第28話
「やっぱり、国王には許可取らなきゃダメだよな・・」
メッシーナが落ち着くのを待って、礼二はそう言った。
「そ、そうね。でも、よくよく考えたら付き合う許可はいらないわね」
「え?、なんで?」
「だって、私の姉なんて自分とこの貴族だけじゃ飽き足らず、他国の貴族にまで手だしてたわ」
「ええ⁉、そ、それじゃ、結婚前提で?」
「そのこと聞かれたら、うまくはぐらかしてるって言ってたわ」
「すごいな、メッシーナの姉妹・・」
「まあ、だから問題ないわ。それに私はレイと結婚する気満々だからね」
「ああ、俺だってそうだよ」
--------------------------グロッグ王国、執務室
円卓を老人たちが固めている。誰もが各部門のまとめ役だ。そのなかで一人だけ、異彩を放つ女がいた。居心地悪げに震えている。
「ミリナ、」
「は、はい!」
女、ミリナの肩がはねた。今にも倒れそうなほどに真っ青になっている。
「報告をしなさい」
円卓のなかでもミリナの対面で、一番豪華な椅子に座っている、グロッグ王国国王ヘルマン・ド・グロッグはそう言った。見事な金髪には白い筋が一本も見えない。
「は、はい。ぜ、前回の魔物退治において軽傷者多数。その影響か、天使様35人のうち、15人が堕ちました」
「「「・・・・・・」」」
円卓の老人たちは口を開かずに、ただじっとミリナをにらんでいる。
「それで? お前はどうするつもりだ?」
普段笑顔を絶やさないヘルマン王は、厳しい表情で語りかけた。
「こ、これから再訓練をし、さらなる強化に努めてまいりたいと、」
「それでは遅い!!」
バン!
そう怒鳴って円卓を叩いたのは、ヘルマン王の隣に座っている老人だ。
「魔王の復活はとっくに報告されている。その上での天使召喚はただでさえ後手だというのに、この期に及んで再訓練? ばかにするにも限度というものがある!」
「!、も、申し訳・・」
「言い訳はよい。キシールも少し落ち着けい」
「・・取り乱しました。お許しください」
「よい。しかしミリナよ。キシールが言うことにも一理ある。いや、ここにいるすべてのものがそう思っている」
「・・・はい」
「高い身体能力を持つ天使様がなぜ、剣技だけでうちの騎士を超えられぬ? スキル頼みですぐに回数制限分使いきってしまうなど、教育に問題があると見られても仕方がないぞ」
「・・・はい」
ますますミリナの顔が下を向いていく。
「聞けば、素手で剣を持っていた勇者格の天使に勝ったものがおるそうではないか」
※次回更新 4月29日 0:00
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