第50話


 「・・・・・へ?」


 素っ頓狂な声を上げた才記に、タイロンが畳みかけるように言った。


 「勇者ってのは聖剣がなければ何もできない者の名前だ。お前のスキルを思い出せ。ほとんどが聖剣がらみだろうが」


 「う、うそだ・・・・・」


 「うそじゃない。聖剣が魔王討伐のシンボルになる、という理由でお前はリーダーを気取っていられるんだ」


 「・・・・・・・・」


 タイロンの興奮が収まってくるとともに、才記の顔が青ざめていく。


 「不思議に思ったことはないのか? 魔王を倒すのが勇者なら、なんで勇者以外の天使も召喚されたのか」


 「あ、ああああ・・・・・」


 「勇者だけじゃ、倒せないからだよ」


 「お、俺は、おれhgwwwwwwww!!!??」


 これが一番こたえたのだろう。才記はフラフラとタイロンから離れると、声にならない叫び声をあげ、


 (・・・・余計なことをしてくれたな、タイロン)

 

 腕を組んで思案する礼二の前では、他の天使たちが才記に駆け寄って介抱していた。それは、黄道宮で礼二に倒されたときと、酷似していた。


 違う点があるとすれば、才記が介抱を嫌がって、いまだに奇声を上げている点だ。顔を押さえ、滂沱と涙を流している。


 「・・・・・どうしてくれんだ」


 ボソッとつぶやいた礼二の不満は、その場の喧騒にかき消されてしまった。


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 結果、礼二を含む天使たちには休暇が与えられた。まあ、会議には強制参加させられたが。


 「さて、ではレイ。説明をしてくれるかね」


 再び円卓を囲み、ヘルマン王がこちらを向いた。何もしていないのに、叱られているような気になるのはなぜだろうか。


 「はい。憶測にすぎませんが、今までの死の恐怖を勇者としての誇り、もしくは責任感で押さえつけていたのが、外にあふれでたのだと思います」


 「・・・・それは責任感で押さえつけられるものなのかね」


 「おそらくは。支えの一端を担っていたのは間違いないかと」


 「・・・・・・・・」


 ヘルマン王が黙ったことでその場に沈黙が落ちる。時々誰かが生唾を飲み込む音が聞こえてくるだけだ。


 「・・・・・タイロン」


 「はい」


 「責めはしない。あの場でレイを失うのは相当な打撃だった。それに勇者と聖剣のことはいずれ彼に明かすつもりだったしな。が、少しばかり時期尚早だったな」


 「面目次第もございません」


 こうしてみると、ミリナの時とは大違いだった。ミリナはずっと震えて、噛みまくっていたのに対し、タイロンは何も恐れていないようにも見えた。


 ※次回更新 5月23日 21:00

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