第49話


 「なあ、美空」


 「なあに?」


 才記は魔物を狩る手をとめて、美空に話しかけた。美空もまた、自分の杖を下ろして、才記の方を向いた。


 「今なら、眞城を殺せるんじゃないかな」


 「・・・・え?」


 「だからさ、俺らは格段に強くなった。それで、もともとのスキルが高いんだから、あいつにも勝てるよ。ああ、そうだ。勝てるはずなんだ」


 「さ、才記?」


 「見ててくれよ、俺があいつを殺してやるからさ」


 「ま、待って!」


 (それはまずい! これから鞍替えしようとしたところなのに)


 美空は必死に手を伸ばしたが、狂気に顔を染めた才記には届かなかった。


 「加速ヘイスト


 才記の姿が一瞬で、礼二の近くに移動する。


 「聖光斬撃ホーリーバースター!」


 振りかぶられた聖剣が閃光弾のような光を放ち、礼二に迫った。


 --------------------------


 礼二が近づいてくる才記に気づいたのは、目の前の狼を吹き飛ばした直後だった。気配に視線を送ると、眩い閃光を放つ剣が眼前に迫ってきていた。


 「っ!!」


 礼二はあえて聖剣を受け止めず、才記から距離をとるように飛び退いた。


 (受け止めたい気持ちはあるが、ここで抵抗してはまずい・・・・・)


 才記の聖剣が地面にめり込み、派手な砂埃と爆音を上げた。当然、周りの天使たちは驚きに体を硬直させた。


 「何事だ!」


 「ちっ、臆病者が」


 タイロンが叫び、砂埃のなかから顔を上げた才記が礼二をにらみつけながら、悪態をついた。


 「何をやってる!」


 今までの穏やかな顔を一変させ、タイロンが才記の襟元をつかんで持ち上げた。恐るべき怪力だ。


 「なんだよ、離せ。俺は勇者だぞ」


 (また、ベタなセリフを・・・・・)


 礼二があきれながら見ていると、才記がこちらをにらんできた。


 「・・・・レイがなにかしたわけじゃないだろう」


 タイロンが才記をさらに持ち上げながら、詰め寄った。才記は人を小ばかにしたような顔で答えた。


 「ええ。だけど、あいつは魔王討伐には必要ない。だから排除するんですよ」


 「なるほど。つまり、お前は国王陛下の意向を無視するというわけだな」


 「魔王を倒すのは、国王じゃない。俺だ」


 胸を張った才記の顔を、耐えられなくなったタイロンが思いっきりひっぱたいた。


 パン!!


 「・・・・・何しやがる」


 「いいか、くそガキ。教えてやる。聖剣ってのは、魔王に敵対する国、すべてのものなんだ。お前は聖剣を使えるだけで、聖剣の持ち主じゃない」


 「はあ? 俺だけが使えるんなら、所持してるのと同じだろ」


 「いいから聞け。聖剣ってのはな、使使


 ※次回更新 5月21日 21:00

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る