第47話


 「・・・・結構ヘビーな話を聞いてしまった」


 小栗が去った後、礼二は部屋でくつろいでいた。


 (あの才記がなあ。想像できないが)


 「脅されてるねえ。・・・・ありえないことじゃないし、中にはそういうやつらもいるもな」


 ベットに倒れ込み、目をつぶった。


 (でも今は団結してもらわないと、困るんだよなあ。魔王を倒した後に何をしようが勝手だけど)


 礼二の中に、かわいそうだという感情はあったが、何かしようという気持ちは一切なかった。


 話をするのに同席して、というのも本当に同席だけする気しかない。そもそも、自分が牢に入れられているときに何もしようとしなかった彼らを、礼二は仲間として見ていない。


 魔王討伐に支障があるのなら対策を講じるが、影響がないのなら礼二が動くことはない。


 --------------------------


 「どこに行ってたんだ?」


 才記の部屋に戻った美空は、さっそく尋問されていた。


 「そんなにピリピリしないでよ。眞城のところで、情報を集めてただけだから」


 「あいつのところに行ったのか⁉」


 「才記が想像しているようなことは何もしてないよ。ただ、少しはあいつに取り入っておけば、あとで始末するときにも楽になるかなって・・・・・。だめ、だった?」


 上目づかいで、のぞきこむように才記の顔を見る。すると、才記は照れたように頬をかいた。


 「い、いや、その、ありがとうな。俺のために嫌なことをやってくれてんだろう?」


 「ううん。才記君の役に立てるのは、すごくうれしいよ」


 (なわけないでしょ。誰があんたみたいな能天気のために動くもんですか)


 心の中で悪態を吐きながら、美空は作り笑いを浮かべた。


 -------------------------翌日、訓練中


 「・・・・なあ」


 「なに?」


 訓練を監督しているタイロンが、すぐそばにいる礼二に話しかけた。


 「お前、にらまれてないか?」


 「・・・・・やっぱりそうなのかな」


 訓練中なのにも関わらず、才記がずっと礼二をにらんでくるのだ。


 「いや、どう考えてもあれは殺意込みの視線だろ。朝帰りした時のカミさんにそっくりだ」


 「タイロン、奥さんいたのか?」


 驚いて聞くと、タイロンは頬を緩めながら言った。


 「おお、いるぞ。尻に敷かれっぱなしでつらいがなあ」


 「・・・・そういうセリフは、せめてそのニヤケ顔を引き締めてから言え」


 そんな風に談笑しながらも、礼二の頭にはいろいろな考えが渦巻いていた。


 (昨日俺のところに小栗が来たのが、バレたのか? でも、それぐらしか考えられないな・・・・)


 ※次回更新 5月17日 21:00

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