第51話


 (どうしたものか・・・・・・)

 

 早朝、一人で鍛錬しながら、礼二は悶々と考えていた。


 (才記がもと通りに戦えるようになるかは、わからない。下手をすると、堕ちかねない)


 もやもやとした思考とは裏腹に、拳打のキレは増していく。肘の先が蛇のようにくねり、拳がかすむ。空気が乱打され、風圧を伴って広がった。


 (とはいっても、散々煽ってた俺が何をいっても慰めにはならないだろうしな・・・・)


 礼二のは昨日の会議を思い出していた。


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 「では、これからどうするか、案はあるか?」


 ヘルマン王が礼二に問いかけた。


 「正直、このような事態は予想外だったので、これといった案はございません」


 「・・・・・皆には言っておくが、魔王軍はもう集結を完了しつつあるらしい。実地訓練がある程度終わり次第、討伐遠征に行ってもらおうと各国は考えておった」


 「手段としては3つですな。勇者なしで討伐するか、勇者を立ち直らせて連れていく、もしくは別の天使様に聖剣をもたせる」


 とキシールが提案した。円卓の者は、それぐらいしかないだろうと口を挟まなかった。


 「聖剣を持たせるとなると、それなりに訓練が必要です。強力な代わりに少しずつ慣らしていかなければなりません」


 「・・・・・・レイ」


 ヘルマン王がこめかみを押さえながら言った。


 「はい」

 

 「・・・お前は、剣を使ったことはあるのか?」


 「・・・もと居た世界では、ある程度修めております」


 「ならば、お前が聖剣を持て。期限は、そうだな・・・・、2週間だ。2週間後には討伐遠征を組む」


 かなりの無茶を言っているのが、自分でもわかるのだろう。ヘルマン王は顔をしかめながら言った。礼二は仕方がないと内心思いながら、うなずいた。


 「わかりました」


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 (あわよくば才記に復帰してもらいたかったが、あの状態じゃあな・・・・)


 その後、才記の部屋に行ったが、顔を腫らしたメイドが茫然自失としてドアの前にへたりこんでいるだけだった。


 「・・・・才記は、いるのか?」


 「ひっ!、・・・あ、はい。い、いらっしゃいます・・・・」


 「・・・・君はもうここに来なくていいから、その傷の手当てをしてもらいなさい」


 ドアを眺めながら、礼二は優しく微笑んだ。すると、メイドはホッとした様子で、去っていった。


 試しにドアをノックしてみると、中からすさまじい音が聞こえ、ドアがこちら側に軋んだ。


 (・・・・・・こりゃ、重傷だ)


 ※次回更新 5月25日 21:00

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