第48話

 そんな訓練まみれの毎日が続き、数週間が経った。

 

 「なあ、レイ」


 「ん?」


 朝練後、兵舎で朝食を取っていると、タイロンが話しかけてきた。


 「相談なんだが、そろそろ実地訓練を入れないか?」


 「・・・・急にどうした?」


 純粋に疑問を感じて、聞いてみるとタイロンは礼二に近づいて、耳打ちした。


 「ここだけの話、魔王に若干の動きがあるそうだ。周辺国からの報告でな」


 「その報告に信頼性はあるのか?」


 「ああ。間違いない。限りなく客観的な報告なはずだ」


 「・・・・・・・・」


 「・・・・どうする?」


 「まあ、俺も魔物と戦ったことはほとんどない。が、彼らの実力が足りないということもないだろう。・・・・やってみよう」


 「そうだな。ビクビクしていても始まらない」


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 タイロンと礼二はヘルマン王に許可をもらい、魔物狩りをすることに決めた。正直、2人とも状況が悪くなったら引き返そうと思っていた。


 一応、回復役としてミリナにも同行してもらい、城壁外の草原に来ていた。


 「おらああああああああ!!」


 「死ねえええええ!」


 「うわ、きったね。生きててもゴミだけど、死んだらもっとゴミだな」


 状況が悪くなるかも、という考えは杞憂だったようだ。魔物を敵と認知し、痛覚も鈍くなっている天使たちは、怒涛の勢いで暴れまわっている。


 ある者は魔法であたりを焼き尽くし、ある者は剣の一振りで地面ごと、魔物の群れを吹き飛ばしたりしている。


 「・・・・成長したなあ」


 タイロンが心底感心したようにつぶやいた。礼二もまったくの同感であった。


 (そりゃこうなるように訓練したつもりだけど、ここまでとはなあ。・・・・・ゲーム感覚って恐ろしい)


 「お前もやってきたらどうだ?」


 「え?」


 「魔物、狩ったことないんだろう?」


 「それもそうだな。いい機会だし」


 前線で戦っている天使たちに交ざり、礼二も拳を構えた。向かってきたのは、3匹ほどの狼だ。白い毛並みの、いわゆるフェンリルとかいう魔物らしい。


 (まずは、先頭の奴から!)


 ブオン!


 一気に間合いをつめ、一番前にいた狼に右蹴りを入れる。もちろん、装甲は展開している。

 

 まともに喰らえば骨がくだける威力だが、敵もさるもの、しっかりと前足でガードしている。


 バキャッ!


 それを狙っていたかのように、礼二の左正拳突きが炸裂し、蹴りの勢いで右に流れた狼の顔面を的確に打ち抜いた。


 頭蓋骨を砕き、そのまま手を開いて狼の頭を鷲掴みし、投げ飛ばした。

 

 「次ぃ!」


 ※次回更新 5月19日 21:00

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