したミリナが素早く地図を覗き込み、礼二に道を伝えた。
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「ほほう、あのトロール兵の精鋭たちから無傷でここまで来たか。なかなかやるのう」
さらに進んでいくと、鬱蒼とした森の中で真っ赤なローブ姿の骸骨がカタカタと関節を鳴らした。
「言葉が話せるんだな」
「・・・・俺を、下等な魔物と一緒にするな! 俺は魔王様から不死王の称号を賜っているアンデットだぞ。苦痛なく殺してほしければ、口の利き方には気を付けるんだな」
「そうか」
「そうかぁ?・・・・・どうやら勇者と言うのは存外バカらしいな」
「あんたほどじゃないさ」
皮肉の応酬を楽しんでいる礼二に対して、不死王は不機嫌そうだった。
「まあ、よい。それもすぐにわかる」
不死王が手を上げると、後ろにあった沼から真っ黒で全長3mもあろうかという巨大な鎧が上がってきた。
その手には、青い炎を纏った大剣が握りられている。
「デスナイト。わしの最高傑作じゃ。お前らごときにこれを使うのは不本意じゃが、致し方あるまい」
得意げに、顎に手を当てる不死王を完全に無視した礼二の視線は歓喜をもってデスナイトに注がれていた。
※次回更新 6月17日 水曜日 0:00
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